令和の日本型学校教育とは、中央教育審議会の2021年1月の答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」で示された、令和時代における学校教育の在り方と、その実現のために求められる取り組みを指します。加速度的に変化する社会において、学習指導要領に基づいて児童生徒の資質・能力を育むために学校教育に求められるのは何か。この記事では、その概要や具体的な内容をご紹介します。
令和の日本型学校教育とは? その概要や背景
令和の日本型学校教育は、社会の変化が加速度を増し、複雑で予測困難となってきているなか、従来の日本型学校教育を発展させ、すべての児童生徒の可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る、学校教育の目指すべき姿です。中央教育審議会の2021年1月の答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(以下、中教審答申)で、具体的な在り方が示されました。
中教審答申では、学習指導要領に基づいて、1人ひとりの子どもを主語にする学校教育の目指す姿が具体的に描かれています。これまでも、日本型学校教育は子どもたちの知・得・体を一体で育むものとして、諸外国から高く評価されてきました。それをさらに発展させ、現在の学校教育における課題に対応するために必要な、「子供の学びの姿」や「教職員の姿」、それを「支える環境」が示されています。
日本型学校教育の特徴と直面する課題
日本型学校教育は、学校が学習指導にとどまらず生徒指導においても主要な役割を担って、児童生徒の状況を総合的に把握しながら指導を行い、子どもたちの知・得・体を一体で育んできました。中教審答申では「日本型学校教育が,世界に誇るべき成果を挙げてくることができたのは,子供たちの学びに対する意欲や関心,学習習慣等によるものだけでなく,子供のためであればと頑張る教師の献身的な努力によるものである」と明言しています。2020年、コロナ禍によって全国の学校で臨時休業措置が取られたことで、こうした学校の役割が、広く再認識されました。
一方で、変化する社会の中で学校教育はさまざまな課題に直面しています。児童生徒の多様化や学習意欲の低下、教員の長時間労働や教員採用倍率の低下など、学ぶ児童生徒と教える教員の双方に課題があります。また少子高齢化や人口減少のなかで学校教育を維持すること自体にも課題があり、その質の保証のための取り組みが欠かせません。さらに、情報化が加速度的に進むSociety5.0時代において求められる力の育成に関する課題も指摘されています。こうした状況下で、本来であれば家庭や地域でなすべきことまでもが学校に委ねられているという現状があり、その結果として学校や教職員の業務範囲が拡大し、大きな負担となっています。
令和の日本型学校教育を目指す取り組み
数多くの課題があるなかで、令和時代に入り「学習指導要領の全面実施」「学校における働き方改革」「GIGAスクール構想」という非常に重要な取り組みが、大きな進展を見せています。これらの動きを加速させていき、さらに充実を図っていくことで新たな時代の学校教育を実現していくことが求められています。
そのために、中教審答申では第2期・第3期の「教育振興基本計画」で掲げられた、自立・協働・創造の3つの方向性を実現させるための「生涯学習教育社会の構築」を目指すという理念を継承しながら、Society5.0時代を見据えた取り組みを進める必要があると指摘しています。そして、児童生徒1人ひとりが自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、持続可能な社会の創り手となることができるように、資質・能力を育成することを求めています。
個別最適な学びと協働的な学び
令和の日本型学校教育が目指すのは「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現です。ここでは、それぞれの学びについてあらためて確認します。
個別最適な学びとは
個別最適な学びとは、児童生徒の個性や能力に応じて学習を進めることで、自己の可能性を最大限に引き出すため、児童生徒1人ひとりの学習進度や個性に合わせて学びを深めることです。平成元年以降の学習指導要領で用いられてきた「個に応じた指導」を、学習者の視点から整理した概念とされています。そのため、これまで以上に児童生徒の成長やつまずき、悩みなどの理解に努めて、個々の興味・関心・意欲などを踏まえてきめ細やかな指導・支援することが必要です。また、児童生徒が自らの学習状況を把握して主体的に学習を調整できるように促すことも求められます。
なお、個別最適な学びには、指導の個別化と学習の個性化の2つの側面があります。
指導の個別化
一定の目標をすべての児童生徒が達成することを目指し、特性や学習進度に応じて、指導方法や教材などを柔軟に提供・設定する。
学習の個性化
児童生徒1人ひとりの興味・関心などに応じて、学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、児童生徒自身が、学習が最適となるように調整する。
協働的な学びとは
協働的な学びとは、他者と協働しながら持続可能な社会の創り手となるための学びのことです。「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥ることのないよう、これまでも日本型学校教育において重視されてきた「協働的な学び」の重要性が増しています。中教審答申においても、探究的な学習や体験活動などを通じて、児童生徒同士や多様な他者と協働しながら、他者を価値ある存在として尊重し、さまざまな社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要だとされています。
実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿
中教審答申では、実現すべき令和の日本型学教教育の姿として「子供の学び」「教職員の姿」「子供の学びや教職員を支える環境」という3つの観点で示されています。
子供の学び
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげることが求められています。その上で、幼児教育・義務教育・高等学校教育・特別支援教育の各学校段階における目指すべき学びの姿が示されています。例えば、義務教育では「個々の児童生徒の学習状況を教師が一元的に把握できる中で,それに基づき特別な支援が必要な者に対する個別支援が充実され,多様な児童生徒がお互いを理解しながら共に学び,特定分野に特異な才能のある児童生徒が,その才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会にアクセスすることができる」といった姿が示されています。
教職員の姿
児童生徒だけではなく、教職員の実現すべき姿も示されています。例えば「教師が技術の発達や新たなニーズなど学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め,教職生涯を通じて探究心を持ちつつ自律的かつ継続的に新しい知識・技能を学び続け,子供一人一人の学びを最大限に引き出す教師としての役割を果たしている」といった姿が示されており、主体的な学びを支援する伴走者としての役割が求められています。
子供の学びや教職員を支える環境
学びを支える環境を整えることも重要です。すでに進められている1人1台端末や学習者用デジタル教科書の活用。教育データの活用環境を整備することなどよって教員による指導・支援を充実させること。ICTの活用環境と少人数によるきめ細かな指導体制の整備、校務の効率化など、さまざまな角度から新しい時代の学びを支える学校教育の環境整備が示されています。
令和の日本型学校教育の構築に欠かせないICT環境を大きく進展させたGIGAスクール構想
中教審答申では、令和の日本型学教教育を構築し、すべての児童生徒の可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現には、学校教育の基盤的ツールとしてICTは必要不可欠であると位置づけています。その上で、これまでの実践とICTを最適に組み合わせることで、学校教育におけるさまざまな課題を解決し、教育の質の向上につなげていくことが大切です。
GIGAスクール構想とは
令和の日本型学校教育の構築のために必要不可欠とされるICTの活用を大きく進展させたのがGIGAスクール構想です。GIGAスクール構想とは、教育ICT環境の充実を図り、児童生徒の可能性を引き出すことを目指す取り組みです。文部科学省より2019年に提唱され、全国の小・中・高等学校において高速大容量の通信ネットワークと児童生徒1人1台端末の整備が進められました。さらに、早い自治体では2024年度から1人1台端末の更新時期に入ることから、GIGAスクール構想の第2期と位置づけられる、いわゆる「NEXT GIGA」に向けた準備が各自治体で進められています。NEXT GIGAにおいては1人1台端末の更新はもちろん、ICTの活用促進などを目的としたさまざまな施策も盛り込まれています。
GIGAスクール構想により、令和の日本型学校教育の構築のために欠かせないICT環境の整備が進むなか、学校教育の質の向上に向けたICT活用と、その活用のための教員のICTスキルの向上が求められています。
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令和の日本型学教教育の構築を向けたさまざまな取り組みが進められるなか、GIGAスクール構想による児童生徒1人1台の端末が配備によりICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」や多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。