実践事例

小学校3年 社会児童1人1台の活用 SKYMENU Cloud × オンライン学習 机間指導できない環境では

児童の考えを把握できるツールが重要に

オンラインでのリアルタイム型授業の実践
福田 晃 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属小学校教諭

福田 晃

金沢大学人間社会学域学校教育学類附属小学校教諭

新型コロナウイルス感染症拡大の影響下における動きや取り組み

本校では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、約3か月間の休校措置をとることになった。本学級では、3月から4月中旬の第1期には、プリントを中心とした家庭学習を行ってきた。続く4月中旬から5月下旬の第2期は、学校ホームページに学習動画を掲載して「Googleフォーム」でアンケートを実施し、翌日に投稿されたコメントをホームページに掲載することで、ゆるやかな双方向性の確立を試みてきた。

本稿では、隔日で登校と家庭学習が交互に行われた6月の1か月間の分散登校時(第3期)における取り組みを述べる。この分散登校時には、児童1人1台のタブレット端末の環境を構築して各家庭への持ち帰りを試みると同時に、児童にはGoogleアカウントの配付を行った。

Web会議システムでのコミュニケーションは、
対面に比べて個人のアウトプット数が限りなく少なくなる。

Web会議システムの活用による朝の会

▲ アウトプット数が少なくなるため、ミニホワイトボードを活用した

児童1人1台の持ち帰り用タブレット端末環境が整備されたこともあり、家庭学習時はWeb会議システムの「Google Meet」を活用した朝の会を行った。体調の確認やささいなアイスブレークを行っただけではあったが、児童の日記では「家にいても、みんなの顔を見ることができてうれしい」や「1人じゃない感じがして、そのあとの勉強もやる気が出てくる」といった感想が多数見られた。長期間の休校であったことから、児童は仲間とのつながりを強く望んでおり、児童の関係性の構築という点においても、Web会議システムを活用した朝の会は非常に大きな意味があったように思う。

だが、朝の会を数回行っていくなかで、Web会議システムを活用したリアルタイム型授業を行うには、不十分な点があるということに気がついた。チャット機能はあるものの、Web会議システムにおけるコミュニケーションは、音声情報が中心となる。対面に比べて個人のアウトプット数が限りなく少なくなることもあり、どうしても誰かの発言を聞くということが増えて単調化してしまう。そこで、途中からはチャット以外のアウトプットの手段として、児童にミニホワイトボードを持たせた。このミニホワイトボードの活用によって、視覚情報によるコミュニケーションが可能となり、個人のアウトプット数が格段に増えたことからも、これは有効な手段であったといえる。一方で、24分割された画面では、児童が書いた内容を十分に把握できないという課題もある。朝の会であれば問題はないのかもしれないが、オンラインでのリアルタイム型授業を行う際には、何らかの打開策が必要であるという見解に至った。

学校周辺の街の様子について、児童の「気づき」や「考えの根拠」を共有しながらオンラインで学習を展開

オンラインでのリアルタイム型授業の実践

以上の経験を踏まえ、課題解決のために『SKYMENU Cloud』を活用し、オンラインでのリアルタイム型授業を行うことにした。『SKYMENU Cloud』は、Sky株式会社の学習活動ソフトウェア『SKYMENU』シリーズのクラウドサービスで、インターネット接続環境があれば校外からでも活用できる。

児童が気づいた部分を共有するため
マーキングで焦点化
を試みる。

実践の概要

1事前に自宅で写真を見てコメント。児童の「気づき」から授業を始める

学校の北側の様子をおおまかに理解することを目的とした授業である。本校の北側エリアには住宅地が広がり、中でも県営および市営の住宅が多くを占めている。今年度は、実際に見学に行くことができないため、それぞれのエリアをドローンで撮影した上空からの写真と教師が撮影してきた写真を「Google Classroom」に投稿しておいた。児童は、それぞれのエリアの写真を見て気づいたことをコメント欄に残していく。すなわち、従来は授業前半に行っていた気づきの共有の一部を、自宅学習時に書き込んだコメント欄が担っている。このコメント欄には、既習である東エリア同様に家が多いことや、生活に必要な店があるということが書かれていた。一方で、県営住宅や市営住宅が多いということは十分に気づいていなかった。資料には、県営住宅における団地地図や、石川県および金沢市のマークが位置づけられた建物の写真、構造が同じ建物が密集していることが分かる上空写真が置いてあるものの、資料と資料を関連づけて考えるということはできていない。そこで、本時では、複数の映像資料をもとに関連づけながら、県営住宅や市営住宅が多いという北側エリアの特性をつかんでいくこととした。

2写真を[マーキング]して、学習課題の共通理解を図る

▲ 児童が気づいた部分を明確にするためマーキングさせる

授業冒頭部では、コメント欄に見られた気づきをいくつか取り上げ、児童に発表させた。クラスの仲間が記述した気づきを十分に見ていないであろう児童のことも考慮し、最低限の共通理解をしておくことが必要だと判断したためである。ここでは、家や生活に必要な店が多いということを確認し、建物がたくさんあるエリアであるということを確認した。その後、コメント欄にあった「長細い同じ建物がたくさんあることが分かったけど、それが何かが分からない」という意見を拾い、そのコメントを投稿した児童に具体的にどの部分のことを指しているかをマーキングさせ、焦点化を試みた。長細い同じ建物が拡大され、写真に印がつけられることによって、「確かに」「何か分からんけど、同じ建物がいっぱいある」といった反応が見られた。そこで、<北側エリアに多くある長細い建物は何か>という学習課題を設定した。

3[発表ノート]に、児童の考えと根拠を明確に記述させて提出させる

その後、課題について、個人で上空から撮影した写真を拡大したり、複数の資料を関連づけたりしながら、この長細い建物は何かということを考えていく。従来の教室での授業では机間指導時に、どの児童が、何を根拠に、どんな考えをもっていたかを把握することができるが、オンラインでの授業の場合、この把握ができない。考えを共有する場面での意図的指名は授業展開上、大きな意味をもつため、どうにか児童の考えを把握したい。そこで、本実践では『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]に考えと根拠を記述させて提出させた。これにより、どの児童が何に注目してどんな判断をしたのかを一覧で把握することができた。

実際には、マンションであるという考えをもっている児童が大半を占めていた。上空からの写真を拡大してみると、ベランダにある布団や洗濯物などの生活感のあるものが見える。これを根拠にマンションであると判断していたようである。発表の際には、根拠とした部分を拡大やマーキングといった焦点化をさせながら、発言するよう促した。その後、県や市のマンションだという考えをもつ児童に発言させ、その根拠を確認するなかで、北側エリアにはほかのエリアにはなかった県営住宅や市営住宅があるということを確認することができた。

授業終末部では、結局学校の北側エリアはどんなエリアかと児童に問い、学習をまとめさせた。本来、ここでは、Web会議システムのコメント欄か[発表ノート]に記述させようと考えていたが、入力にかかる時間を考慮し各自のノートに記述させた。1人で学習をまとめられない児童にとって、他者のまとめを見ることが大きな意味をもつ。だが、今回は他者のまとめを見たり、相談をしたりすることができないため、教師のまとめを教室の黒板に書いておき、参考にしてもよいということを伝えた。

▲ 課題に対する考えとその根拠を[発表ノート]に記述させて提出させた

時間の流れ方が違うため、
通常の授業とは異なる集中力が求められる
児童のことを考える。

実践を終えて

オンラインでリアルタイム型授業を行う際に、児童の考えの把握と、資料の焦点化という点において、『SKYMENU Cloud』が果たした役割は非常に大きい。これらの2点に関しては「Googleスライド」などでも同様のことを行うことはできるかもしれない。ただ、問題はその手間数と煩雑さである。活用し始めたばかりであるこの時期に授業のなかで操作説明を位置づけたり、操作が分からない児童のフォローをオンライン上で行ったりすることは不可能である。オンラインでの授業と通常の対面式の授業とは、時間の流れ方が違う。教室ではわずかに感じる時間も、オンラインでは不思議と長く感じてしまう。通常の授業とは異なる集中力が求められる児童のことを考えると、こうした時間を極力削減しなければならない。その点、『SKYMENU Cloud』は直感的に操作できるため、教師にとっても児童にとっても負荷なく活用することができたように思う。

一方で、本実践では授業の展開を対面の授業と同じような構成で展開してしまったことが、大きな課題として残った。オンラインでの授業で対面での授業と同じことをするとき、多少ではあるが余分に時間がかかってしまう。例えば、児童が発言をするときも、ミュートを外す操作をしなければならない。あるいは、ミュートが外れていないまま発言したため、発言をやり直す場合もある。対面式の授業では生じることがない「ほんのわずかな時間」がどんどん蓄積していく。それゆえ「気づきの共有」「課題の確認」「個人思考」「全体共有」「学習のまとめ」といった従来のような授業展開ではなく、何らかの工夫によって簡略化していくことが必要である。この点については、今後じっくりと模索していきたいと思う。

(2020年11月掲載)

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