実践事例

中学3年 道徳実践報告

SNSのやり取りを多様な視点で検討
考えを共有し、より深い議論に

他者視点で考える教材の工夫と[気づきメモ]の活用

清水 匠 主幹教諭

茨城県土浦市立土浦第五中学校

はじめに

対面でのコミュニケーションに比べて、SNSでの言語コミュニケーションでは、表情やニュアンスが伝わりづらく、すれ違いが起きやすい。例えば「ヤバい」という言葉は、良い意味でも悪い意味でも使われ、文脈によって意味が変わってくる。そこで、曖昧な言葉を使ったことで期せずして相手を傷つけた登場人物と、誤解して悲しい思いをした登場人物の二人の気持ちに焦点をあてた読み物教材を作成し、実践した内容を報告する。

実践 中学3年 道徳
SNSでの出来事

本時のねらい

3人の登場人物を通して、SNSでの言語コミュニケーションについて考えることで、自分の考えを正しく相手に伝える努力をしたり、相手の立場を尊重して考えを受け止めたりするなど、互いを理解しながら他者とかかわっていく態度を育む。

自作教材の概要

参考 : 東京書籍『新訂 新しい道徳3』p.102-105「合格通知」

登場人物:あかり、みく、しおりの仲良し3人グループ
あかり、みく

市内トップレベルの高校を志望 80点台

しおり

勉強が苦手 40点台

教室でテストが返却され、あかり、みくはいつも通り80点台。しおりは、60点にアップしたが、まだ志望校には遠い。その夜グループSNSで右のようなメッセージのやり取りが行われ、あかりとしおりの気持ちがすれ違ってしまう。翌日、教室ではあかりはしおりに話しかけられず、3人の間に、不穏な空気が流れる。

配付した読み物教材

本時では、この状況を踏まえて「あかり」と「しおり」の視点で書かれた読み物教材をランダムに配付した。

本時の展開

2つの異なる視点の読み物教材をランダムに配付

2つの読み物教材を作成し、ランダムに配付した。2つの読み物教材が配られていることを知らない子どもたちは、自分側の登場人物の気持ちを土台にしながら、相手側の気持ちを想像しながら読み進めていった。

そこでまずは、二人がどんな気持ちだったか、[気づきメモ]に簡潔にまとめた。「いつもよりも高い点数が取れて、自分のことのように喜んだ」などと、自分側の登場人物の気持ちは記入できても、「応援したくて言った言葉なのに、急に退会してしまって、なんでだろう」のように相手側の登場人物の気持ちには気付けないでいる子どももいた。

▲ [グループメモ]で初発の気づきを共有

[グループメモ]機能で、他者視点で考えを交流

その後、グループ活動を設定し、考えを共有した。その際、[気づきメモ]の[グループメモ]機能を活用し、入力した自分のメモから、友達に紹介したいメモだけを選択し提出。グループ全員で見られるようにした。子どもたちは、友達の考えを確認しながら、意見に耳を傾けたり、互いに質問し合ったりし、活発に議論を進めていた。また、別々の読み物教材を配付したことで、登場人物それぞれの側に立った意見が共有され、「そんな気持ちでいた可能性もあるんだね」「そういう気持ちでは言ってなかったと思うよ」などと、自分では思いつかなかった登場人物の気持ちに目を向けられた。

一通り登場人物の気持ちを整理した後、『二人に足りなかったものは何だろう』と課題を設定し、グループで話し合った。「言葉の選択が間違っているんじゃないか。もっと感情を表す言葉で、うれしいとか、頑張ったね、などと言ったほうがよかった」「もし嫌な気持ちになったのであれば、すぐに退会するのではなく、相手にそれを伝えればよかった。そうすれば、誤解はすぐに解けたのではないか」などと、登場人物がどうすればよかったのか、自分事として活発に話し合う様子が見られた。

なお、このグループ活動のはじめに、登場人物それぞれの気持ちで書かれた別々の読み物教材を配付したことを明かした。子どもたちはミステリーの種明かしのように驚きながら、自然と両方の読み物教材を見比べて、それぞれの登場人物の本心に迫っていく様子が見られた。

▲ グループの代表の子どもが話し合った内容をメモとして入力。各グループの議論を教員が把握でき、全体の意見交流の際にも役立った

教員の[気づきメモ]画面を映し、学級全体で共有

その後は、二人の気持ちやその背景まで十分理解した上で、何が足りなかったのか考えを深める話し合いが行われた。

ここでは、グループで話し合ったことを、代表の子どもにメモとして入力してもらった。これにより各グループで議論されている内容を教員端末で閲覧できた。全体で意見交流する場面では、教員端末を教室内のモニターに映し出すことで、手軽に子どもたちの考えを表示することもできた。子どもたちが「私達の班にはない考えだね」などとつぶやく様子が見られたため、教員が意図的に意見をピックアップして取り上げることで、考えをより深めることができた。

最終的には、「相手にも分かりやすい具体的な言葉を使う」「相手の視点に立って言葉を読み取る」「絵文字やスタンプを使って、自分の感情を伝える努力も必要」などと、SNSでの言語コミュニケーションにおける留意点がまとめられた。

「いいね!」とコメントで放課後にじっくり評価

授業の最後には、今日の授業を通して学んだことを振り返って、自分の生活にどう生かすかについてまとめた。

この場面でも、[気づきメモ]を活用した。なぜなら、[発表ノート]の[回収][添削][返却]のような手順が必要なく、メモが自動的に教員端末上に一覧で表示され、直接コメントを返したり、「いいね」のマークを送ったりできるからである図1。相手の気持ちへの配慮や言葉選びの大切さについて、自分の生活と結び付けて振り返る様子が多々見られた。

さらには、子どもたちが下校した放課後、再度[気づきメモ]を開き、子どもたちの意見をじっくりと見ながら、一人ひとりにコメントを送りながら評価を記録することもできた。特定の子どもを選択してメモを表示できるので、授業のはじめと終わりの考えの変容を見取れた。

ある子どもは、はじめは「軽い気持ちで相手のことをからかっているのではないか」のように、コミュニケーションのすれ違いに気付いていなかったが、授業を通して「相手に勘違いさせるような言葉を使わずに、分かりやすい言葉で自分の気持ちを伝えたい」「時と場合に合わせて、相手のことを考慮して話をしたい」と、すれ違いの要因に気付き、これからの自分の生活に寄せて教材から学んだことを記述していた。

図1 子どもが[気づきメモ]に振り返りを入力

分かりやすい言葉で、正しく自分の気持ちを伝えたい

今回の大きな手だての一つとして、登場人物それぞれの気持ちに寄せて書かれた2つの読み物教材を配付した点にある。そこで、どちらの登場人物側の読み物教材を読んだかによって、本時の学びがどのように違うのか、まとめの振り返り文章を分析した。

どちらの場合も、すれ違いの要因となった「ヤバい」の言葉をもとに、「勘違いされないような分かりやすい言葉を使って、正しく自分の気持ちを伝えていきたい」という文章を書いた子どもが多かった。

一方、「ヤバい」という言葉を使ったことで、自分の感情を正しく伝えられず、相手を不快な思いにしてしまった登場人物側の教材を読んだ子どもは、「何を意味しているのか分かりづらいときは、きちんと聞くことが大切」「不快に思ったことがあれば、正直に自分の気持ちを伝えてみるのもよいのではないか」と記入した子どもが多かった。

これは、自分が読んだ登場人物の気持ちと重なっていると考えられる。つまり、自分が無意識に使ってしまった言葉が、いつの間にか相手を傷つけており、弁解の機会も作れなかった登場人物に心を寄せ、「聞いてくれれば、ショックだと言ってくれれば、修正できたのに」と、コミュニケーションにおける擦り合わせの大切さを痛感したからだと予想できる。

逆に、相手の言葉を勘違いして、何も言わずにコミュニケーションを遮断してしまった登場人物側の教材を読んだ子どもは、「相手の気持ちを想像しながら会話をしたい」「相手がどのように捉えるか、よく考えることが必要」と記入した子どもが多かった。

これも同様に、相手がどのように受け止めるか考えずに、分かりづらい言葉を使われたことで、悲しい気持ちになってしまった登場人物に心を寄せ、「どのような気持ちになるか想像して欲しかった」と、相手のことを考えたコミュニケーションの大切さを痛感したからだと予想できる。

表1 読んだ教材別の振り返り文章の記述内容分析

[気づきメモ]で多様な考えを共有し、より深い議論に

このように、二つの立場の登場人物の気持ちが交わり合い、「正しい言葉で伝え、相手の気持ちをよく読み取ることで、互いを理解しながらかかわっていく」という本時のねらいに迫ることができた。これは、[気づきメモ]を活用したことが大きい。発言力のある子どもだけで話し合いが進むのではなく、必ず全員の考えが土俵にあがっていた。多様な考えや、それぞれの登場人物の発言の裏にある背景・気持ちを共有した上で、より深い議論を進められたと考えている。

(2024年7月掲載)