実践事例

小学校5年 社会 <SKYMENU エキスパートTeacher> 授業づくりとICT活用

すべての児童が学びに向かう授業に

家庭学習で資料を読み取り、[気づきメモ]に記録

岡山県赤磐市立山陽西小学校の松下 豊 教諭は、多様な学力の児童が一緒に学ぶ学級において、「すべての児童が学びのスタートラインに立てること」をめざして授業づくりをされています。『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]を活用して、児童が家庭学習で資料をじっくりと読み取り、得た情報を持ち寄って学級全員で対話し、考えを深めた社会の授業をレポートします。(2023年10月取材)

松下 豊 教諭

岡山県赤磐市立山陽西小学校

より多くの児童が学びのスタートラインに立てるように

本校は、職員35名、全校児童167名が在籍する全学年単級の小規模校です。すべての教員が学校教育目標「主体的・対話的に学び よく考え たくましく伸びていく 児童の育成」を意識し、さまざまな教育活動に取り組んでいます。

私が本校に着任したのは昨年度のことでした。今年度は情報主任と5年1組の学級担任を担っています。本学級には35名の児童が在籍しています。児童たちはとても素直で、学習に対して高い意欲をもっています。しかし、学習内容の理解度や定着の度合いはさまざまで、一人ひとり学習状況が異なります。より多くの児童が授業に参加できるようにしたい、全員が学びのスタートラインに立てるようにしたい、という想いで授業づくりをしています。ICT機器は、そのために有効な手段になり得るものですから、より効果的な活用方法を模索しています。

[気づきメモ]を資料や文章の読み取りに生かす

2023年8月の学習活動端末支援Webシステム『SKYMENU Cloud』のアップデートで、[気づきメモ]が利用できるようになりました。文字情報だけでなく、画像やWebサイト上の情報を短文で簡単にメモできること。さらに、メモを学級内で共有でき、気づきや考えをリアルタイムに共有できることに魅力を感じました。特に、堅苦しくまとまった文章ではなく、メモを気軽に共有できるという仕組みは、画期的でした。

5年生の学習では、児童が自分の言葉で表現をしたり、まとめたりする活動がたくさんあります。2学期から早速活用をスタートさせ、社会や国語などで資料や教材を読んで気づいたことを共有する場面で使っています。今回は、「家庭学習との連動」と「資料の読み取りの充実」に挑戦した、5年社会の授業をご紹介します。

実践 5年社会
日本の工業生産と貿易・運輸 主な輸出品と輸入品

輸出、輸入に関する資料を読み取り、適切に表現する力を育む

5年社会では、これまでに自動車や製鉄などの工業製品について学び、社会見学などにも行ってきました。本単元の学習は、これまでの学習内容と連続性があり、工業製品と貿易や運輸の関わりを考えることがテーマです。さまざまな部品やプラスチック、鉄鋼などから始まり、最終的には国内の工業生産を支える貿易や天然資源について焦点を当て、さらに深く掘り下げていきます。

また、学習指導要領では小学校社会科の教科目標に次のように記されています。

「社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考えたり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断したりする力,考えたことや選択・判断したことを適切に表現する力を養う」。

ここで示されている「考えたことや選択・判断したことを適切に表現する力」は、本学級の児童につけさせたい力と合致しました。

そこで本時は、日本の主な輸出入品について複数の資料を分析したり、関連付けたりして、日本の主な輸出入品の種類とその相手先、輸出入の変化に着目し、日本の貿易の特色を捉え適切に表現することを学習のねらいとしました。

しかし、このねらいに迫るためには、考えるために必要な輸出入に関する情報を児童が資料から読み取れることが必須です。そこをクリアできて初めて、すべての児童が学びのスタートラインに立てます。

そこで、本時は輸出と輸入で児童を2つのチームに分け、それぞれに関連する資料を分析して学習を進めることにしました。課題を分けることで児童が読み取る情報を限定し、学習に取り組みやすくするとともに、家庭学習を取り入れることで児童が自分のペースで資料と向き合い、読み取る力を高められるようにしました。

家庭学習 自分のペースで資料を読み取る

前日の宿題として、輸出と輸入の情報が載っている教科書のページを印刷し、それぞれのチームの児童に配付しました。児童は家庭学習で紙の資料をじっくりと見て、日本の輸出や輸入について分かったことや疑問に思ったことを[気づきメモ]に入力してきました。

インターネット環境の都合で、家庭で取り組めない児童は、学校で取り組みました。お休みだった児童を除いて、全員が家庭学習で取り組んできてくれました。

友達の気づきに「いいね」。資料を注意深く読む仕掛けに

授業の導入では、本時の目標「資料を基に輸出、輸入の特色を調べよう」を確認したのち、速やかに輸出と輸入のチームに分かれました。そして[気づきメモ]に入力してきた輸出と輸入に関する気づきを共有しました。

チーム内でのメモの共有は、[グループメモ]機能を使いました。チーム内で気づきを閲覧させるのですが、その際、児童に「友達のメモを見て、自分では発見できなかった新しい情報があれば『いいね』をしよう」と伝えました。これにより、タイムライン上にある一つひとつの気づきを、児童が注意深く読み取ってくれることを期待しました。「いいね」は積極的に押されており、児童が新しい情報を得て、知識を補完している様子がうかがえました。

共有したメモを[発表ノート]にコピーしてまとめる

その後、輸出と輸入のチームでそれぞれ[グループメモ]で共有した内容を個人でまとめる時間を取りました。[発表ノート]上でメモ、つまり情報を取捨選択するなかで児童の思考が整理されると考えたのです図1

[気づきメモ]には、選択したメモを[発表ノート]にコピーできる機能があるので、既にあるメモをそのまま使えます。思考を整理する作業にスムーズに移れるので、児童たちは集中を途切れさせることなく取り組めていました。

図1 必要な情報を[気づきメモ]から[発表ノート]にコピー。[発表ノート]上で情報を精査する

[発表ノート]を提出し、相互に閲覧

まとめが終わった児童から[発表ノート]を[提出箱]に提出させました。そして、輸出、輸入の友達の[発表ノート]を自由に閲覧できる時間を設けました。この時間には2つの意図がありました。一つは、まとめにかかる時間の個人差が大きいので、時間を調整したいという意図。もう一つは、早く終わった児童がこの後の全体交流に向けて、予習的に情報を収集してほしいという意図です。

以前、紙のノートを中心に授業をしていた頃は、教室を立ち歩かせて友達の考えを見させたり、短時間であれば待ってもらうことがありました。それが今では、端末上で、しかも短い時間に、自由に友達の考えを閲覧できます。ICTを活用する大きな利点だと思います。

輸出と輸入 教室の前に集まって意見交換

それから輸出と輸入に関する気づきを両チームから発言してもらい、黒板に位置付けていきました。児童たちは積極的に発言してくれて、「私もそう思った」などと掛け合いも生まれていました。児童の発言からは、ねらっていたキーワードが多数出ており、世界地図やグラフから情報をよく読み取っていることも分かりました。

輸出、輸入に関する考えがひととおり出たところで、教室前方の黒板の前に子どもたち全員を集めて、輸出と輸入を比較して日本の貿易について考える場を作りました。児童の掛け合いの中で「出来上がったものを輸出している」という貿易の特徴を捉えたフレーズが出てきたり、既習の学習内容と絡めた発言をしたりする児童も見られました。

▲ 左右の大型テレビに輸出、輸入の児童の[発表ノート]を提示。黒板を使って、みんなで日本の輸出入の特徴を比較、整理した

自分と友達の気づきを参考にして、自分の言葉でまとめる

学習のまとめでは、「比較して分かったことを自分の言葉で書いてみよう」と児童に促しました。ある児童は「日本は完成品を多く輸出している」と分析し、「日本の弱点は燃料が国内で取れないこと。その弱点を補うために強みである製品を輸出している」とまとめてくれていました。書くことに苦手意識のある児童が「今日はたくさん書けた」とうれしそうに教えてくれたことが印象的でした。

[発表ノート]のOPPシートで、単元を通じた振り返り

社会では、[発表ノート]で作成したOPP(One Page Portfolio)シートに、毎時間の振り返りを記録させています図2。単元を通じた学びの軌跡を一覧で見られるので、児童が学びの連続性や関連性を意識しながら学習活動に臨めるという利点があります。

教員にも利点があります。[提出箱]に提出させているので、児童の進捗確認や見取りを効率的に行えます。また、教員の端末上でいつでも閲覧できるので、学習のポイントとなる部分を、紙のノートのときと比較して、しっかりと目を通せるようになりました。また、振り返りに良い記述や次の学習につながる考えがあれば、次時の導入で大型テレビに投影するだけで紹介できるので便利です。

振り返りは子どもたちに定着していて、授業の最後の5分は必ず振り返りをしています。OPPシートの[提出箱]は、いつでも提出可能な設定にしているので、授業時間中に書き終えられなかった児童は、家で仕上げて提出してくれます。

図2 [発表ノート]で作成したOPPシート。入力後は[提出箱]に提出

[気づきメモ]で家庭学習と授業がつながり、新たな学びの可能性が広がる

当初の本時案では、児童たちに輸出と輸入に関する資料を与え、それぞれの考えをまとめる。そして、学級全体で共有して比較し、まとめる、という流れでした。児童によっては45分間、集中力を切らさずにこれらの課題に向かうことは難しかったと思います。また、書くことに苦手意識のある児童は、資料を読み、気づいたことをノートにまとめる段階でつまずいていたことでしょう。そうなると意見交流の場面では、理解ができた一部の児童の発言が中心となって進んでいたと思います。

本時の[気づきメモ]は、私の授業づくりの課題に対して、有効なアプローチでした。また、この実践から授業と家庭学習との連携という新しい学びのかたちが見え、可能性が広がったように感じています。社会、そして国語の登場人物の心情変化の読み取りなど、さまざまな場面で取り入れ、効果的な活用方法を探りたいと考えています。

(2024年3月掲載)

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