実践事例

小学校4年 道徳SKYMENU Cloud事例 道徳 × ICT 自分の持ち味とは?本音で話し合う授業へ 児童の心を[気づきメモ]で開き、[ポジショニング]で自己内対話を促す

畔木 歩 教諭

愛知県安城市立安城南部小学校

お互いの良さを見つけ出し、
認め合える、温かな授業に

A領域の「自分をかがやかせて」を主題として実践しました。教材は、光村図書の「みんなちがって、みんないい」を使用しました。この教材は、金子みすゞの詩「わたしと小鳥とすずと」を読んだ児童が、自分の個性を生かす重要性や、互いの違いを認め合い共存することの価値に気づく様子が描かれています。それを基点にして、児童が話し合いながら自他の良さを見つけ出し、認め合えるような、温かな授業を実現したいと考えました。

「持ち味」について、概念から自分や友達にシフトして考えていく

授業は「自分の持ち味は何だろう」という問いに迫る前に、まずは持ち味について考えることからスタートしました。最初は客観的な視点から考えていき、徐々に自分自身や身近な友達に焦点を当てて持ち味を考えていくような展開です。

その中で『SKYMENU Cloud』の[気づきメモ]や[ポジショニング]は、本時のねらいに迫るに当たって欠かせない存在でした。

[気づきメモ]を「チラシの裏」のように使い、本音を引き出す

道徳科の授業において、私は児童のつぶやきや本音を拾い上げることを大切にしています。そのため、授業が始まる前に児童の心を開き、リラックスした状態にさせることや、自分の気持ちや意見を自由に表現できる空気感をつくれるように配慮しています。

そのための方法の一つとして、[気づきメモ]を活用しています。例えば、本時では授業が始まるわずかな時間を利用して、「今の気持ちはどんな感じ?」と尋ねて気持ちを入力させます。入力する言葉は短くても構いませんし、誤字や脱字があっても問題ありません。「チラシの裏」のような感覚で書き込んでもらい、本音を気軽に表現できる空気をつくるようにしています。

初発の感想を[気づきメモ]に入力。
みんなで学習テーマをつくる

授業の導入では、あらかじめ[気づきメモ]に入力させた事前読みの感想を基に、児童全員で学習テーマを考えました。

図1事前読みで初発の感想を[気づきメモ]に入力

感想を伝えたい児童にどんどん発言させ、その中でさりげなくAさんを意図的指名しました。「さりげなく」指名したのは、教員があからさまに意図的指名をすることで、児童の発言に「正解」「不正解」があるように受け止められること。そして、本音の会話が出なくなってしまうことを懸念したためです。

Aさんを意図的指名したのは「ほかの人に追いつかなきゃと思ってしまう」「自分の持ち味ができればいい」という言葉が[気づきメモ]の中にあったからです図1。発言してもらった後、「持ち味って一体何だろう」と全体に問いかけ、意見を交わしてから「持ち味を生かすとは?」という本時の学習テーマをみんなで設定しました。

みんなは「持ち味」をどれくらい生かせているのか?

次に、「みんなは自分の『持ち味』をどれくらい生かせているだろう?」という問いを投げかけました。児童には[ポジショニング]機能でマーカを置き、コメントも入力してもらいました。結果、多くの児童が「持ち味を生かせていない」と感じていることが分かりました。

図2[ポジショニング]の結果。マーカを選択するとコメントを確認できる

一方で、マーカはさまざまな位置に広がっており、児童が学習テーマに向き合って考えている様子も伺えました図2。実は口頭で同じような問いをした場合、表面的な回答に留まることが多いのです。[ポジショニング]で考えさせた場合、児童の思考が促され、より深く掘り下げられているという感触をもっています。

私は[ポジショニング]はコメント入力こそ重要だと考えています。児童が考えを言語化する過程で自己内対話が生まれ、そして考えをもてたことで「発言したい」という意欲が高まるからです。道徳科の授業で望ましい好循環が生まれます。

コメント入力のメリットはもう一つあります。それは授業終了後も全員が考え続けられる、全員が参加できるという点です。コメントが残っていれば、授業が終わっても教員も児童もその内容を見て、友達に声をかけるきっかけをもてるのです。

それは、授業時間に限らず学校生活全体を通じて道徳性を養う取り組みができるということです。私自身も、児童が悩みながら考えた回答を見ると、時間を問わず関わりたいと思うようになります。時間の制約を超える、道徳科の授業で[ポジショニング]を活用する大きな利点だと思います。

[ポジショニング]という行為が、学習テーマと自分を関わらせるきっかけに

[ポジショニング]を行った後は、いつも時間を十分に取って全員でその結果を共有します。その際、児童に問うのは「結果が予想どおりか、意外だったか」ということです。この質問により、児童は自分や他者の考えに意識を向け、その違いに気づいて、疑問や興味を抱くようになります。

本時も同様に共有しました。すると、ある児童が「持ち味を生かしている人たちは、得意なことや好きなことに自信がある人だ」と述べました。それを受けて「それが持ち味なの?」と問い返しました。そして、「100%生かせている」でも「100%生かせていない」でもない、70%程度の位置に置かれたマーカに注目させ、「ここの意味は何だろう?」と一緒に考える時間を設けました図3

児童からは「生かせていないことがあって自信がない」や「毎日は生かせないから」といった意見が出されました。これに対し、「持ち味は毎日生かせるものなのか?生かせない日もあるのか?」とさらに問いを深めました。

図3全員で[ポジショニング]を共有
図3[ポジショニング]の両極の70%程度の位置に着目する

「持ち味」を自分事で考えるための深化発問

すると、「持ち味に気づいていないのでは?」「持ち味を生かすことは、得意なことを伸ばすことではないか?」という意見も交わされました。これらの意見を受けて「では、あなたの持ち味は何ですか?」と深化発問を投げかけ、その後、[気づきメモ]に自分の持ち味を入力させました。この発問によって、これまでの遠い視点から見ていた持ち味が、一気に自分事となり、児童は自分と向き合って真剣に「持ち味」を考え始めました。

心のままに[気づきメモ]に入力できる児童もいれば、キーボードを打つ手が止まる児童も見られました。大型テレビに[気づきメモ]の画面を投影して、みんなでその内容を見ていると「分からない」とか「持ち味なんてない」といった本音をつぶやいている児童も見られました。

友達の「持ち味」や「良さ」を伝え合う

[気づきメモ]を見ていると、ある児童が「長所を言い換えれば短所になる」と発言し、「持ち味は見方によって価値が変わる」ことに気づきました。そこで、「自分が気づいていない持ち味を、友達が教えてくれるかもしれない」と提案し、児童同士で「持ち味」を伝え合う時間をつくりました写真1

写真1「あなたの持ち味は……」友達に良さや持ち味を本音で伝える

公開授業という緊張感のある中でしたが、子どもたちは積極的に交流し、友達の持ち味や良さを伝え合っていました。お互いのことを大切に思う様子も見られ、温かな雰囲気の授業になっていました。

こうした状況が生まれたのも[気づきメモ]で本音を共有したからだと思っています。すでに自分の心の内を[気づきメモ]に入力しているので、友達と対話する準備が整っていました。自分の本音が先生や友達に受け取られたことで、心の重荷が取り除かれた。まるで栓が外れたように思いがあふれでてきて、本音で話せたのだと思います。

振り返りをまとめ、自分自身と向き合う

授業の振り返りは、じっくりと時間を取りました。ここまでお互いに十分に話し合った後なので、自分自身の心に向き合う時間をつくってあげたいと考えたのです。そして、最後に「自分の学びを伝えたい人に伝える」という時間を設けました。多くの児童は学んだことをほかの人に聞いてもらいたいという願いをもっていました。公開授業を参観された方に積極的に伝えようとする児童や、友達だけに話をする児童もいました。

児童の振り返りを見ると「自分の持ち味を生かすことが、ほかの人の役に立つかもしれない」「得意なことを増やせば、苦手を克服できる」「持ち味に自分らしさがあればよい」といった感想をもっていました。中には、「自分らしさを出すことに躊躇していたが、今日の経験で少しずつでも自分らしさを出していきたい」と書いた児童もいました。この児童にとっては、本時が自分の個性を認識して自信をもてる機会になったのではないかと思います。

本時において、児童が学習テーマと向き合い、考えを深めるためには[ポジショニング]での自己内対話や[気づきメモ]で本音を出し合うことは不可欠だったと思います。ICTを上手に使いこなすことで、新しい学びが、新しい冒険ができます。私も児童も、冒険に出るための頼もしい装備を手に入れたように思っています。

(2024年3月掲載)

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