実践事例

SKYMENU Cloud 活用のポイント 子どもが「選択」「判断」「決定」をする学びへ

学級経営とICT活用の工夫で友達との交流を活性化

山本 健太 教諭

大阪市立長吉東小学校

1人1台端末は子ども主体で協働ができる新しい道具

本校は、教員25名、全校児童約350名、大阪市南東部に位置する中規模校で、私は現在4年生の担任を務めています。令和4年度、本校は『SKYMENU Cloud活用推進校』に指定され、私が主体となって校内での活用を進めていくことになりました。それまでICT活用を得意としていなかったのですが、本格的に『SKYMENU Cloud』やICTの活用に取り組み始め、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた授業づくりを研究してきました。

授業研究を進めるなかで感じたのは、1人1台端末は従来の教室にはなかった「子どもが主体となって協働ができる道具」であるということです。例えば、子どもがこれまで学習に使ってきた、お道具箱の中のはさみやのり、定規などの道具は、個別で扱うものばかりです。協働で学ぶ際は、先生が主導して付箋や模造紙、ホワイトボードなどを用意していました。

学級づくりと授業づくりは両輪だといわれています。子どもたちが1人1台端末という新しい道具を効果的に活用するためには、これまでとは異なる考え方が必要であるため、従来の学級経営やルールを見直すべきだと考えるようになりました。

「~しましょう」から「どうしたい?」「任せるよ」へ

そこで、本年度は“当たり前”を変えるための学級づくりに注力しています。こだわっているのは「子どもが選択、判断、決定する場面を多く取り入れること」です。

まずは、非常に些細なレベルから取り組み始めました。例えば、算数のファイルに名前を書くとき、「鉛筆でも、マジックでもいいよ。どうしたい?」と尋ねるといったことです。

▲ 【写真1】ハート型にしたり、2 色の画用紙を組み合わせたりした係のポスター

また、子どもたちに考えさせたり、「どうしたい?」と問いかけたりする機会を意識して増やしています。例えば、係活動のポスター作成において、作り方やデザインをできるだけ子どもたちに任せました。メンバー・仕事内容・みんなへの一言などの項目は、必ず記載するように指定した上で、あとは子どもたちが考えました写真1。係のメンバーで話し合い、自分たちで考えた形に画用紙を切ったり、中には立体にしたり、子どもたち自身で、選択、判断、決定する様子が見られました。

もちろん、何でも自由にするのではなく、必要なことは指導した上で、子どもたちに「どうしたい?」と問いかけ、「任せるよ」と伝えています。

[発表ノート]を見せ合いながら考えを共有するように

私は、以前から授業中の学習のための立ち歩きを推奨しています。今回、子どもに委ねる学級づくりに取り組んだことで、この立ち歩きにも良い影響がありました。

現在、子どもたちは、与えられた課題に対してまずは自分で考え、問題が解けた後や、分からないことがあったとき、自らのタイミングで立ち歩いて友達のところに行きます。自分の考えを記入した『SKYMENU Cloud』の[発表ノート]を端末で見せ合いながら、考えの違いを見つけて学びを深めたり、課題を解決したり、自分の班に持ち帰ってまだ解けていない子に教えたりして、学び合う姿が見られます。

さらに新機能の[ライブ公開提出箱]も活用しています。リアルタイムで友達の作業している[発表ノート]を閲覧できるため、友達の考えを確認した上で、直接意見を聞きたい子のところに向かうことができます。また、自席で友達のノートを参考にしながら、個別でじっくり考える子もいます。協働のタイミングも子どもたちが自然に選択、判断、決定することが増えてきました。

▲ 4年生の授業中の様子。子どもが個別で学習したり、立ち歩いて協働したりと、学び方を判断して進める

もちろん、最初からこのような立ち歩いて友達と相談する活動が実現できたわけではありません。4年生の子どもたちは、一斉授業に慣れており、1学期の最初は立ち歩いてもよいと伝えても、積極的に席を立つ子はあまりいませんでした。まずは算数で、問題が解けたら立ち歩き、友達と考えを確認し合う活動から始め、徐々に教科を広げていきました。子どもに委ねる授業づくりと学級づくりを両輪に取り組んだことで、1学期をかけてこうした活動が子どもたちになじんでいったのです。

立ち歩いて友達と考えを共有することは、ルールとして明示していません。ルールにすると、子ども主体ではなくなってしまうため、繰り返し、口頭で伝えていきました。

友達との協力で「もっとやってみよう」と前向きになれる

2学期に入ると、学習のための立ち歩きがなじんできたことで、学びのなかで友達の存在が大きくなってきました。私が教え込まなくても、友達同士で課題を見合ったり、相談したりして、学びを進めていくことが日常になりつつあります写真2。これにより、子どもたちがより学びに対して積極的に取り組むようになりました。

▲ 【写真2】[ライブ公開提出箱]で友達の考えを確認する(左)、[発表ノート]を示しながら友達と相談する(右)。
『SKYMENU Cloud』が考えの共有に役立つ

友達に分からないことを教えてもらうことで、「友達と一緒に解決できた」という達成感や楽しさを感じられます。これにより「困ったらまた教えてほしい」「もっとやってみよう」と前向きな気持ちになっています。また、理解できている子も、教えることでさらに学びが深まっています。

先生や親など、大人に教え込まれると、「やらされている」と感じる子もいます。そのように感じてしまうと、学習の内容を理解できたとしても、「もっとやりたい」という気持ちにはなかなかなりにくいと思います。

端末を活用して協働的な学びを実現しやすくなったことで、さまざまな方向に学びが広がっていることを実感しています。

[ライブ公開提出箱]で友達とつながりながら宿題に取り組む

友達と学び合い、つながるために、『SKYMENU Cloud』が役立っています。昨年度担任をしていた6年生では、[提出箱]や[グループワーク]を活用して、考えを共有することが当たり前になっていました。

そして、新機能の[ライブ公開提出箱]は、学校でも家でも友達とつながることができます。本校の4年生は、端末の持ち帰りを行っているため、家に帰って端末で宿題をしたり、授業中に終わらなかった課題に取り組んだりしています。その際、友達の[発表ノート]がリアルタイムに更新されるので、家でも他者参照をしながら学習を進められるのです。

今の子どもたちは、タブレット端末やゲームなどを通じて、オンラインで友達とつながることに慣れています。学習活動においても、こうしたつながりをつくることが、子どもが主体的に取り組むことに役立つのではないかと思っています。

子どもたちと一緒にルールや活用方法を考えたい

もちろん、子どもたちに委ねるからといって、任せっきりにしているわけではありません。なぜならば、ICTは、さまざまな興味深いコンテンツを簡単に活用できるというメリットを持つ反面、「もっと使いたい」という思いが膨らみすぎて、子どもたちの歯止めが利きにくくなるという側面も持っているからです。

子どもたちには、自分を守るために、自分自身を制御する力を身に付けてほしいと考えています。そのため、私は何か問題が起こったり、子どもたちが疑問に感じたりしたときには、ルールを安易に提示しないようにしています。まずは子どもに話を聞き、その上で、「どうしていきたいの?」と問いかけます。そして、子どもたち自身にルールや活用方法を考えてもらっています。こうした指導は時間がかかりますが、子どもたちが自分で考え、答えを出して行動していく力を身に付けるための良い機会だと捉えています。

ICTの活用で子どもの可能性は広がります。そのために必要な学びの環境を整えることが、私たち教員の役目の一つだと思っています。

(2025年1月掲載)