教師と児童生徒などが、離れた場所でやりとりする形態の学習である遠隔教育。コロナ禍に対応するための手段としてだけではなく、個別最適な学び、協働的な学びを目指して全国の学校で実施されています。この記事では、遠隔教育の概要やその方法、分類などについて解説し、遠隔教育を始めるために必要な準備についてもご紹介します。
遠隔教育とは、ICTを利用したオンライン教育のこと
場所を限らずやりとりできる学習形態である遠隔教育は、広い意味では、テレビやラジオ、郵便などを利用した通信教育も含まれています。しかし、近年ではICTを利用した「オンライン教育」と同義の言葉として使われることが多くなりました。文部科学省の「遠隔教育システム活用ガイドブック」では、遠隔教育は「遠隔教育システムを活用した同時双方向型で行う教育のこと」としています。また、遠隔教育システムを「離れた場所同士で映像や音声などのやり取りを行うためのシステムのこと」と説明しています。この記事においても、遠隔教育はオンライン教育と同義の言葉として取り扱います。
遠隔教育は、過疎地・離島に住む児童生徒や、不登校もしくは病気療養中で学校に行けない児童生徒に対して行われるほか、感染症流行や災害といった非常時における教育の手段です。コロナ禍では、全国の学校でオンライン授業が行われました。しかし、それだけにとどまらず近年では、家庭や地域社会と連携した遠隔教育と対面指導のハイブリッド化も進み、個別最適な学びや協働的な学びが展開されるケースもあります。
遠隔教育の方法
遠隔教育の方法は、「同時双方向型」と「オンデマンド型」の大きく2種類に分けられます。同時双方向型は、リアルタイムに配信(ライブ配信)し、教師と児童生徒が同時に参加する方法です。一方のオンデマンド型は、教師が事前に作成した授業の動画などを配信し、児童生徒が自分の好きなタイミングで視聴することができる方法です。
遠隔教育の分類
遠隔教育にはどのような種類があるのでしょうか。文部科学省は「遠隔教育システム活用ガイドブック」において、遠隔教育を実施する目的などを基に、以下のように分類しています。
多様な人々とのつながりを実現する遠隔教育
「多様な人々とのつながりを実現する遠隔教育」とは、ほかの学校とつないで合同で授業を行うことで、協働して学習に取り組んだり、多様な意見や考えに触れたりする機会の充実を図ることです。具体的には、離れた学校とつないで児童生徒同士が交流し、互いの特徴や共通点、相違点などを知り合う「遠隔交流学習」、他校の教室とつないで継続的に合同で授業を行うことで、多様な意見に触れたりコミュニケーション力を培ったりする機会を創出する「遠隔合同授業」が、「多様な人々とのつながりを実現する遠隔教育」に分類されます。
教科等の学びを深める遠隔教育
「教科等の学びを深める遠隔教育」とは、遠方にいる講師が参加して授業を支援することで、自校だけでは実施しにくい専門性の高い教育を行うことです。具体的には、他校などにいるALT(外国語指導助手)とつなぐ「ALTとつないだ遠隔学習」、博物館や大学、企業などの外部人材とつなぐ「専門家とつないだ遠隔学習」、免許外教科担任や臨時免許を有する教員が指導する学級と、当該教科の免許状を有する教員やその学級をつなぐ「免許外教科担任を支援する遠隔授業」、高等学校段階において学外にいる教員とつなぐ「教科・科目充実型の遠隔授業」が、「教科等の学びを深める遠隔教育」に分類されます。
個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育
「個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育」とは、特別な配慮を必要とする児童生徒や、特別な才能を持つ児童生徒に対して、遠方にいる教員などが状況に合わせた支援を行うことです。また、1人ひとりの児童生徒がそれぞれ教員などとつながることで、それぞれの興味関心に寄り添った指導を行います。具体的には、外国にルーツを持つ児童生徒と日本語指導教室などをつなぐ「日本語指導が必要な児童生徒を支援する遠隔教育」、個々の児童生徒と学習支援員などを個別につなぐ「児童生徒の個々の理解状況に応じて支援する遠隔教育」、自宅や教育支援センターなどと教室をつなぐ「不登校の児童生徒を支援する遠隔教育」、病室や院内分教室(病院の中に設置された教室)などと教室をつなぐ「病気療養中の児童生徒を支援する遠隔教育」が、「個々の児童生徒の状況に応じた遠隔教育」に分類されます。
家庭学習を支援する遠隔・オンライン学習
「家庭学習を支援する遠隔・オンライン学習」とは、感染症や災害などの非常時においても、家庭と学校をつないで学習支援を行うことです。児童生徒が学校に行けない場合でも、学習する機会を保障します。
遠隔教員研修
「遠隔教員研修」とは、教員研修をオンラインで実施する遠隔教育のことです。教員の負担軽減や業務効率化が期待できます。
遠隔教育のための環境整備・準備
遠隔教育のために必要な環境整備・準備として、システムなどに関する準備、学校でのICT環境に関する準備、家庭環境に関する準備などが挙げられます。システムなどに関する準備には、システムの利用手続き、アカウント発行作業などがあります。学校でのICT環境に関する準備は、遠隔・オンライン学習に必要な機器(コンピュータ、カメラ、大型提示装置、実物投影機など)の調達、教職員端末の設定作業などです。家庭環境に関する準備には、家庭のICT環境調査、環境面の支援方法の検討、児童生徒・保護者へのマニュアル作成などが必要です。
特に重要なのは、遠隔教育のためのシステムやツールの準備です。デジタルドリル、協働学習用ツール、チームコミュニケーションツール、Web会議システムなどが遠隔教育には必要です。こうしたシステムやツールを活用するために、教員や児童生徒は日頃から操作に慣れておくだけでなく、タイピングや情報モラルといった情報活用能力の育成も進めておかなければなりません。
質の高い学びを提供するための遠隔教育
遠隔教育は、事情があって学校に行くことができない児童生徒への教育に役立つだけではなく、デジタル時代にマッチした質の高い教育を目指すときにも有効な教育形態です。ICT機器やシステムを活用することで児童生徒1人ひとりに対して個別最適な学びを提供したり、または他校や地域社会と連携した協働的な学びを実現したりすることが可能です。また、児童生徒のICTとの親和性を高めることにもつながります。
ICTを活用した学習活動を支援する「SKYMENU Cloud」
GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台のPC端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」と多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。