GIGAスクール構想の推進により、2020年度から2021年度にかけて小学校から高等学校まで、児童生徒1人1台端末や高速大容量の通信ネットワーク環境が整備され、現在はその効果が実感されつつあります。一方で、「まだ、1人1台端末を授業で十分に活用できていない学校がある」「地域によって活用状況に格差がある」「端末の不具合や故障が増えてきた」「ネットワーク環境が不安定になることがある」といった課題も浮上しています。そこで新たなキーワードとして「NEXT GIGA」という言葉が使われるようになっています。NEXT GIGAとは、どのような意味なのか。NEXT GIGAの概要や目標、背景、文部科学省の取り組みのほか、学校において必要となる準備について解説します。
NEXT GIGAとは学校のICT環境の更新や進化を図るフェーズのこと
NEXT GIGAとは、文部科学省が推進しているGIGAスクール構想の第2期ともいえる次のフェーズを指します。GIGAスクール構想では、児童生徒1人に対して1台のコンピュータやタブレット端末、全国の小・中学校、高等学校などに高速大容量の通信ネットワークの整備を進めてきました。NEXT GIGAはこの構想をさらに発展させ、ICT環境の更新や進化を図ることを目指しています。
GIGAスクール構想で児童生徒1人1台整備された端末は、早い自治体では2024年度から更新時期に入ります。前回の整備で早期に端末を導入した学校では、すでに端末の故障の増加やバッテリの劣化などの問題も表れており、NEXT GIGAはこれらの問題に取り組むための対応策としても求められています。
NEXT GIGAの背景
GIGAスクール構想では、1⼈1台端末の利活⽤が進むにつれてハード面の課題が生じています。具体的には、「端末の故障の増加」と「バッテリの劣化(耐⽤年数は4~5年程度)」の2つです。早い⾃治体では2024年度中に端末の更新を要する状況であり、早急な対応が求められています。
また、自治体や学校によって1人1台端末の利活用状況に差が出ている問題も、解消に向けて取り込んでいかなければなりません。まずは、すべての自治体・学校で端末が日常的に活用できる環境づくりが課題となっています。端末活用における課題としては、「先生のICTスキル不足」「研修体制の不足」「ICT支援員の不足」などが挙げられています。
NEXT GIGAに求められていること
NEXT GIGAでは、具体的にどのようなことが求められているのでしょうか。ここではNEXT GIGAを「さらなる利活用の促進」「自治体間格差の解消」「端末リプレイスの支援」という3つの視点で考えます。
1人1台端末のさらなる利活用促進
NEXT GIGAでは、1人1台端末のさらなる利活用を促進することが求められます。国立教育政策研究所が発表した「令和5年度 全国学力・学習状況調査の結果」によると、授業において「ほぼ毎日」ICT端末を使用したとする学校は小学校で65.3%、中学校で62.8%と、小・中学校ともに昨年度より約7ポイント増加しており活用が進んでいることが見て取れます。
また、活用の場面ごとに「ほぼ毎日」と回答した割合を見ると「児童が自分で調べる場面での活用」は小学校29.3%、中学校29.5%、「教職員と児童生徒がやりとりする場面での活用」は小学校29.5%、中学校25.7%、「児童生徒同士がやりとりする場面での活用」は小学校16.6%、中学校12.9%となっています。自分で調べる場面や教員と児童生徒のやりとりに比べ、児童生徒同士のやりとりについては、まだ少ない傾向があります。
端末の持ち帰りについては「毎日持ち帰って、毎日利用させている」(小学校18.7%、中学校23.5%)と「毎日持ち帰って、時々利用させている」(小学校13.9%、中学校18.4%)を合わせると、小学校で32.6%、中学校で41.9%が、毎日端末を持ち帰らせていることが分かります。
しかし、2023年7月に教育ICT関連4団体※が国に提出した「GIGAスクール構想の着実な継続に向けた提言」には「すべての小中学校で端末持ち帰りと、家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育が可能となるハイブリッド型の学習環境整備」との政策提言が含まれ、平常時からの端末の持ち帰りが可能となる学習環境の整備を求めています。
※教育ICT関連4団体:ICT CONNECT21、日本教育情報化振興会、日本視聴覚教育協会、全国ICT教育首長協議会
利活用の自治体間格差の解消
NEXT GIGAでは、ICTの利活用における自治体間の格差も課題となっています。先述の提言においても「自治体間の差が顕著であることが大きな課題となっている。学校間での活用差も大きく、まずはすべての自治体・学校で端末が日常的に活用できる環境づくりが必要である」と記されています。教育機会の差が生じないためにも、都道府県を中心とした広域連携をより一層推進することが求められており、文部科学省の令和6年度予算の概算用要求でも「GIGAスクール運営⽀援センター」の機能強化を図るための予算が含まれています。
端末リプレイスに備えた適切な支援策
端末リプレイスに備えて適切な支援策を構築することも求められています。次の端末更新のタイミングは2025年前後ですが、先述の提言では、自治体間格差が顕著な現状で仮に端末の購入費用を家庭負担へ移行した場合、「自治体によっては1人1台端末の環境が途切れる可能性がある」と指摘しています。その上で、「1人1台端末環境の着実な継続を進めるためには(中略)次期端末更新に関しては主として国負担とすべきである」と提言しました。また、自治体側が十分に事前準備できるよう早期に方針を提示することも求めています。
NEXT GIGAに向けての文部科学省の取り組み
文部科学省が2023年8月30日に公表した令和6年度概算要求(令和6年度文部科学関係概算要求のポイント等)を基に、1人1台端末の更新や高速大容量の通信ネットワークの整備を中心に、NEXT GIGAに向けた文部科学省の取り組みを確認します。
GIGAスクール構想の着実な推進 ~1人1台端末の更新~
1人1台整備されたコンピュータは、早い自治体では2024年度から更新時期に入ります。そのため端末の更新費用として、45,000円 / 台(補助対象:2/3台)を上限とした定額補助が含まれています。ただし、2023年11月29日に成立した令和5年度補正予算(参考:令和5年度文部科学省補正予算 事業別資料集)では、補助基準額が上限55,000円 / 台の2/3と設定されています。このことから令和6年度以降の補助額については現時点(2024年2月時点)では未定であるものの、一定の補助が行われる見込みです。
また、いずれの予算案でも複数年をかけて端末を計画的に更新すること、端末の故障時などに子どもたちの学びを止めない観点から予備機の整備も進めるという内容が盛り込まれています。
ネットワークアセスメント実施促進事業
NEXT GIGAに向けた取り組みには、ネットワークアセスメント実施促進事業も含まれています。ネットワークアセスメントとは、現状のネットワークを分析・診断することです。最適なネットワーク環境の実現のためには、現状の把握とともに問題点をピックアップし、改善策を考えていかなければなりません。
実際に3~4割の自治体で「動画視聴時に、映像の乱れが発生したり、スムーズに再生できない」「クラスで一斉にオンライン教材などを利用する際、一部の児童生徒が教材に接続できない状況が発生する」という不具合事象を経験しています(2022年度、文部科学省調べ)。
文部科学省は、自治体によって1人1台端末の活用状況に格差がある理由について「取組の最大の阻害要因の一つはネットワークの遅延や不具合である」と分析しています。今後、デジタル教科書の導⼊や動画教材の活⽤など教育DXを加速させる上でも、通信ネットワーク環境の問題を改善していくことは必要不可欠です。そこで文部科学省は、学校のネットワークに対してアセスメント(調査・診断)を実施し、問題があれば改善をするよう促しています。
NEXT GIGAに必要な準備はお早めに
GIGAスクール構想は、児童生徒1人ひとり個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて進められてきました。学校では1人1台端末と通信ネットワークが整備された環境で、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に取り組んでおり、その効果が実感されつつあります。
その一方で、1人1台端末の整備が進むにつれて、端末の故障の増加やバッテリの劣化などの問題も浮上しています。子どもたちの学びを止めないためにも、NEXT GIGAに向けた端末更新や予備機の整備、ネットワーク環境の整備などを進めていく必要があります。
NEXT GIGAに向けた準備として、まずはこれまでの取り組みを振り返り、自治体や学校でどのような問題点、課題があるかを再点検した上で、効果的な対策を考えることが大切です。
そこでお勧めしたいのが、Sky株式会社のNEXT GIGAに向けた新パッケージです。Sky株式会社株式会社は、GIGAスクール構想の実現に向けた「児童生徒1人1台端末」の整備を支援するため、学習活動で活用することを考慮したタブレット端末「Sky株式会社安心GIGAタブレット」をご用意し、販売した実績があります。
その実績を踏まえ、NEXT GIGAに向けてハードウェアとソフトウェアを組み合わせた新しいパッケージを提供する予定です。もちろん、Sky株式会社が自治体のご予算に合わせて提案いたしますので、次期端末整備の際はぜひご検討ください。