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ハイブリッド型授業とは? メリットや課題、実施方法を解説

著者:Sky株式会社

ハイブリッド型授業とは? メリットや課題、実施方法を解説

すべての児童生徒が1人1台のタブレット端末やコンピュータを使える環境を整えること。さらに大容量のデータをやりとりできる高速ネットワークを整備することを掲げた「GIGAスクール構想」。これにより、学校のICT環境が整い、コロナ禍の臨時休業期間などを経験したことで、新たな授業形式である「ハイブリッド型授業」が実施されるケースが増えています。ハイブリッド型授業とはどのような形態の授業で、実施することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。この記事では、ハイブリッド型授業のメリットや課題、実施方法について詳しく解説します。

ハイブリッド型授業とは、対面授業とオンライン授業を組み合わせた授業形態のこと

ハイブリッド型授業とは、学校に登校して対面授業を受けるスタイルと、自宅からオンラインで授業を受けるスタイルを組み合わせた授業形態のことをいいます。ハイブリッド型授業は、新型コロナウイルス感染症対策としての臨時休業期間に多くの学校で取り組まれ、感染拡大がある程度落ち着いた後は新しい授業の形式の一つとして定着しつつあります。

ハイブリッド型授業は、対面授業をオンラインで同時配信する場合や、週の前半を対面授業、後半をオンライン授業に分けて行う場合など、さまざまな方法があります。なお、ハイブリッド型授業を受けるためには、タブレット端末などのコンピュータやヘッドセット、マイク、Wi-Fi環境などの準備が必要です。

ハイブリッド型授業のスタイル

ひとくちに「ハイブリッド型授業」といっても、さまざまな学習スタイルがあります。ここでは、ハイブリッド型授業の中で代表的な3つのスタイルをご紹介します。

ブレンド型授業

ブレンド型授業とは、目的に応じてオンライン授業と対面授業を組み合わせる授業スタイルです。単元によってオンラインと対面を分けたり、授業を録画した動画をアーカイブとして視聴できる環境を用意し、復習や学習支援に活用したり、反転授業の実践に生かしたりすることで、学習効果が高まることが期待されています。

分散型授業

分散型授業は、「オンライン授業を受けるグループ」と「実験や実習などの対面授業を受けるグループ」に分け、異なる内容の授業を対面とオンラインで行う方法です。次の日は前回と形態を入れ替えて授業を行います。定期的に対面とオンラインを入れ替えることで偏りなく学べること、対面授業で人数制限が必要な場合にも全体の授業時数を増やさずに済むことなどがメリットです。一方で、分散型授業を行うためには、オンライン授業と対面授業の準備を同時に行う必要があるため、教員の負荷が増すこと、グループごとに学んでいる内容の順序が異なることを踏まえた調整が必要であることなどが課題とされています。

ハイフレックス型授業

一般に「ハイブリッド型授業」というときは、ハイフレックス型授業を指すことが多いです。ハイフレックス型授業とは、Web会議システムなどを使って授業をライブ配信することで、対面とオンラインで同じ内容の授業が受けられる形態です。児童生徒の状況や都合に合わせて形式を選択できるスタイルです。教室で授業に参加する児童生徒と自宅などでオンライン参加している児童生徒の両方に向けて授業を行います。オンラインでもリアルタイムの参加が基本となるため、クラウド型の協働学習支援ツールなどを活用すれば、グループワークなどにも参加できます。

ハイフレックス型授業にはメリットと課題がある

前述のとおり、ハイブリッド型授業のスタイルは3種類あります。中でもハイフレックス型授業は、対面授業とオンライン授業で同じ内容を同時に実施し、状況に応じて児童生徒がどちらに参加するかを選択できるメリットがあります。一方で課題も指摘されているため、実施前には十分な確認が必要です。

ハイフレックス型授業のメリット

児童生徒自身が授業の形態を選べる

ハイフレックス型授業では、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症の影響で、全員の登校が難しいという場合にも有効です。また、病気療養中などの理由で長期間にわたり登校が難しい児童生徒など、個々の状況に応じて柔軟に授業の形式を選べるのがメリットです。これまでは対面授業に参加できない場合、学習進度に差が出てしまうことがありましたが、オンラインで授業を受けられることで学びの機会を確保することができます。

対面とオンラインで授業の内容が大きく変わらない

ハイフレックス型授業は、Web会議システムなどを用いてライブ配信が行われます。リアルタイムの参加が基本となるので、自宅でも教室でも授業の内容が大きく変わらないのもメリットです。クラウド型の協働学習支援ツールなどをうまく活用すれば、ほかの児童生徒の取り組みを参考にしたり、グループワークに参加したりすることも可能なので、講義を録画した動画を視聴するだけよりも児童生徒も満足感を得やすいです。

フルオンライン授業へとスムーズに移行できる

ハイフレックス型授業は、日頃から対面とオンラインで同じ授業を行います。そのため、感染症の流行拡大などの事情で対面授業の継続が難しくなった場合に、対面授業を中止して、全員がオンライン参加するフルオンライン授業に移行しやすいこともメリットだといえます。

ハイフレックス型授業の課題

配信用機材を用意する必要がある

ハイフレックス型授業を実施するには、配信用のカメラやヘッドセット、スピーカーなどの機材を設置しなくてはなりません。板書を読めるように映したりし、オンライン参加の児童生徒の発言(音声)を教室のほかの児童生徒が聞き取れるようにスピーカーを設置したりするには、一定以上の品質の機材が必要だったり、映像や音声に関する知識が必要になります。

自宅と教室、それぞれの児童生徒に配慮する必要がある

ハイフレックス型授業は、対面授業とオンライン授業を同時に進めるため、教員は教室にいる児童生徒と自宅からオンライン参加している児童生徒のそれぞれに配慮し、同時にフォローする必要があります。そのため、授業者である教員の負荷が高まる傾向があります。

ハイブリッド型授業における問題点

児童生徒の学びの機会を確保できるハイブリッド型授業は、個別最適化な学びが求められている学校においてメリットがある授業スタイルの一つですが、いくつかの問題点が指摘されています。ハイブリッド型授業を円滑に実施するためには、事前に課題を理解し、解決策を考えておくことも大切です。ここでは、ハイブリッド型授業が抱えている問題点を解説します。

児童生徒の生活リズムが乱れやすい

ハイブリッド型授業の導入によって、児童生徒の生活リズムの乱れが懸念されています。オンライン授業を選択できるようになると、学校に登校する場合に比べて起床時間が遅くなりがちです。それに伴い、食事時間や就寝時間などの生活リズムにずれが生じることが問題点として挙げられます。また、小・中学生の場合、授業が行われる時間帯に保護者が仕事などで不在だと、学習に対する集中力が持続しないことも考えられます。

オンライン授業による自由度が高いリズムが定着してしまうと、対面授業に順応しにくくなるため、オンライン授業でも対面授業のときと同じ生活リズムを維持することが大切です。また、登校する場合に比べて体を動かす機会が減るため、日々の運動量にも気を配る必要があります。

友達との交流の機会が減少する

ハイブリッド型授業は、オンライン授業と対面授業をミックスした授業形態です。従って、これまでのような対面授業が中心の授業形態に比べると、子ども同士の交流の機会は減少します。そのため、子どもによっては、自宅で1人授業を受けることに対して「寂しい」「友達ができない」と感じてしまうこともあります。こうした問題を解決するため、教員は授業を通して、対面授業を受けている児童生徒と、自宅でオンライン授業に参加している児童生徒との交流の機会を、意識的につくることが大切です。

通信障害などのトラブルで中断してしまう

ハイブリッド型授業を行うには安定した通信環境が不可欠です。特にリアルタイムの参加が基本のハイフレックス型授業では通信障害が授業の中断に直結します。しかし、どの程度安定した通信環境を整えられるかは、家庭の事情によって異なります。そのため、通信障害などのトラブルが多く授業を途切れ途切れにしか視聴できず、内容をよく理解できなかったり、授業に集中できなかったりする児童生徒もいる可能性を認識しておくことが大切です。授業が終わるまで接続が回復せずに完全に切れてしまった場合、オンライン授業は成り立ちません。録画データを配付するなど授業が受けられなかった児童生徒をフォローするほか、対面授業への切り替えなども検討が必要なる場合もあります。なお、自宅でオンライン授業(ハイフレックス型)を受ける際に、推奨される通信環境は次のとおりです。

オンライン授業を受ける際に推奨される通信環境

  • 通信回線:光回線
  • 回線速度:1.2Mbps以上

ハイブリッド型授業を実施する際のポイント

ハイブリッド型授業を実施するには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。ここでは、ハイブリッド型授業を実施する際の3つのポイントを解説します。

オンラインでも板書が見やすいように工夫する

ハイフレックス型授業で、教室で実施している対面授業をライブ配信する場合、オンライン参加者の見やすさに配慮して板書する必要があります。板書をする際の注意点は次のとおりです。

文字を大きく書く

タブレット端末などの画面で見ると、板書の文字は思いのほか小さく映るため、オンライン参加者には非常に見えにくいものです。対面授業で板書をするときよりも、文字を大きめに書くよう心掛けてください。

文字と文字の間を少し空ける

板書した文字と文字との間が詰まっていると、通信環境の影響で画像が乱れた場合に、文字がつぶれて見えにくくなります。授業を視聴する環境には個人差があることを考慮して、字間を空けて書くように意識することが大切です。

黒板の端には文字を書かない

黒板の端に文字などを書くと、端末の画角によっては映らないことがあります。なるべく端は使わず、中央付近に書くことをお勧めします。

映像だけではなく音声もクリアに届ける

ハイブリッド型授業を行う際は、教室で行っている授業の音声がオンラインで参加している児童生徒にしっかり届くよう、教員用端末のマイクを調整してから授業を始めることが大事です。音を大きくし過ぎるとかえって聞きづらくなることもあるため、程よい大きさを探ることが大切です。教室にいる児童生徒の発言をオンライン参加の児童生徒に届けるようにするには、指向性が広いバウンダリーマイクなどの集音に向いた機材を使用するといった準備が必要です。そうした機材が準備できない場合は、児童生徒の発言を教員が繰り返すことでオンライン参加の児童生徒に伝えるといった工夫が必要です。

また、ハイブリッド型授業では、オンライン参加している児童生徒の発言を、教室にいるほかの児童生徒に届けることも大切です。そのために、外部スピーカーを設置するなどして、映像だけでなく音声も双方向でやりとりできるようにする工夫が必要です。

学習効果の向上につながるハイブリッド型授業

ハイブリッド型授業は、教室での対面授業と自宅でのオンライン授業を組み合わせて実施する授業の形式です。児童生徒の状況や授業の目的に応じて授業形式を選ぶことで、それぞれのメリットを享受できます。また、何らかの事情で登校が難しい児童生徒の学習機会の確保にも有効で、オンライン配信の映像を録画したり、講義形式の授業の映像を用意することで、復習や反転授業などにも活用でき、学習効果の向上にも役立ちます。ハイブリッド型授業を実施する場合は、そのメリットを高めるためにも対面とオンラインでそれぞれ参加する児童生徒がストレスなく授業を受けられることを意識した環境づくりが大切です。

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GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台の端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」や多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。