実践事例

中学校1年 道徳生徒1人1台の活用 1人1台 × SKYMENU Cloud

「伝えたい」×「知りたい」が生み出す、
道徳の主体的な学びを

単元名:銀色のシャープペンシル

伊藤 彬教諭

長野県松本市立明善中学校

レポート作成

遠藤 渓教諭

長野県松本市立信明中学校

本時のねらい

本時は、落ちていた友達のシャープペンシルを自分のものにしてしまった主人公が、友達とのやりとりを通して自身の弱さを乗り越えていこうとする物語を題材とした。題材を通して、弱い自分を乗り越えることの難しさや良さを主体的に考えさせ、弱さを乗り越えて生きていこうとする心情を育てることを主眼とした。

授業を参観して~ソフトウェア活用の視点から~

▲ 自分の考えを入力する生徒
▲ マーカーの分布や記述内容を確認

ソフトウェアが利用された場面は主に2度あった。1度目は授業冒頭に生活を振り返る場面で、教師の「シャープペンシルが落ちていたらどうするか?」という問いかけに対して回答するために用いられた。生徒は、自由記述した文章とともに、【拾う↔拾わない】【言う↔言わない】の項目を縦軸・横軸にとった十字の表の中で、自分の気持ちに近いところにマーカーを置いて、自分の考えを表現した。

2度目は授業の後半で、主人公が自分の行為をごまかした場面を読み、自分ならどうするかを、1度目と同様に、【謝りに行く↔行かない】【謝る必要がある↔ない】の軸の表中に表現した。回答にはそれぞれ5分程度の時間が設けられた。生徒の回答は、入力後、それぞれのタブレットから自由に閲覧できるようにされた。生徒は、学級全体のマーカーの分布や、気になったマーカーについて、クリックして自由記述された文章を確認するなどした。

各場面で、マーカーの分布が示されると、生徒からは「えー!?」「おもしろい」などの声が多く挙がった。その後、自分の意見に近いものや、反対の位置にある意見などを中心に、ほとんどの生徒が興味深く、仲間の自由記述を読みながら考えを深める姿があった。印象に残った他の生徒の記述を声に出して読み上げる生徒もいた。

本時、タブレットを利用したことで、従来の手法では拾いきれなかった(特に少数派の)生徒の意見を共有することができたり、生徒各々が欲しいと思った情報を選択することができたりしたことが、こうした生徒の主体的な姿に繋がったと考えられる。また、学級全体の考えの把握や共有を短時間でできることもタブレットを活用する良さであった。タブレットの利用に必然性があり、大変有効な活用法であると感じた。

こんな場面で使える!実践を振り返って

▲ [ポジショニング]が共有された場面
▲ 自分の考えと離れた位置にある友達の考えを興味深く読む生徒たち

匿名性については一長一短あり、考えていかなければならない側面もあるように思われた。

まず匿名性の担保によって、生徒が率直な考えを記述できたことはよい面である。「拾わない」「謝る必要はない」といった意見は、挙手では表現するのに抵抗があると思われる。しかしそうした考えも入力され共有されたことで、うわべだけにならずに、生徒が弱い自分に向き合うことができたように感じた。

反面、自分と意見の異なる他の生徒の回答を見た生徒から、「これはありえないでしょ」といった、やや攻撃的な反応も見られた。おそらく挙手等のように、相手が見えていれば出にくい反応ではないかと感じる。素直な反応ではあると思うが、タブレットという道具を介し、さらには匿名性があることによって、他者意識が薄まってしまったことも、こうした反応が出た一因ではないだろうか。

授業学級の雰囲気からは、普段から率直に考えを伝え合える信頼関係が土台にあることを感じ取ることができたが、学級の状況によっては、攻撃的な反応を不安に思う生徒が出ることも予想される。ソフトウェアの活用と並行して、情報モラルについて押さえていくことの必要性を改めて感じた。

利用にあたって教師が配慮しなければいけない点はあるものの、全体を通して大変魅力的な授業であり、機器の活用法であったと感じた。使い方についてもそれほど煩雑さは感じられなかったので、ぜひ自校に持ち帰って実践してみたいと感じた。また、教材の朗読や授業後の感想記入についてもタブレットを補助的に用いており、参考になった。

(2022年6月掲載)

オンラインセミナーお申込みはこちらオンラインセミナーお申込みはこちら
オンラインセミナーお申込みはこちら