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学校におけるICT環境とは? 整備の際に意識したいポイントを紹介

著者:Sky株式会社

学校におけるICT環境とは? 整備の際に意識したいポイントを紹介

文部科学省によるGIGAスクール構想の実現に向けたさまざまな施策により、小・中・高等学校においてICTを効果的に活用するために、ICT環境の整備が進んでいます。この記事では、ICT環境整備によって期待される効果や、ICT環境を有効活用するためのポイントなどについて解説します。

学校におけるICT環境とは、 授業や学習活動にICTを活用するための環境のこと

ICT環境とは、学校教育において、コンピュータやタブレット端末、インターネットなどのICTを取り入れて活用する環境のことです。ICTはInformation and Communication Technologyの略語で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。なお、教育現場で使用されるICT機器には、コンピュータ、タブレット端末、プロジェクタ、モニター、電子黒板などがあります。インターネットや校内LANなどのネットワーク環境のほか、学校教育向けの各種ソフトウェアもICT環境に含まれます。

学校のICT環境整備が進むことによって期待される効果

ICT環境により、学校教育における学びにはどのような効果がもたらされるのでしょうか。総務省の「教育ICTガイドブック Ver.1」(以下、総務省ガイドブック)では、教育分野においてICTを活用することの意義を、「Active」「Adaptive」「Assistive」のトリプルAとして整理しています。このトリプルAは、文部科学省が児童生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの整備を目標に、2019年に提唱した「GIGAスクール構想」よりも古くから考えられていたものです。すなわち、日本ではGIGAスクール構想以前から、こうした観点でICT環境の整備が進められてきたことがうかがえます。ここからは、トリプルAとして挙げられているActive、Adaptive、Assistiveについて、総務省ガイドブックに沿って確認します。

Active:学びを活性化する

「Active」は、学びを活性化することです。ICTは、主体的・対話的で深い学びを実現し、学びを活性化するツールと捉えられます。例えば、児童生徒が端末の画面上で自分と友達の意見を比較対照しながら試行し分析する、または自身の考えを表現力豊かにプレゼンテーションするといったことに役立てられます。さらに、1人1台の情報端末を持つことで、興味・関心を持ったことについて、その場で調べたり共有したりと「学びの機動力」が高まるとされています。

Adaptive:学びを個別最適化する

「Adaptive」は、個々の児童生徒に応じて学びを最適化することです。ICTの中でも、特にビッグデータやAI関連技術を用いれば、各人の習熟度が分析・可視化され、それぞれに最適な課題が出されるなど、きめ細やかに最適化されます。また、クラスや学校、自治体といった単位で学習記録データを収集・分析することで、エビデンスに基づいた学級・学校経営ができるようになり、「教育の説得力」が高まるとされています。

Assistive:学びを支援する

「Assistive」は、学びを支援することです。ICTを、地域的な制約、心身の障害、貧困などの困難を抱える児童生徒の学びのサポートに活用することもできます。例えば、へき地の児童生徒が離れた地域の児童生徒交流し、多様な価値観に触れるといった活動を行うことで、「学びの選択肢」を増すことが可能です。また、ICTがセキュリティ対策やいじめの防止、教員の業務の効率化などに役立つことも見逃せない側面とされています。

学校のICT環境の整備の変遷

ここで、学校におけるICT環境の整備について、簡単にその歩みを振り返ります。文部科学省は、2014~2017年度の「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」、2018~2022年度の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」において、ICT環境の整備を掲げてきました。このうち「5か年計画」では、学習者用コンピュータを3人に1台(3クラスに1クラス分程度)配備することが示され、そのための財政措置も講じられています。

さらに、2017年(小・中学校)、2018年(高等学校)に告示された現行の「学習指導要領」では、情報活用能力を言語能力や問題発見・解決能力と同様の「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけ、コンピュータなどを活用した学習活動の充実の促進、小学校プログラミング教育の必修化も進められてきました。これを受けて文部科学省は、2019年12月、全国の学校に対して「GIGAスクール構想」を提示。この時点で、2023年度までに「1人1台端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」の整備が目標に掲げられました。

2020年に入ると、国内で新型コロナウイルス感染症が拡大。全国の学校は臨時休業を余儀なくされ、一方でオンライン学習による対応が実施されました。そこで、文部科学省は、GIGAスクール構想の計画の見直しを図ります。1人1台端末の実現時期を2021年3月までに前倒しするとし、予算も確保。その結果「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」(2023年3月1日現在)によると小・中学校では全都道府県で児童生徒1人1台を実現、平均して児童生徒1人に対し1.2台の教育用コンピュータが整備されており、ICT環境整備は一気に加速しました。

ICT環境整備の際には、どのように活用するかが大切

当然のことながら、ICT環境は整備することがゴールではありません。あくまで整備したものを「どのように活用するか」が重要なポイントです。しかし、先述のとおり前回のGIGAスクール構想に伴うICT環境整備においては、新型コロナウイルス感染症の影響でスケジュールが大幅に前倒しされたこともあり、十分に活用方法を検討できなかった自治体も少なくありませんでした。

現在は、次期の整備に当たるいわゆるNEXT GIGAに向け、前回整備後の活用状況を踏まえて、さまざまな検討がなされています。ICT環境の活用に関する情報は、文部科学省が公開している「教育ICT活用実践事例」や、ICT活用のポイントや事例を多く集めた「StuDX Style(スタディーエックス スタイル)」といったWebサイトが参考となります。また、教育ICTに関係する民間企業各社がさまざまな実践事例を公開しています。これらのWebサイトで紹介されている事例を見れば、ICT機器やソフトウェアをどう使えばいいのかというヒントにしていただけます。

例えば、「小学校・第2学年・国語科・学校のお気に入りの場所を1年生に紹介しよう」という事例では、2年生の児童がICT端末(タブレット端末)を使って、1年生に紹介したい学校内の場所を写真に撮影し、教員はその写真を学習支援ソフトウェアの共有フォルダに保存。児童はそのフォルダから、紹介したい場所の写真を選び出して必要な写真を自分のICT端末に保存するといった、一連の作業を行いました。この事例では、「友達の撮った写真からも自分の紹介したい場所の写真を選べること」「紹介する事柄に合う写真を見せながら、1年生にお気に入りの場所の紹介ができること」などが、児童にとってのICT活用のメリットとして挙げられています。また、お気に入りの場所を発表するための練習の様子を、ICT端末で動画撮影して視聴し合い、修正ポイントに気づけることもメリットとして紹介されています。

学校においてICT環境を有効活用するためのポイント

あらためて、ICT環境を有効活用するには、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。ここでは、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET)が公開している「先生と教育行政のための ICT教育環境整備ハンドブック2022」を参考に、ICT環境を有効活用するための5つのポイントを紹介します(最新版の「先生と教育行政のための ICT教育環境整備ハンドブック2023」も公開されています)。

快適なネットワーク環境

まず必要とされるのが、快適なネットワーク環境です。地域によっては、学校から接続するインターネット回線の影響により、1人1台端末や学習用ツールがうまく活用できていなかったというケースもあります。回線速度が遅いと、児童生徒が一斉にログオンするだけでも非常に時間がかかるといった状況になるという事例もあります。すべてのICT端末が快適に使えるようなネットワーク環境を構築することが重要だといわれています。

文房具としてのPCとキーボード入力

GIGAスクール構想では、PCは特別な道具ではなく、児童生徒の新たな文房具と捉えられています。PCを文房具として使いこなすには、苦労せずにキーボード入力ができるようになることが求められます。小学校中学年以上であれば、毎日PCとキーボードに触れる機会をつくり、PCを使って自分の考えをきちんと文章にできるようにすることが大切だとされています。

基本的な情報セキュリティ・情報モラルの学習

ICT機器に加えて、インターネットを日常的に利用するには、情報セキュリティに関する知識や個人情報の扱い方を学んでおくことも必要不可欠です。SNSや動画サイト、ニュースサイトなどの利用の仕方、著作権を侵害しないこと、コンピュータウイルスや詐欺サイトに関する知識も同様です。また、「ネットいじめ」が増加する昨今、情報に関する責任を意識することも求められます。

PCの不適切な利用の抑止

PCを児童生徒に貸与し、自宅に持ち帰って使うことを許容する場合、夜遅くまで動画サイトやSNS、オンラインゲームなどに没頭してしまうといった問題も出てきます。不適切な利用を抑止するには、そのPCがどのような経緯や背景から何のために配付されているのかを丁寧に説明する必要があります。また、PC使用の履歴などを大人が見守っていることを伝えるのも大切です。

持ち帰りを妨げる要因のクリア

PCを持ち帰っての家庭学習は、個別学習の一つのかたちとして有効だとされています。しかし現状では、自宅にWi-Fi環境を持たない家庭もあります。このような状況に配慮し、必要に応じてモバイルルータを貸与するといった対応も必要となります。

教育現場での実践的活用を視野に捉えたICT環境の整備を

GIGAスクール構想などにより、学校でのICT環境の整備は着実に進展しました。しかし、ICT環境整備は、児童生徒の学びに資する活用が実現されて初めて意味を持ちます。有効活用するために環境を整備するという基本原則を意識すると同時に、児童生徒が効果的に活用できているのかを常に意識して取り組んでいただければと思います。

ICTを活用した学習活動を支援する「SKYMENU Cloud」

GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台のPC端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」と多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。