実践事例

小学校5年 外国語

教材のデジタル化で実現する
個別最適・協働的な学び

単元名:He can run fast. She can do kendama.

村木 開 教諭

北九州市立柄杓田小学校

本単元について

本単元の目標は、児童が「He can~, She can~.」などの他者の「できること」に関する基本的な肯定文や否定文、疑問文などの表現の意味を理解し、自己や他者のできることを表現する力を言語活動を通して身に付けることである。そのために、本単元では、児童が初めて出会う言語材料を言語活動を通して繰り返し発話できるようにするために、特に以下の4つの場面において『SKYMENU Cloud』を活用した。

単元計画(全7時)
第1時

学習計画を立てる

第2時

「できること」の言い方、質問の仕方を知る(本時)…12

第3時

インタビューの内容を決め、インタビューの練習をする…3

第4時

インタビューをする…4

第5時

クイズをつくる

第6時

クイズ出題の練習をする

第7時

先生のできること・できないことクイズをする【単元のゴール】

本時(第2時)について

本時(第2時)では、子どもたちの個別最適な学びを実現するために[発表ノート]を活用した。[発表ノート]の[PDFの取り込み]の機能を使い、ワークシートをデジタル化した。この手立てにより、児童が表現したい文章の文構造を直感的な操作で作成し、それを参照して言語活動を行うことができた。

また、リンクを添付する[Webリンク]機能を用いて、デジタル教科書と連携させ、子どもたちが自分の課題に合わせたデジタル教科書の機能を使えるようにした。この手立てにより、言語活動に向けて、初めて学習する「can」の表現を何度も繰り返し発話することができた。以上の工夫により、児童は本時のねらいにより近づくことができたと考える。

本時のねらい

ICTを活用して、友達のできること・できないことについて質問したり答えたりする活動を通して、「can」を用いたできること・できないことの言い方をより効果的・効率的に知る。

本時の展開

段階 学習活動・内容 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)
導入
  • 本時の内容を把握する。
展開前段
  • Small Talkをして、本時で学習する言語材料を確認する。
  • [発表ノート]を用いて、自分のできることやできないことを記入し、友達と伝え合う。

1[発表ノート]に添付したデジタルワークシートを活用しながら言語活動。

展開後段
  • Let’s listen(教科書のリスニング問題)を聞き、本時で学んだ表現を確認する。

2デジタル教科書を個別最適に活用。自分の課題に合ったコンテンツを選び、「練習」をする。

終末
  • 本時の学習の振り返りを行う。

SKYMENU Cloud活用のポイント(効果と児童生徒の反応)

1言語活動をDX(デジタルトランスフォーメーション)

発表ノート、PDFの取り込み

本時の実践で最も伝えたいことは「言語活動をDXすることで、児童が自信をもって言語活動に向かえるようになる」ということだ。

第1時に子どもたちと立てた学習計画では、第2時のめあては「『できること』の言い方・質問の仕方を覚える」と決まった。この第2時は、特に知識・技能面で努力を要する児童にとっては、本単元の目標が達成されるか否かを本時の学習活動が左右する重要な時間の一つだと考えている。なぜなら、児童は第2時を逃してしまったら、もう残りの時間に言語材料の習得をめあてにした授業はないからだ。

そこで、子どもたちがピクチャーカード付きの文を参照できるよう、言語活動のDXを試みた。写真は、児童が[発表ノート]の[PDFの取り込み]機能で取り込んだピクチャーカードを操作しながら「Can you~?」、「Yes, I can. No, I can't.」という文を完成させ、自分が伝えたい内容を表現している場面だ。普段の外国語で努力を要すると判断される児童も、ピクチャーカードを操作して完成させた文を参照しながらであれば、自分が伝えたい内容を発話できた。なぜなら、本時では少なくとも36回(ピクチャーカード18枚×2回)以上「Can you~?」「Yes, I can. No, I can't.」というやりとりをするように意図的に仕組んでいるからだ。この言語活動のDXによって、第2時では、全員が「Can you~?」「Yes, I can. No, I can't.」の言語材料を使って言語活動ができるようになった。本時の実践では、言語活動を行う場面におけるDXが児童にとってより効果的・効率的な言語材料の習得のための一つの可能性を示せたと考えている。

※本原稿ではDXを「デジタル教材を活用して児童の学習をより効果的・効率的なものへと変革すること」と定義している。

▲ ピクチャーカード(発表ノート)を見ながら言語活動

2デジタル教科書を個別最適に活用

発表ノート、Webリンク

児童は外国語科の授業において、児童用デジタル教科書を日常的に使用している。これにより、子どもたちが主体的に、自分の課題に合ったコンテンツを選び、「練習」できる。しかし、コンテンツがたくさんあるため、児童が何の課題を解決するために、どの機能を活用したらよいかと、混乱してしまうことが想定される。そこで、[発表ノート]を活用して、個別の練習場面を設定した。また、[Webリンク]機能を用いて、デジタル教科書と連携させ、子どもたちが自分の課題に合わせたデジタル教科書のコンテンツを使えるようにした。

個別の場面を設定したことによって、子どもたちが自分の課題を自覚し、その克服に向けて粘り強く学習に取り組む姿勢を育むことができた。

▲ 児童に配付した[発表ノート]。左のページは、個別学習の進め方が示されている。右のページは、[Webリンク]を活用してデジタル教科書のコンテンツを添付し、児童が自分のレベルに合わせて練習内容を選べるようになっている

3言語活動のやりとりを可視化

発表ノート

習得した言語表現の発話が苦手な児童の抱える課題の一つに「アルファベットと言語材料が結びついていない」ことが挙げられる。そこで、[発表ノート]を用いてピクチャーカードをスライドし、やり取りする内容を可視化する教材を作成した。

▲ ピクチャーカードを選び、スライドさせるだけで質問リストが完成する

第3時のめあては、本単元のゴールに向けて、学校の先生たちに質問する内容を決めることだ。この教材を活用することで[発表ノート]に取り込んだピクチャーカードの画像データをスライドするだけで、質問文を完成させられ、発話する内容をイラストと文字の両方から視覚的に認識できる。

また、第4時に職員室の先生たちにした質問の回答も、ピクチャーカードの画像データをスライドするだけで、クイズの画面が完成できるようにし、単元目標の達成のために児童が効果的・効率的に学びに向かえるように工夫した。

4成果物を共有し協働的な学びへ

グループワーク

第3時に、[発表ノート]を用いて言語活動でやり取りする内容を可視化した。第4時では、職員室等にいる先生について6年生に知らせるクイズを作成するために、先生たちのできること・できないことをインタビューしに行った。その際も[発表ノート]を活用することで、ピクチャーカードをスライドするだけで、インタビューした内容を記録できた。これにより、15分ほどの活動時間でインタビュー、記録、個別のクイズ作成、共有、発表準備が完了した。

▲ インタビューの内容は、ピクチャーカードをスライドするだけで簡単に記録できる

また、[グループワーク]機能を用いて作成したクイズを即時に共有し、クイズの出題練習を行った。友達と協力してお互いに質問を出し合ったり、考えや気持ちを伝え合ったりすることで、実際のクイズ出題時に自信を持って臨むことができた。

こんな場面でもつかえる! 実践を振り返って

『SKYMENU Cloud』は、視覚的サポートと効率的な教材作成を
可能にし、言語活動の充実に大きく貢献してくれるツール

本単元では、ICTを効果的に活用することで、児童の言語習得と活動量を大幅に向上させることができた。『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]機能を使用したピクチャーカードの活用により、努力を要する児童も含めて、全員が言語活動を通して単元目標を達成することができた。また、デジタル教科書との連携で個別学習の機会を設けたことで、児童の自主性と課題解決能力が育成された。さらに、質問作成や回答表示を効率化したことで、実際のインタビュー活動の時間を確保でき、学習の質が向上した。

『SKYMENU Cloud』は、視覚的サポートと効率的な教材作成を可能にし、個別最適・協働的な学びに向けた授業改善に大きく貢献してくれるツールだ。今後は、社会科や理科などの他教科でも、調査活動やプレゼンテーションにこの教材を活用し、個別最適な学び・協働的な学びの実現に向けた授業研究を行っていこうと考えている。

(2025年1月掲載)

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