児童生徒1人1台端末などICTを活用した教育についてさまざまな情報を掲載します。

Sky株式会社

公開日2024.08.20更新日2024.11.28

1人1台端末で実現できることは? 活用例や整備状況を解説

著者:Sky株式会社

1人1台端末で実現できることは? 活用例や整備状況を解説

学校教育におけるICT環境の充実を図る「GIGAスクール構想」により、全国の小・中・高等学校などに通う児童生徒1人に対して1台のコンピュータ(タブレット端末など)の整備が進みました。ただ、この「1人1台端末」によって児童生徒の学びがどう変化しているのか。情報担当以外の先生の中には詳しくわからないという方もいるのではないでしょうか。この記事では、1人1台端末の整備の経緯や整備状況、活用例などをあらためて確認します。

GIGAスクール構想は、1人1台端末の整備により教育のICT環境の充実を図る取り組み

GIGAスクール構想とは、学校教育におけるICT環境の充実を図り、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、個別最適化された学びを実現するための取り組みです。2019年に文部科学省より提唱され、全国の小・中・高等学校などにおいて高速大容量の通信ネットワークと、児童生徒1人1台のコンピュータの整備が進められました。

GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境の整備(令和元年度補正予算、令和2年度1次補正予算)

GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境の整備は、2020年度より順次進められました。ICT環境整備の施策は、主に校内LANを整備する「校内通信ネットワークの整備」と児童生徒が使用する端末を整備する「児童生徒1人1台端末の整備」の2つです。

令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」から教育用コンピュータの整備状況の推移を確認すると、GIGAスクール構想直前となる2020年3月時点ではコンピュータ1台あたり児童生徒4.9人(全国平均)で1人1台環境には遠く及ばない状況でした。しかし現在は1台あたり0.9人となり、1人1台環境が実現していることがわかります。

GIGAスクール構想 第2期(NEXT GIGA)に向けた端末の計画的な更新(令和5年度補正予算)

前述のとおり、2020年度以降に1人1台端末と高速通信ネットワークが集中的に整備されたことで、学校におけるICT活用は大きく進みました。一方で、1人1台端末の利活用が進むにつれて、故障端末の増加やバッテリの耐用年数が迫るといった問題が浮上。そこで、GIGAスクール構想 第2期(NEXT GIGA)を念頭に、5年程度をかけて計画的に端末を更新するとともに、子どもたちの学びを止めない観点から端末の故障などを想定した予備機の整備に対する補助も含めた「令和5年度補正予算」が組まれました。

具体的には、「公立学校の端末整備」として予算額(案)2,643億円が組まれ、都道府県に基金(5年間)を造成。当面、2025年度までの更新分(約7割)に必要な経費を計上。補助基準額は5.5万円 / 台とされ、15%以内の予備機の整備費用なども含まれています。また、都道府県を中心とした共同調達など、計画的・効率的な端末整備を推進することになっています。

GIGAスクール構想に関連するそのほかの事業

ここまで紹介した1人1台端末などのICT環境整備事業以外にも、GIGAスクール構想を推進するために行われている事業や取り組みがあります。「令和6年度予算」に含まれている事業や取り組みは以下のとおりです。

GIGAスクール運営支援センター整備事業

「GIGAスクール運営支援センター整備事業」では、端末の活用の日常化を支える支援基盤の構築と都道府県を中心とした広域連携により、学校のICT運用を支援する「GIGAスクール運営支援センター」の整備を推進します。2024年度は5億円が計上され、都道府県等が民間事業者へ業務委託するための費用の一部を国が補助します。

GIGAスクールにおける学びの充実

各学校で学習者用情報端末などを活用した学習活動が一層促進されるよう、ICT環境を積極的に活用するなかで、一つひとつの課題解決を図りながら、GIGAスクールにおける学びを充実させることが求められています。端末の活用状況を把握・分析するとともに、日常授業の改善を中心とする効果的な実践例を創出・モデル化し、すべての学校でICTの普段使いによる教育活動の高度化を目指します。2024年度は3億円が計上され、GIGAスクール構想の加速化事業(伴走支援強化・先進事例創出)や情報モラル推進事業、児童生徒の情報活用能力の把握に関する調査研究などに充てられます。

次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用促進

GIGAスクール構想により1人1台端末の活用が進み、生成AIの利用が社会に急速に普及しています。そのなかで、教育の質の向上を図るとともに、新たな政策課題に対応するため、目指すべき次世代の学校・教育現場を見据えた上で、最先端の技術や教育データの利活用に関する実証等の取り組みが推進されています。2024年度は1億円が計上され、最先端技術及び教育データ利活用に関する実証事業や教育課題の解決に向けた生成AIの導入・利活用に関する実証事業、実証事例を踏まえた先端技術の活用方法・諸外国の先端技術の動向に関する調査研究に取り組みます。

学習者用デジタル教科書の導入

2024年度より小学校5年生から中学校3年生を対象として「英語」、その次に現場のニーズが高い「算数・数学」の学習者用デジタル教科書が段階的に導入されます。このため、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に役立つデジタル教科書の活用について研究・発信を行うなど、デジタル教科書の導入効果を最大限に発揮するための取り組みが必要とされています。2024年度は17億円が計上され、学習者用デジタル教科書購入費と学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業に充てられます。

教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用

国全体で教育DXによる学びの環境を実現するには、教育データの利活用に必要な知見や成果を共有できる基盤的なツールの整備が必要です。また、蓄積された教育データが効率的・効果的に活用されるためには、「教育データの相互運用性を確保するためのルールの整備」「教育データを利活用する際の安全・安心の確保」「国や自治体によるデータ分析と分析に基づくアクションの実行」なども欠かせません。2024年度は9億円が計上され、文部科学省CBTシステム(MEXCBT)の改善・活用推進や文部科学省WEB調査システム(EduSurvey)の開発・活用促進、教育データの利活用の推進などが進められます。

学校におけるICT環境の整備状況

学校におけるICT環境の整備状況は、どのようになっているのでしょうか。文部科学省が2023年10月に公表した「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」によると、全国の公立学校(小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校および特別支援学校)における教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、2020年から2021年にかけて急激に変化しています。2020年3月時点では4.9人 / 台でしたが、2021年3月は1.4人 / 台、2022年3月は0.9人 / 台、2023年3月は0.9人 / 台となり、急速に学習者用端末の整備が進みました。

教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数

また、株式会社東洋経済新報社が小・中・高等学校の教員600人を対象に実施したアンケート調査(2022年12月)によると、GIGAスクール構想で整備された端末によって「とても便利になった」が20.2%、「一部便利になった」が52.2%と、肯定的な評価が7割以上となっています。ほかにも、児童生徒との連絡業務が「効率的になった」「ある程度効率的になった」という肯定的な評価の合計が約6割、オンライン授業や宿題、協働学習、教育全般が「効率的になった」「ある程度効率的になった」という肯定的な評価の合計が、いずれの項目においても過半数に達しています。

1人1台端末によって実現できること

従来の紙の教科書は、いわば「読む」教科書でしたが、1人1台端末で活用する学習者用デジタル教科書は「書く教科書」「共有する教科書」へと役割が拡張しているといえ、挿絵を拡大して詳細に見たり、書き込みを入れたり、内容を保存したりといったことが自由にできる、デジタルならではの良さが生かせます。またこの先、「スタディ・ログ」など教育データの活用が本格化すると、さらに役割が変わっていく可能性もあります。

1人1台端末は、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る上で欠かせない環境だといえます。個別最適な学びとは、子どもの特性や学習進度などに応じて教材や指導方法を柔軟に提供していくことや、興味関心に合わせて1人ひとりに応じた学習活動を提供し、学習者自身によって学習が最適となるよう調整していくことです。一方、協働的な学びとは、学習者同士または多様な他者と協働しながら、社会的な変化などを乗り越え、持続可能な社会の創り手となれるよう合意形成や意見の交換などを行い、お互いを高め合う学びです。1人1台端末の環境があれば、授業以外の活動や家庭学習などで日常的な活用もできます。

1人1台端末を活用した実践事例

実際に1人1台端末はどのように活用されているのでしょうか。ここからは、「SKYMENU Cloud」のWebサイトから、1人1台端末を活用した実践事例を抜粋して紹介します。各事例で「SKYMENU Cloud」のさまざまな機能を活用していますので、興味を持たれた事例があれば、ぜひ記事全文をご覧ください。また、実践事例ページには、下記のほかにも多数の実践事例を掲載していますので、ぜひご参考にしてください。

【小学校4~6年 算数】算数科で反転学習を取り入れ、「自立した学習者」を育む

大阪府大東市立住道南小学校の田中 大樹 教諭は、自立した学習者の育成をめざして、4~6年生の算数科で反転学習を取り入れて実践。次の授業で取り組む課題を[発表ノート]に貼りつけ、宿題として配付。併せて問題を解くためのヒントになる図などを貼りつけた[発表ノート]やヒント動画も作成します。子どもはそれらの資料を確認しながら、[発表ノート]に記入して提出します。

授業では冒頭の15分間、記入してきた[発表ノート]を基に班で話し合います。友達と考え方や書き方が違うならどこが違うか、いいなと思った点はどこかなどを話し合い、自分の[発表ノート]に書き足していきます。多くの子どもが授業前に友達のノートをチェックしており、交流の時間にすぐに意見を聞きたい友達のところに向かうこともできています。

【小学校5年 道徳】[ポジショニング]で立ち位置を明確にし、考えを共有、対話

福島県いわき市立湯本第一小学校の菅野 理巳 教諭は、「自分の考えを進んで表現し、ともに学び合う子どもの育成」を研究主題とし、学校全体で指導の研究に取り組みました。5年生の道徳「名医、順庵」で、母親を助けるために薬を盗んでしまったという内容の資料を読んだ後、[ポジショニング]を活用。理由があって盗んだことに対して「許す」と「許さない」の間に、子どもたちそれぞれにマーカを置かせ「なぜこの位置に置いたのか」を話し合いました。全体を俯瞰しながら、自分のマーカを置いた位置を視覚的に確認することで、子どもたちは考えを整理できていると感じられたといいます。

[ポジショニング]の活用は、子どもたちの関心を高めるだけでなく、教員が子どもの考えを見取りやすくなり、本時のねらいに向かって発問を組み立てることにも役立つと感じており、それが本音で話し合い、自分の考えを伝え合う授業の実現につながると考えています。

【中学校1年 社会】「単元シート」の活用で単元を貫く学習問題に迫る

宮崎県小林市立西小林中学校の早田 泰大 教諭は、社会科で『SKYMENU Cloud』を活用し、学習者主体の「学びとる」授業を実践。初めに「学習前の予想」と「単元の学習問題の答え」が記入できるワークシートと、学習の見通しやルーブリックを記載したプランニングシートを配付し、毎時間の学びをまとめた「まとめシート」を1枚ずつ追加していき、単元の最後に「単元の学習問題の答え」を記述することで、単元全体を通した学びの振り返りに生かし、これを「単元シート」と呼んでいます。

「単元シート」は、班で意見交流をしながらまとめますが、友達の「まとめシート」の中に参考になるものがあれば、その場で[グループワーク]を開始して、その部分の「まとめシート」をもらっても構わないことにしました。もし、単元途中の授業を欠席していても、友達からもらえば単元全体のまとめシートをそろえることができるので、しっかりと考察できたとのこと。これも「他者と協働して、自ら考え抜く」新しいかたちだと感じています。

【中学校3年 音楽】対話と共感で深まる、子ども主体の鑑賞活動

茨城県土浦市立土浦第五中学校の清水 匠 主幹教諭は、音楽の鑑賞で『SKYMENU Cloud』を活用。実は、鑑賞の授業を充実させるのはとても難しく、長年の課題だったとのこと。音楽は、そもそも個人差が大きく、得意不得意がはっきりしている教科で、鑑賞となるとその差が一層顕著になります。この実践では、「威風堂々 第1番」の2つの旋律の違いを聴き分ける活動で、[気づきメモ]を使って個人の「気づき」を入力させます。その後、[グループメモ]機能を使ってグループで気づきを共有しました。

1人1台端末を活用することで「全員が自分の意見を出した上で話し合いをスタートできる」「みんなの気づきが共有されるから考えが深まりやすい」という2つの効果を実感しており、曲を鑑賞してから、気づきを入力したり、対話をしたりと、子どもたちはずっと学習に集中していたと手応えを感じています。

1人1台端末を活用するために大切なこと

この記事で紹介したとおり1人1台端末などのICT環境整備は大幅に進んでいます。しかし、活用においては地域や学校間の格差が指摘されており、まだ十分な活用に至っていないという学校も少なくないのが現状です。ここでは、1人1台端末を有効活用するために大切だといわれている3つのポイントを紹介します。

教員がICTの必要性を実感する

1人1台端末をはじめとするICTの活用を推進するには、何よりも教員がICTの必要性を実感することが大切だといわれています。ICTを「あれば便利なもの」という程度の認識であれば、「別になくても、いい授業ができる」という考え方につながるかもしれません。しかし現在、目指す「学習者主体の学び」を実現させようと考えると、ICTをツールとして活用することの有用性が見えてきます。そのため、教員が「子どもたちが思考と表現の道具としてICTを使えるようにする」「そのために1人1台端末が整備された」という共通認識を持つことから始めることが必要だといえます。

ICTが使いやすい環境づくりを行う

児童生徒がICTが使いやすい環境をつくることも重要です。例えば授業中に、学んだ事柄について「もっと知りたい」と思ったとき、わざわざ「検索していいですか?」と質問しなければならない環境より、気になったことをいつでも調べられるほうが、子どもたちが主体的に学べる環境だといえます。

「遊んでしまうから」「興味がそれてしまうから」と心配し、児童生徒の必要以上に制限してしまうのはお勧めできません。「学習と関係ない使い方はしない」「他者を傷つけない」といった利用ルールは必要ですが、自由にICTを活用できるような環境を整えるほうが、より深い学びにつながりやすいといわれています。また、使いやすい環境の中には「児童生徒が安全に活用できる情報セキュリティ対策」も含まれます。

ICTの使い方に慣れるための時間を設ける

最初は、児童生徒がICTの使い方に慣れるための時間を設けることも大切です。ICTを自由に使いこなすためには、ある程度のスキルが必要です。初期段階でのつまずきをなくすためにも、ソフトウェアの操作やキーボード入力など、基礎的な練習する時間を設けることが大切です。計算や漢字の練習などと同様、端末を使う機会が増えれば、最初は苦手意識があっても必ず克服できるはずです。これは、ICTに苦手意識を持っている教員にも同じことがいえますので、意識的にICTに慣れるための時間を作ることをお勧めします。

児童生徒や教科の特性に合わせて、1人1台端末を活用

GIGAスクール構想の推進により1人1台端末の整備が進められ、学校におけるICT環境は着実に進展しました。また、1人1台端末の活用によって、主体的・対話的な深い学びの実現に向けた授業改善が進められています。1人1台端末を有効に活用するには、各教科等の中でどのように活用できるのかを教員間で共有することも重要です。そして「教員がICTの必要性を理解する」「ICTが使いやすい環境づくりを行う」「ICTの使い方に慣れる時間を設ける」といった点も意識して、着実に取り組んでいただければと思います。

ICTを活用した学習活動を支援する「SKYMENU Cloud」

GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台の端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」や多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。