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GIGAスクール構想に関連する補助金は? 文部科学省の予算に沿って解説

著者:Sky株式会社

GIGAスクール構想に関連する補助金は? 文部科学省の予算に沿って解説

児童生徒が1人1台の端末を利用できる環境の実現と併せて、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備したGIGAスクール構想。多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させるため、ICTを活用したさまざまな取り組みが始まっています。この取り組みの推進のため編成された文部科学省の予算のうち、GIGAスクール構想に関連する事業・補助金にはどのようなものがあるのでしょうか。この記事では、GIGAスクール構想に関連する事業・補助金について、文部科学省の「令和5年度補正予算」および「令和6年度予算」に沿って解説します。

GIGAスクール構想の背景

GIGAスクール構想とは、「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」取り組みのことです。 GIGAスクール構想の背景として、「Society 5.0」の到来を見据え、教育においてもICTを基盤とした先端技術の効果的な活用が求められていることが挙げられます。2019年6月に文部科学省が公表した「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」において、Society 5.0時代に求められる能力として示されているのが「飛躍的な知の発見・創造など新たな社会を牽引する能力や、その前提となる読解力、数学的思考力等の基礎学力」です。教育の情報化が求められる一方で、学校のICT環境の整備が遅れていたこと、自治体間の格差が大きいといった課題に対して示されたのがGIGAスクール構想であり、Society 5.0時代を見据えた教育政策の一環といえます。

GIGAスクール構想に関連する事業・補助金(令和5年度文部科学省補正予算)

GIGAスクール構想のさらなる推進のため、「令和5年度文部科学省補正予算」では、どのようなものが盛り込まれたのでしょうか。GIGAスクール構想に関連する事業・補助金としては、主に下記の3点が挙げられます。

1人1台端末の着実な更新

すべての子どもたちに個別最適な学び協働的な学びを実現するため、2020~2021年度に「1人1台端末」と高速通信ネットワークを集中的に整備した結果、学校現場でのICT活用が進み、効果が実感されつつあります。一方で、故障端末の増加やバッテリ耐用年数などの課題に対応する必要があることから、令和5年度補正予算では、1人1台端末の着実な更新を進めるための事業として、公立学校の端末整備のため都道府県に基金(5年間)を造成し、令和7年度までの更新分(約7割)に必要な2,643億円を計上しました。また、国私立・日本人学校等の端末整備に対して18億円が計上されています。各学校への補助金は下記のような決まりとなっています。

1人1台端末の補助内容

  • 補助基準額:5万5,000円 / 台(児童生徒数全体の15%以内の予備機も補助対象)
  • 補助率:公立・私立学校・日本人学校等は3分の2、国立は10分の10

高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)

大学教育段階においてデジタル・理数分野への学部転換の取り組みが進むなか、高校段階におけるデジタルなどの成長分野を支える人材育成の抜本的強化が必要とされています。情報、数学などの教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活用した文理横断的な探究的な学びを強化する学校などに対して、必要な環境整備の経費を支援するのが「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」です。令和5年度補正予算では、100億円が計上されました。高等学校DX加速化推進事業の詳しい補助内容は、下記のとおりです。

高等学校DX加速化推進事業の補助内容

  • 支援対象:公立・私立の高等学校等
  • 補助上限額:1,000万円 / 校(1,000校程度)
  • 補助率:定額補助
  • 支援対象例:ICT機器整備(ハイスペックPC、3Dプリンタ、動画・画像生成ソフト等)、遠隔授業用を含む通信機器整備、理数教育設備整備、専門高校の高度な実習設備整備、専門人材派遣等業務委託費 等

ネットワークアセスメント実施促進事業

GIGAスクール第1ステージ半ばで顕在化した自治体間格差を解消し、1人1台端末の利活用をさらに進める上で課題となるネットワークの遅延や不具合を早急に解消することを目的としているのが「ネットワークアセスメント実施促進事業」です。

ネットワークアセスメントとは、現状のネットワークを分析・診断することで、ネットワーク環境の現状を把握し、問題点や改善策を提示することにより、最適な通信ネットワーク環境の実現を目的とするものです。令和5年度補正予算では、23億円が計上されています。ネットワークアセスメント実施促進事業の補助内容は、下記のとおりです。

ネットワークアセスメント実施促進事業の補助内容

  • 実施主体:都道府県、市町村
  • 補助割合:3分の1
  • 補助上限:100万円 / 校(事業費の上限。補助金の上限は33万3,000円 / 校)

ネットワークアセスメントの例として、「ネットワーク測定(通信量やセッション数の測定)」「ネットワーク構成調査(ネットワークの構成や機器の設定の調査)」「スループット・レイテンシー調査(通信速度や通信遅延の調査)」「無線調査(無線の電波干渉の有無やカバーエリアの調査)」などが挙げられています。

GIGAスクール構想に関連する事業・補助金(令和6年度文部科学省予算)

2024年3月に文部科学省が発表した「令和6年度予算のポイント」では、これまでのGIGAスクール構想に関する取り組みにおいて顕在化した自治体間格差の解消を主な目的として、広域連携の枠組みである「協議会」を設置し、域内すべての自治体がICT活用を推進していく体制を強化するとしています。すべて学校で、端末活用を「試行錯誤」から「日常化」のフェーズへと移行していくため取り組みが、「GIGAスクール運営支援センター整備事業」です。

GIGAスクール運営支援センター整備事業は、GIGAスクール構想の実現に向けたこれまでの支援メニューの充実を図り、引き続き広域的かつ組織的な取り組みを推進するため、都道府県等が民間事業者へ業務委託するための費用の一部が補助されます。令和6年度予算では、5億円が計上されました。本事業についての詳しい補助内容は下記のとおりです。

GIGAスクール運営支援センター整備事業の補助内容

  • 実施主体:都道府県、市町村
  • 補助割合:3分の1
  • 主な業務内容(支援対象):ヘルプデスクの運営及びサポート対応、ネットワークトラブル対応、支援人材の育成、休日・長期休業等トラブル対応

次世代に向けたGIGAスクール構想の取り組み

GIGAスクール構想では、ここまで紹介した補助金が設定されている事業以外にも、次世代に向けたさまざまな取り組みが推し進められています。ここでは、取り組みの例を紹介します。

GIGAスクールにおける学びの充実

GIGAスクール構想に基づいて、各学校で学習者用情報端末などを活用した学習活動が一層促進されるよう、ICT環境を積極的に活用するなかで一つひとつの課題解決を図りながら、改善に取り組むことが求められています。端末の活用状況を把握・分析するとともに、日常授業の改善を中心とする効果的な実践例を創出・モデル化し、すべての学校でICTの「普段使い」による教育活動の高度化を実現するとされており、令和6年度予算では3億円が計上されました。具体的な事業内容は下記のとおりです。

GIGAスクールにおける学びの充実

  • GIGAスクール構想の加速化事業
  • 情報モラル教育推進事業
  • 児童生徒の情報活用能力の把握に関する調査研究

次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用促進

次世代に向けた取り組みの一つである「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用促進」は、「GIGAスクール構想により、1人1台端末の活用が進み、また、生成AIの利用が社会に急速に普及する中、教育の質の向上を図るとともに、新たな政策課題に対応するため、目指すべき次世代の学校・教育現場を見据えた上で、最先端の技術や、教育データの効果的な利活用を推進するための実証等を行う」ための事業です。令和6年度予算では、1億円が計上されています。具体的な事業内容は下記のとおりです。

次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用促進

  • 最先端技術及び教育データ利活用に関する実証事業
  • 教育課題の解決に向けた生成AIの導入・利活用に関する実証事業
  • 実証事例を踏まえた先端技術の活用方法・諸外国の先端技術の動向に関する調査研究

学習者用デジタル教科書の導入

2024年度より、小学校5年生から中学校3年生を対象として「英語」、その次に現場のニーズが高い「算数・数学」の学習者用デジタル教科書が段階的に導入されます。また、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に資するデジタル教科書のより一層の効果的な活用について、研究・発信を行います。これにより、デジタル教科書の導入効果を最大限に発揮して、児童生徒の学びの充実を図ること、障害等による学習上の困難の低減を実現するとしています。令和6年度予算では17億円が計上されました。具体的な事業内容は下記のとおりです。

学習者用デジタル教科書の導入

  • 学習者用デジタル教科書購入費
  • 学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業

教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用

GIGAスクール構想に基づき、国全体で教育DXによる学びの環境を実現するには、教育データの利活用に必要な知見や成果を共有できる基盤的なツールを文部科学省が整備する必要があります。また、教育データの相互運用性を確保するためのルールの整備、教育データを利活用する際の安全・安心の確保、国や自治体によるデータ分析と分析に基づくアクションの実行を並行して実践していくことが重要です。これらの実現に向け、令和6年度予算では9億円が計上されています。具体的な事業内容は下記のとおりです。

教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用

  • 文部科学省CBTシステム(MEXCBT)の改善・活用推進
  • 文部科学省WEB調査システム(EduSurvey)の開発・活用促進
  • 教育データの利活用の推進

GIGAスクール構想の実現に向けた事業・補助金を活用してICT環境の充実化を

1人1台端末や高速大容量の通信ネットワークの整備など、GIGAスクール構想は着実に推進されつつある一方で、教育現場における情報端末の利活用が進むにつれて、新たな課題も生じているのが実情です。文部科学省はこうした問題を一つずつ解決すべく、今回取り上げた事業や補助金によって全国の学校を支援しています。そして各自治体や学校は、GIGAスクール構想の実現に向けた事業・補助金を活用し、ICT環境の一層の充実に取り組んでいます。

ICTを活用した学習活動を支援する「SKYMENU Cloud」

GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台のPC端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」と多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。