実践事例

小学校 特別支援学級 生活単元学習児童1人1台の活用

アメリカのポーリー君に日本を紹介しよう

単元名:タブレットで遠くの人と話してみよう

上條 亜以子教諭

長野県朝日村立朝日小学校

本時のねらい

アメリカに住むポーリー君(ALTの弟さん12歳)に日本文化を紹介したいと願った子どもたちが、伝える時に気をつけたいことを決めた上で撮影に臨むことにより、動画を交えた資料を使って相手に伝わりやすいプレゼンテーション映像を撮影することができる。

授業の実際

本学級の児童は1つのテーマに沿って話しながら対話を深めることができるようになり、「もっと色々な人と話したい」という願いをもっていた。テレビ会議システムで異国の人とも話せると知ると「友だちになりたい!」と交流が始まる。
第2次の初めは写真等の資料を見せながら話したが、カメラで上手に写すことが難しかったため、『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]を表示して伝えることになった。
第3次ではタブレットを持ち帰り1「すき焼きを作る様子」等を録画、2動画編集ソフトで大事な場面を選び[発表ノート]と[グループワーク]でスライドに貼ることで、言葉の表現を映像で補い、より詳しく日本の良さを伝えることができるようになった。本時では3伝え方の目標を意識しながら、日本文化をプレゼンする動画を撮影した。

本時の展開

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)

1.
前時の活動をふり返る

  • 日本の良さを伝える準備をしてきたね。
  • ポーリー君に見てもらう期待感をもたせる。

学習問題:いよいよプレゼン動画撮影。自分の伝えたいことは何だったかな?

  • (すき焼き作りの動画を見せることで)日本には驚くことがあることを伝えたい。
  • 私は剣道の楽しさを、実況を交えて伝えたい。(※A児)
  • 自分の目標を思い出せるよう、各自作成しておいた目標カードを黒板に掲示する。

2.
プレゼン動画を撮影しよう

  • 緊張するけど、失敗したら録り直せるから頑張ろう。

3Zoomのレコーディング機能を活用し録画する。

学習課題:伝え方の目標を大切に、日本文化を紹介する動画を撮ろう!

  • さっきの△△さんの発表は、目標通り「ゆっくりはっきり話す」ことができていたな。
  • 1ペア撮影終了ごとに、目標と照らし合わせてどうだったか、他グループから意見をきく。

3.
撮影をふり返る

  • すき焼きを見たら美味しそうで、ぼくも食べたくなっちゃったよ。
  • 日本の良さを伝えられたな。
  • 第2次の活動より詳しく伝えられたことを価値づける。
  • 次回、通訳のALTに同席してもらい、ポーリー君に動画を見せながら交流することを伝える。

タブレット端末活用のポイント (効果と児童生徒の反応)

1タブレットで実際の様子を撮影

カメラ

▲ タブレットを持ち帰り、紹介したい日本の食文化を動画で撮影

「百聞は一見に如かず」の諺通り、言葉だけで行う説明は難しいことが多いが、動画を交えた紹介は表現の可能性を広げてくれたと感じている。実際にすき焼きを作って食べる様子、蕎麦やお団子を食べる様子を自宅で撮影してくる児童もいれば、よく利用する近隣施設へ出向き取材映像を撮ってくる児童もいた。失敗した場合はテイク2ができることも、ICT機器活用の強みである。「間違えたらもう一度やってみよう」という思いが、児童の大きな安心感につながっていた。

2発表ノートに動画を貼り付けよう

発表ノート、グループワーク

▲ ペアで[グループワーク]を実施。アドバイスしながら資料を作成

撮影した動画を動画編集ソフトで3分弱にした。「せっかく撮った動画なのに」と渋る児童もいたが、場面をトリミングしていくと自然と大事な部分が残り、要点を絞った動画ができ上がった。動画の貼り付けは容量オーバーに注意しつつ、担任とICT支援員が手伝った。低・高学年でペアを作り、[グループワーク]で共同編集することで、互いにアドバイスをしながら文字を入れたりスタンプを押したりして[発表ノート]を作ることができた。

3プレゼン動画を撮影しよう

発表ノート、Zoom

▲ [発表ノート]に動画を埋め込み、プレゼンした

剣道の動画入りスライドを作成したA児(本時案※)は第2次の学習ではスライドの文を読み上げるだけにとどまっていたが、第3次では目標カードに「ビデオを見ながら実況する」と記入し、スライドを見せながら「この練習は本当にきつい!息もはあはあです」と実感を込めて説明した。実物を見せることで発表に余裕が生まれ、台本がなくとも経験者ならではの体験を交えて実況説明することができた。

こんな場面で使える!実践を振り返って

◎ワンクリックで作業を元に戻せる

消しゴムかけに日々悩まされている特別支援学級の子どもたち。書けない、消せないの繰り返しでプリントが破れてしまうことも。タブレットでは書いた線を「もどる」ボタンでやり直せるため、ある児童は[発表ノート]上で矢印マークを書く練習をし、初めて手書きで書くことができた。巧緻性を高める練習の一環として活用できそうである。

◎ワンタッチでレイアウトを変えられる

新聞の割付・作文の構成も、これまで紙ベースで行ってきた操作を次のようにタブレットに置き換えることができる。
①[発表ノート]へ、思いついた項目から入力
②入力文字を付箋のようにドラッグ
③並べ替えてレイアウトを試せる(担任が枠を作って[背景化]し[配付]しておくと便利)
④写真の差し替えも、データ上なら破棄した分がゴミにならず、カードを順番に糊付けしなくても、次時に続きから作業を再開できるメリットがある

◎文字の大きさを気にせず思いの丈をぶつけられる

感想文など書きたい思いが溢れている時、「文字が枠に収まらない」「紙面に内容が収まらない」と人知れず苦労している児童には、Microsoft Wordをはじめとした文字入力ソフトの活用を提案することで、本来伝えたかった思い出や感想を心置きなく文章にするための支援をすることができる。

◎交流先の学級の仲間に学習したことをお披露目

最後に、特別支援学級の児童の自己肯定感を高める取り組みについて述べたい。本学級には、特別支援学級で学んだ内容を児童自身がニュース動画にまとめ、交流先の学級で披露する機会を設けている児童がいる。最初に「新しい先生へインタビューです」「社会の学習の〇〇について、詳しくお知らせします」など本人出演の動画を挟み、映像やアナウンスを交えてビデオエディターで編集したものである。交流先の学級の仲間たちも思わず「へー」と引き込まれ、「〇〇さんて、特別支援学級でこんな学習をしているんだな」と理解する機会になり、本人も友だちの反応から自信をつけて次の学習に取り組む意欲につながっている。
特別支援学級だけでなく、通常学級に在籍している“支援を要する子どもたち”にもICT支援は有効な手立てとなることを感じている。

(2022年4月掲載)

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