児童生徒1人1台端末などICTを活用した教育についてさまざまな情報を掲載します。

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公開日2024.02.16更新日2024.05.20

教育DXとは? メリットや課題、具体的な事例を解説

著者:Sky株式会社

教育DXとは? メリットや課題、具体的な事例を解説

一般企業や組織と同様に、教育分野においてもDXが進んでいます。教育DXは単なるデジタル化のことではなく、教育のあり方を根本から変革するものです。教育DXは今、インフラ整備期を終え、次の段階である教育現場での効果的な運用期に移行し始めています。この記事では、教育DXのメリットや課題、具体的な事例について紹介します。

教育DXとはデータやデジタル技術を活用して教育や学校を変革すること

教育DXとは、教育分野におけるDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)のことで、データやデジタル技術を活用して、学校教育をより良く変革することを意味します。文部科学省では、情報化が加速度的に進むSociety5.0時代に向けて、情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力を育む必要があることから、教育DXを推進しています。

一般的なDXの推進には、「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった次の3つのステップがあります。これを教育DXに当てはめると、おおむね下記のようになります。

■教育DXの推進イメージ

段階 ステップ 内容
第1段階 デジタイゼーション ・ハード・ネットワーク整備(GIGAスクール構想)
・教育・学習のデジタル化(デジタル教科書の導入、学校業務のデジタル化、CBT)
・手続き・事務のデジタル化(働き方改革)
第2段階 デジタライゼーション ・学習におけるデジタルとアナログのベストミックス
・コンテンツを便利に、シームレスに利活用し、学習の記録等も必要なときに必要な人が参照可能に(データの標準化、API、標準規格)
・データの分析・利活用により、有用な知見の共有・活用
第3段階 デジタルトランスフォーメーション ・場所や時間等にとらわれない学び、個人の特性に応じた生涯通じた学びなど、学びが連続的に改良

現在は、教育DXの一環でもあるGIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備によって、クラウドサービスや1人1台端末といった新しい学習環境の利活用が始まったという段階です。その次の段階としては、児童生徒自身がICTを「文房具」として、教員自身がICTを「教具」として、自由な発想で活用できるような環境を整え、学校教育活動の中で使いこなしていくことが求められています。

教育DXにおける自治体や学校の先進的実践事例は、文部科学省の「StuDX Style」で随時発信されています。具体的な取り組みを知りたい場合には、「StuDX Style」をご活用ください。

教育DXが必要な理由

社会のデジタル化が進み、ICTスキルが求められる社会に対応することが求められている中で、教育DXは重要性を増しています。続いては、教育DXが必要とされる理由を説明します。

デジタル社会を見据えた教育

現在の児童生徒はデジタルネイティブ世代と呼ばれ、彼らは生まれたときからデジタル技術に囲まれて育ち、将来のデジタル社会を担っていく重要な存在になります。今後ますますデジタル技術やデータの活用が身近になっていく社会において、よりよく生きるためにICTを適切に活用できる力を身につけることが求められています。

遠隔・オンライン教育の推進

遠隔・オンライン教育は場所の制約なく、感染症対策や災害時のほか、病気療養中や不登校の児童生徒でも教育を受けられるようになり、学習機会を確保できます。また、学校同士をつないだ合同授業の実施や外部人材の活用も行いやすく、教員の指導や学習の幅を広げることもできるほか、特別な支援が必要な児童生徒にとって、学習機会の確保を図る観点からも教育DXは重要な役割を果たします。

教員の負担軽減

ICTの活用によって校務にかかる時間が削減でき、教員の負担を軽減することできることが考えられます。また、学習履歴(スタディ・ログ)や指導要録などのデータ、健康診断情報などを蓄積して利活用することもできます。

個別最適な学びの充実

個別最適な学びは、児童生徒の特性や学習進度などに応じて基礎的・基本的な知識・技能等の確実な習得をめざす「指導の個別化」と、興味・関心等に応じ、1人ひとりに応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供する「学習の個性化」のいずれの側面においても、ICTの効果的な活用が求められています。教員がICTを活用し、児童生徒の個別の状況を把握して指導・支援していくためにも、教育DXは重要です。

文部科学省における教育DX推進の方向性

2020年12月に文部科学省が公表した「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」では、「教育におけるデジタル化の推進」の中で「GIGAスクール構想を始め教育分野において急速なデジタル化への対応が進むことを見据えて(中略)現段階における施策や今後の検討の方向性についてとりまとめた」とし、これまでの教育DXにも関連するさまざまな施策が取りまとめられました。ここでは、初等中等教育と高等教育における教育DXの推進に向けた具体的な取り組みをご紹介します。

初等中等教育における教育DX

初等中等教育においては、GIGAスクール構想による義務教育段階の1人1台端末環境整備を踏まえ、ハード・ソフト・人材が一体となった取り組みを一層加速させることが明記されました。また、遠隔・オンライン教育の推進、学習者用デジタル教科書の普及促進、コンピュータを使って学習・アセスメントができるオンライン学習システム(CBTシステム)の活用推進に加え、教員のICT活用指導力の向上、ICT活用方法などの支援にも取り組むことが示されました。これらの施策により、児童生徒1人ひとりの多様な実情を踏まえ、誰1人取り残すことのない学びの実現に向けた取り組みを推進するとしました。

高等教育における教育DX

高等教育においては、デジタル技術を大胆に取り入れ、国際的な教育機会を享受できる機会を拡大するとともに、海外の学生・教員とのネットワークの継続的な確保を可能にし、国際競争力のあるハイブリッド教育環境を実現することを明記されました。

また、デジタル化の担い手となる人材を育成するための取り組みや、大学入学者選抜におけるデジタル活用などに向けた検討も進めるとしています。2022年4月から、高等学校では「情報I」が必修科目となり、2025年1月からの共通テストでは、プログラミングを含む「情報」が出題される予定です。

教育DXがもたらすメリット

教育DXは、児童生徒だけではなく、学校や保護者にもメリットをもたらします。それぞれのメリットについて見ていきましょう。

学校にとってのメリット

学校にとって教育DXは、学習成果の評価とカリキュラムの最適化、デジタルツールの活用による校務の自動化・効率化などがメリットとして挙げられます。教育DXが進めば、個々人の学習データの蓄積ができるようになります。学習履歴(スタディログ)をはじめとする教育データを利活用することで、理解度に応じて個別最適化された指導が可能になり、より1人ひとりに寄り添った指導ができることが期待されています。

児童生徒にとってのメリット

児童生徒は、教育DXによってデジタル教科書や教材などを活用することができ、音声や動画、アニメーションなど紙の教科書や教材よりも多くの情報に触れられます。また、学習活動の履歴がデータとしての蓄積されることで、自身の学習を振り返りに活用できるといったメリットもあります。そのほかICTを活用した情報の収集・分析・活用などを日常的に行うことで、情報活用能力を身につけることにも役立ちます。

保護者にとってのメリット

保護者にとっての教育DXのメリットは、成績や出欠、日々の連絡などがデジタルツールを通じて行われることで、保護者の負担軽減につながる点が挙げられます。そのほか、児童生徒が利用しているデジタル教材や学習用ツールに保護者IDを使ってログインすることで、学習状況を確認するといった使い方も考えられます。

教育DXの課題

教育DXを推進するには、解決しなければならない課題があります。これらの課題を克服することで、教育DXは進展するでしょう。

ICT化に関わる費用負担

教育DXの実現には、学習用端末の購入やクラウドサービスの利用など、ICT環境整備と維持が必須であり費用が必要となります。特に、学習用端末は使用していくなかで故障や破損、経年劣化による買い替えなどが必要です。校内ネットワークや各家庭でのインターネット環境も一度設置すれば良いとわけでなく、定期的なメンテナンスや設備更新が欠かせません。

個人情報の取り扱い

教育DXを推進するなかで、児童生徒たちの個人情報の取り扱いは重要な課題です。そのため文部科学省では、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を策定しています。ガイドラインでは、「学校が保有する重要性が高い情報に対する不正アクセス事案や持ち出した学校情報を記録した媒体の紛失事案も発生している中で、児童生徒や外部の者等による不正アクセスの防止等の十分な情報セキュリティ対策を講じることは、教員及び児童生徒が、安心して学校においてICTを活用できるようにするために不可欠な条件」だとしています。

インターネット上のトラブルやいじめ

インターネット上のトラブルを避けるためには、情報モラル教育が必要です。児童生徒に対して、安全なインターネットの利用方法、プライバシー保護、知的財産権の尊重などについて教育を行うことが重要です。GIGAスクール構想に伴い整備された1人1台端末を使ったいじめが起こる可能性も否定できません。そのため、端末の使い方についてのルールを明確にし、児童生徒との間で共通の理解を持つことが重要となります。教員が児童生徒の投稿を確認できるようにするなど、端末を安全に使うための対策が求められます。

教員のICT活用指導力

教育DXの成功には、教員のICT活用指導力の向上が欠かせません。そのため、ICTを得意とする教員がほかの教員に使い方を教えたり、ICT機器の販売事業者などが開催するセミナーや研修に参加したりすることで、積極的に情報を取り入れることも大切です。ITリテラシーの向上には、教育委員会や教育センターによる研修や校内研修の実施や、自治体内での情報共有などの取り組みが考えられます。他校や自治体、企業などと連携を取ることが大切です。

教育DXの具体的な取り組み事例

教育DXが推進されるなか、さまざまな取り組みが行われています。教育DXの具体的な取り組み例として、Sky株式会社が運営するWebサイト「学校とICT」で紹介された実践事例を紹介します。

疑似体験によって学ぶ

埼玉県狭山市立水富小学校では、1人1台端末を使った疑似体験と協働による情報モラル授業を行いました。疑似体験を通じて、写真をインターネットに公開した際の危険性やそこから生じる人間関係のトラブルおよびそれを回避する方法を考え、ICTを利用した際のトラブルの事例とその原因を学び、適切な使い方を学びました。

自力解決や話し合いの時間を確保

北海道教育大学附属函館中学校では、A=B=Cの形をした連立方程式の解き方の方法を学び、3通りの組み合わせの中で、最適な方法についてクラス全体で考え学び合う授業を行いました。グループ活動での考え共有やまとめに時間を要することなく、自力解決や話し合いなどの時間の確保できたといいます。また、数学の授業では数式などの表現には時間がかかるため、キーボード入力だけでなく「手書き」ができる機能が重宝され、いくつかのアプリを試した上で、日常的に活用できる「SKYMENU Cloud」を選択したそうです。

ICTを使ったオンライン朝礼

愛知県日進市立日進中学校では、コロナ禍により体育館に全校生徒が集まって行っていた「朝礼」が実施できなくなりました。そこで、Web会議システムを使って、校長室から「朝礼」を発信。一方通行的な発信だけでなく、生徒の顔が見えるようにシステムを組み合わせることで、より双方向性の高い朝礼を行えました。

動画の視聴・録画でスピーキングテスト

千葉県千葉市立椿森中学校では、新出文法事項である仮定法過去を使用し、自分たちの住む千葉市にあったらいいと思うものと、もしあったらしてみたいことについて英文を書き、会話形式で伝え合う活動を行いました。スピーキングテストは、あらかじめ録画しておいた教員とALT(外国語指導助手)の動画を添付したSKYMENU Cloudの「発表ノート」を使用し、生徒は教員の質問を聞き取り、それに対する自分の答えを録画して提出しました。

教育DXの実現にはデジタルツールの効果的な活用が必要

今後も、教育DXの取り組みはさらに進展していくことが予想されます。さまざまなデジタルツールや教育データを利活用することで、児童生徒一人ひとりの学習進度や理解度に合わせた指導を行えるだけでなく、リアルタイムのフィードバックも可能になります。

本稿で教育DXの具体的な取り組み例として紹介した事例は、「SKYMENU Cloud」を活用したものです。SKYMENU Cloudは、Windows PC、Chromebook、iPadに搭載されたブラウザで動作し、端末の種類を問わず活用できます。1人1台端末の日常的な活用を支援するSKYMENU Cloudをぜひご活用ください。