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Sky株式会社

公開日2024.02.16更新日2024.08.20

個別最適な学びとは? 協働的な学びとの関係や実現に必要なものを解説

著者:Sky株式会社

個別最適な学びとは? 協働的な学びとの関係や実現に必要なものを解説

2019年度以降の新型コロナウイルス感染症の拡大は学校教育に大きな影響を及ぼしました。ICT環境を最大限に活用して「学びの保障」を進めること、また学校教育の本質的な意義を踏まえて事態に対応するために「カリキュラム・マネジメント」の取り組みを一層進めることが求められました。こうした状況のなかで、文部科学省の中央教育審議会は2021年1月に「令和の日本型学校教育」の構築を目指すための答申を行い、すべての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実の必要性を提言しました。この記事では、個別最適な学びおよび協働的な学びの意味のほか、実現に必要なものと実践事例について紹介します。

個別最適な学びとは各児童生徒の学習進度や個性に合わせて学びを深めること

個別最適な学びとは、児童生徒の学習進度や個性に合わせて学びを深めることを意味します。これにより、児童生徒個性や能力に応じて学習を進めることで、自己の可能性を最大限に引き出すことを目標としています。

文部科学省の中央教育審議会は2021年1月26日に「『令和の日本型学校教育」の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現~(答申)』」を取りまとめました。答申に盛り込まれた教育課程に関する事項について、より詳しくまとめられた「教育課程部会における審議のまとめ」では、「今後の教育課程の在り方について、学習指導要領において示された資質・能力の育成を着実に進めることが重要でありそのためには新たに学校における基盤的なツールとなるICTも最大限活用しながら多様な子供たちを誰一人取り残すことなく育成する『個別最適な学び』と子供たちの多様な個性を最大限に生かす『協働的な学び』の一体的な充実が図られることが求められる」と示されています。

個別最適な学びと似た言葉に、平成元年以降の学習指導要領で用いられてきた「個に応じた指導」があります。個に応じた指導とは、すべての児童生徒の確かな学力の育成のため、児童生徒の実態を適切に把握して行う指導のことです。個別最適な学びは、後述する「指導の個別化」と「学習の個性化」を学習者視点で整理した概念であり、それを教員視点から整理した概念が個に応じた指導とされています。

個別最適な学びとともに、一体的な充実が求められる協働的な学び

個別最適な学びとともに使われる言葉に、「協働的な学び」があります。協働的な学びとは、児童生徒が他者と協力しながら学び、問題解決を行う取り組みです。日本の学校教育がこれまで重視してきた、同じ空間で時間を共にすることでお互いの感性や考え方に触れ、刺激し合うことは協働的学びの一つだといえます。

人間同士のリアルな関係づくりは、社会を形成していく上で不可欠なものです。知・徳・体を一体的に育むために、さまざまな場面でリアルな体験を通じて学ぶことの重要性は、AI技術が高度に発達するSociety 5.0時代にこそ一層高まるものであると考えられています。

個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実

先述の「教育課程部会における審議のまとめ」では、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が重要であると説明されています。「教科等の特質に応じ地域・学校や児童生徒の実情を踏まえながら授業の中で『個別最適な学び』の成果を『協働的な学び』に生かし、更にその成果を個別最適な学びに還元する」というように、これらをバランスよく組み合わせることで、児童生徒は自分の可能性を最大限に引き出し、より深い学びを経験できます。

個別最適な学びにおける2つの側面

個別最適な学びには、「指導の個別化」と「学習の個性化」の2つの側面があります。「学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料(令和3年3月版)」を参考に、それぞれの内容を確認したいと思います。

指導の個別化

指導の個別化とは、一定の目標を全ての児童生徒が達成することを目指し、個々に応じて異なる方法等で学習を進めることで、「教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等など応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な設定を行うことなど」が必要だとされています。

学習の個性化

学習の個性化は、個々の児童生徒の興味・関心などに応じた異なる目標に向けて、学習を深め、広げることで、「教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する」ことも必要だとされています。

個別最適な学びと協働的な学びが求められる背景

急速に変化する時代において、これからの学校教育では、児童生徒が自身の良さや可能性を認識するとともに、他者を尊重しながら、多様な人々と協働することなどを通じて「持続可能な社会の創り手」となることができるよう育成することが求められています。ここでは個別最適な学びと協働的な学びが求められる背景について解説します。

児童生徒の多様化

個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が求められる背景として、児童生徒の多様化が挙げられます。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒や、インターナショナルスクール以外の学校に在籍する外国人児童生徒、日本語指導を必要とする児童生徒の数が年々増えています。このような背景により、個別最適な学びを通じ、児童生徒の状況に応じた多様な学びの場の確保が求められています。

児童生徒の学習意欲の低下

学習意欲の低下への対策も、個別最適な学びと協働的な学びが求められる背景の一つです。先述の2021年の中央教育審議会では、文部科学省・厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」の結果を基に、全体的な傾向として児童生徒は学年が上がるにつれて学習意欲が低下していることを指摘。特に高等学校の進学率が99%に達し、多様な生徒が在籍する現状を踏まえて、生徒の多様な実情・ニーズに対応して学習意欲を喚起するためにも、高等学校の特色化・魅力化を推進することが求められています。自ら課題を見つけそれを解決する力を育成したり、他者と協働し自ら考え抜く学びを得たりするためにも、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が欠かせません。

情報化の加速度的な進展への対応の遅れ

個別最適な学びと協働的な学びが求められる背景には、Society 5.0時代の到来も関係します。情報化が加速度的に進む Society 5.0時代に求められる力の育成について対応の遅れが指摘されています。数学や科学に関するリテラシーは引き続き世界トップレベルである一方、言語能力や情報活用能力、デジタル時代における情報への対応力などには課題があります。児童生徒を取り巻く社会の急速な変化の中で、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた取り組みが求められています。

個別最適な学びの実現に必要なもの

個別最適な学びと協働的な学びを実現するには、「GIGAスクール構想」の実現を前提とした新しい時代の学びを支える学校教育の環境整備を図ることが必要です。ここでは、個別最適な学びの実現に必要とされるものをご紹介します。

ICTの効果的活用

個別最適な学びは、ICTの効果的な活用を前提としています。例えば、学習履歴(スタディログ)をはじめとするさまざまな教育データを蓄積・分析・利活用することで、児童生徒自身の振り返りにつながる学習成果が可視化されます。また教員は、それらを基にしたきめ細かい指導や学習評価が可能となります。

少人数によるきめ細かな指導体制の整備

個別最適な学びを実現するためには、少人数によるきめ細かな指導体制の整備も必要です。2021年の中央教育審議会でも、ICTの活用とともに少人数によるきめ細かな指導体制や小学校高学年からの教科担任制などについて計画的な整備を図るべきとしています。

個別最適な学びの実践事例

ICTの活用によって個別最適な学びはさらに進化することが期待されています。すでに児童生徒の主体性や創造性を育む取り組みが始まっています。ここではSky株式会社が提供する学習用ツール「SKYMENU Cloud」を活用した実践事例を紹介します。

端末を使用して、パンフレットを作成する

千葉県千葉市立轟町小学校では、児童たちが日本文化について調査しました。その結果を1人1台端末とSKYMENU Cloudの「発表ノート」を使ってパンフレット形式でまとめました。

端末を使用して情報を調査したり、画像を検索したりした後、「発表ノート」を使用してパンフレットを作成しました。グループ内で互いにアドバイスをする時間を設け、発表にも端末を使うことで、個別最適な学びと協働的な学びが効果的に取り入れられました。

対話を通じて自己の価値観を広げ、テーマを追求する意欲を高める

埼玉県和光市立第五小学校では、道徳の授業で、物事を「多面的・多角的に」考え、自分事として捉えられる手だてとしてICT(デジタル)と対話(アナログ)を使用しました。

この授業では、まず児童が自分たちの生活経験から「誠実とは」をテーマに問いを作り、対話を通じて自己の価値観を広げ、テーマを追求する意欲を高めました。次に、教材が持つ価値観について問いを作り、対話を行います。さらに、SKYMENU Cloud の「ポジショニング」を活用してテーマを多角的に考え、36人の児童たちの価値観が共有化されました。

授業で学んだことを「発表ノート」にまとめ、それを基に自分たちで学習計画を立て、クラス全員にプレゼンテーションをします。これにより、個別最適な学びが保障され、児童の深い学びにつながりました。

児童同士で情報をリアルタイムに共有し、自分たちで学習計画を立てる

茨城県緑桜学園那珂市立芳野小学校では、SKYMENU Cloudの「気づきメモ」のプロトタイプ版を使って社会科の授業を行いました。児童一人ひとりが「災害が起こる理由」「起こりやすい地域」「避難対策」などの追究の視点を挙げ、それを基に各自が調べたい災害の種類を組み合わせて、「地震×災害が起こる理由」など、4つのテーマを決めました。

児童は社会科の授業で学んだことを「発表ノート」にまとめ、それを基に自分たちで学習計画を立て、クラス全員にプレゼンテーションを行うようになりました。このようなツールを授業にうまく取り入れていくことで、知識を一斉に伝達する授業から、個別最適な学びへと転換を図ることができました。

個別最適な学びの実現のためにICTの効果的な活用を

個別最適な学びとは、児童生徒1人ひとりの学習進度や個性に合わせた学習活動を実践することで、児童生徒が自己の可能性を最大限に引き出すことを目指すものです。こうした学びを実現するためには、ICTの効果的な活用がますます重要になります。個別最適な学びの実現に向けて1人1台端末の日常的な活用を支援する「SKYMENU Cloud」の活用をぜひご検討ください。