実践レポート
本校では、『SKYMENU』やMicrosoft Teamsを中心とした学習支援ツールを使用しています。これらのツールは、今まで以上の対話的な学びを子どもたちの間に生み、さらに、これまでの学校教育ではできなかったことさえも実現できる可能性を持っています。
例えば『SKYMENU』には[発表ノート]や[ポジショニング]といった学習に役立つ便利な機能が充実しています。中でも[発表ノート]は、本校でICT活用を推進する上での中心的なツールになっています。
授業におけるICT活用を、“紙のノートの代替”から始める先生も多いと思います。[発表ノート]は、そのような使い方から手軽に始められるので、今の授業スタイルに柔軟に対応できて、使いやすい機能だと思います。
しかし、ただ“紙のノートの代替”としてICTを利用しているだけでは、授業そのものに変化はもたらされません。私たち教師の授業スタイルそのものを変え、ICTを活用して子どもたちがつながり、対話的に学ぶ授業づくりが必要です。
私が担当する低学年の授業では、対話的に学ぶ、新たな授業づくりの第一歩として、[気づきメモ]を活用しています。
これまで実践してきた[発表ノート]の活用と並行して、今回『SKYMENU』の[気づきメモ]を低学年の子どもたちの授業の中で取り入れてみました。実践したのは、画像を使って気持ちを表現する「気持ちメモ」というコミュニケーションです。子どもたちの様子から教師が気づく、つまり、心の変化に気づくために有効な手段になっています。
この「気持ちメモ」は、保育園に通う私の息子の様子からヒントを得たものです。登園に付き添った際、息子が教室で準備を終えると、ホワイトボードに笑顔のマークを貼り付けて「今日もよし!」と、友達と話している姿を目にしたのです。園児でも簡単に自走して、楽しく続けられる活動であり、「[気づきメモ]の使いならしにも使える」と考えました。
「気持ちメモ」における[気づきメモ]の活用方法は簡単です。まずは、「すごくうれしい」「うれしい」「ふつう」「つかれている」「かなしい」の5つの気持ちを表す画像を、[グループフォルダ]で子どもたちに共有。そして、活動の初回に、「気持ちメモ」の目的、[グループフォルダ]からの画像の貼り付け方、友達の気持ちに触れる・気づくという3点を、子どもたちに指導してから活用をスタートします。
いざ実践してみると、大半の児童がすぐに[気づきメモ]を使いこなしていました。支援が必要な児童には、先生が寄り添いながら丁寧にサポートを行うことで学習を進めることができました。「気持ちメモ」の活用は、友達の様子に気づく良い機会にもなったと思います。
これは低学年における「使いならし」をねらった活動ですが、さまざまな学習活動の中で取り入れられると思います。低学年の子どもたちは文字入力がまだ不慣れだからと、[気づきメモ]の活用を見送るのは非常にもったいないと感じています。協働的に学ぶ場面をつくるためにも、うまく活用していただければと思います。
次に、[発表ノート]と[気づきメモ]の活用例をご紹介します。ここでは、使いならしを目的とした「おいしいカレーライスを作ろう」という教材を作成。「具の入っていないカレーに好みの具を加える」という目的を達成する過程で、情報活用能力を育める教材です図1。
この教材を通して指導できる要素は、「ドラッグ&ドロップ」「画像の拡大・縮小」「画像のトリミング」「コピー&ペースト」「カメラ機能の活用」「写真を撮る際の情報モラル(他者を撮影することに関する注意点も含む)」「文字入力の方法および手書き入力の方法」そして「成果物の共有」「他者参照」など多岐にわたります。低学年の子どもたちに対しては、これら項目について別々の授業で一つずつ教えていくよりも、共通の目的を持ち、活動の中で手段として習得していくことに意味があるのではないかと考えました。
この活動では、子どもたちが自分のスキルに応じて個別最適な選択ができるような仕掛けがあります。具材のチョイスから、画像サイズやトリミングの調整、文字入力の方法まで、選択肢を子どもたちに委ねました。
教師は技術的な支援を除き、ほぼノータッチ。意識したのは、随所で褒めることだけです。子どもたちは活動を通して、「これでいいんだ」と少しずつ自信を持てました。うれしくてたまらなくなった子どもたちが「こんなんできたで!」と、友達と端末を見せ合いながら話す姿に、学習者主体の対話的な学習に取り組む様子が見られました。まだまだ低学年のICT活用の小さな一場面ですが、小学校における学習の初めの一歩としては、非常に充実した内容になりました。
授業の最後には、「気持ちメモ」で活用した5つの画像で振り返りを実施。子どもたちに「学習した内容がよく分かったかな?」という問いを投げ、5段階で個人内評価を行います。この段階では、表現と交流にデジタルとアナログのそれぞれの良さを生かし、共存させています。そのベストミックスが、子どもたちの主体的な対話を活性化させていくと考えているからです。「コメントを書きたい」と希望する子どもには、端末の手書き入力機能を活用して[気づきメモ]内にコメントを書かせることもしました。ここでも個別最適な学びが実現できていたように感じます。[気づきメモ]を活用した振り返りは、即時的かつ手軽に交流できるという利点があります。
道徳の授業では、[気づきメモ]と[ポジショニング]を組み合わせて活用しています。道徳の場合、道徳的価値を問う主題に対して、他者の考えや気づきに触れることで、自分の考えがどのように変化していったのか、その変容を見取ることが大切です。変化を見取りやすくするという点で、自分や友達の考えの変化を視覚化できる[ポジショニング]の活用が効果的です図2。ただし、道徳においては、隣にいる他者とじかに顔を見ながら問題を交流するという、アナログな活動も重要です。その双方の良さを生かして相互に活用することで、子どもたちの対話を活性化させられると考えています。『SKYMENU』なら簡単な操作で、対話的な活動を刺激するためのデジタルとアナログのベストミックスを行えるので、低学年でも十分に活用できました。
また、ここでも学習の振り返りに「気持ちメモ」を活用。「今回の学習で自分の考えを持つことができましたか?」という問いを[気づきメモ]で設定すれば、画像で5段階評価を付けられました。その内容をもとに、子どもたち同士あるいは学級全体で、「なぜそう思ったのか」を話し合うことで、さらに対話を深められました。
そして、[気づきメモ]を利用した「気持ちメモ」は、これらの対話を深めるきっかけをつくることにも役立ちました。画像を使ったメモから手書き入力へと少しずつステップアップしていくことで、さらなる情報活用能力の向上につながります。たとえ小さなことであっても、その変化の積み重ねが、子どもたちのさらなる力を育むことにつながると考えています。
私の尊敬する先生から教わった言葉に「一人の100歩よりも、みんなの1歩に価値がある」というものがあります。まずは私たち教師が全員で初めの一歩を踏み出すことが大切で、そのためには研修の内容が重要です。私たち教師の研修と子どもたちの学びは相似形だからです。私たちがどれだけ協働的に学べたかどうかが、子どもの学びに直結します。学校全体で協働的な研修に取り組み、授業づくりや授業デザインの感覚を共有していく、それが子どもたちの未来をつくることにつながります。
それからICTの活用は“目的”ではなく、個別最適で協働的な学びをつくり出すための“手段”に過ぎません。手段としてICTを使いこなし、学習活動のさまざまな場面で学習者主体の対話的な学びを生み出すためにも、低学年のうちから情報活用能力を教科横断的に育成していくことが欠かせません。ぜひ、授業や教育計画の中に、情報活用能力の育成の視点を盛り込んでいただき、未来を生きる子どもたちに必要な力を、皆さんと一緒に育んでいければと思います。
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(2024年5月掲載)