児童生徒の考える力を育むことは大切なことです。しかし、児童生徒に具体的にどのように考えさせるのか、その手だてを考えるのは難しいことだといえます。そこで役立つのが「思考ツール」です。思考ツールは、考えることを助けるための道具です。この記事では、思考ツールを使うメリットや思考ツールの一覧、使い方などをご紹介します。
思考ツールとは何か
思考ツールとは、自分の考えを整理して、見えやすい形で表現するために役立つツールです。比較する、分類する、関連づける、構造化するなどの「考えるための技法」を用いる際に、思考ツールを活用することで、考えを整理しやすくなります。
思考ツールには、ベン図やXチャート、ボーン図などさまざまな種類があり、目的に応じて選ぶことができます。
思考ツールを使うメリットとは
思考する際に、比較や分類を図や表を使って書き出すことで、自分の考えが可視化され、思考の整理が促されます。考えるための技法を身につけることに役立ったり、整理・分析場面での学習の質を高めたりすることにつながります。
また、思考ツールをグループワークで活用することで、自分と異なる視点・考えに気がつきやすく、多面的・多角的に考えを深めていくこともできます。
学校における思考ツールの活用
総合的な学習(探究)の時間の学習指導要領には、「考えるための技法」を、各教科や総合的な学習の時間の学習において、意図的、計画的に指導することが必要である旨が明記されています。つまり、考えるための技法を用いる際に役立つ思考ツールも、さまざまな教科等で活用することができます。
さらに、思考ツールは、個別学習だけでなく、グループワークなどの協働的な学習においても考えを深める上で有効です。教科等を問わず、さまざまな学習場面で思考ツールを活用することが理想だといえます。
教育現場で期待される「思考の技術」
国立教育政策研究所の「教育課程の編成に関する基礎研究 報告書5」において、21世紀型能力は、「21世紀を生き抜く力をもった市民」として求められる能力であり、「思考力」「基礎力」「実践力」から構成されるとされています。その3つの力の中で中核と位置づけられているのが、みんなでより良い答えや新しいアイデアを考える力である「思考力」です。
思考は、主観的で個人的な性質だと思われがちですが、スキルの一つであり、訓練によって習得できるといえます。そして、その訓練に役立つのが思考ツールです。
思考ツールを使う際のポイント
思考ツールを活用する際に、児童生徒に「何を、どのように考えさせたいのか」を意識し、児童生徒が考える視点を設定することがポイントです。これは、視点をどのように設定するかによって、学習の方向性が変わってしまう可能性があるからです。また、学習の目的に合うツールを選ぶことも大切です。
思考ツール一覧・使い方
先述したとおり、思考ツールにはさまざまな種類があり、目的に合ったツールを選ぶことが大切です。主な思考ツールとその使い方についてご紹介します。
Xチャート・Yチャート・Wチャート
多様な視点や観点から対象を見るための思考ツールです。例えばYチャートでは、工場見学に行った後に、「見たこと」「聞いたこと」「思ったこと」の3つの視点で、グループで意見を出し合いながらチャート内に書き込むことができます。Xチャートは4つの視点、Wチャートは5つの視点で意見を出すことができます。
ボーン図
見通す、構造化する、理由づける場面で活用する思考ツールで、特性要因図ともいわれます。頭の部分に結果を記入し、中骨には結果を変化させる要因、小骨の部分には、その要因に対する具体的な内容や可能性について示します。結果とその要因を整理し、事象の要因を探ることに役立ちます。
ステップチャート
順序づける場面で活用できる思考ツールです。物事の手順や工程を表すことができます。物語の筋を考えたり、話を要約したりする際にも活用できます。また、矢印は時系列だけでなく、重要度などへの応用も可能です。
ベン図
比較する、分類する場面で活用できる思考ツールです。2つの対象を比較して、共通点や相違点を見つけ、整理・分類できます。あくまで、比較、分類のために使用するため、整理したものをどのように活用するかが大切になります。
座標図
順序づける、比較する場面で活用できる思考ツールです。縦軸と横軸に観点を設けて、四象限で事柄を整理したり、座標上に配置して比較したりできます。意見の位置付けを明確にすることもできます。
表(マトリクス)
分類する、整理する、比較する、多角的に見る場面で活用できる思考ツールです。一番上の行と一番左の列を見出しとして使うことが多く、この見出しに整理の観点や対象を書いて情報を整理することで、特徴を把握しやすくまとめることができます。
イメージマップ
考えを広げる場面で活用できる思考ツールです。ブレインストーミングと相性がよく、中心においた言葉から自由に連想して、二重、三重に考えを広げて書き足していきます。自由に視点を変えながら、連想することができます。
クラゲチャート
理由づける場面で活用できる思考ツールです。頭の部分に主張を書き込み、足の部分には主張に対する理由や根拠、要因を書き込みます。主張の理由や根拠を明確にしたり、説得力のある主張を考えたりする場面で役立ちます。
KWL
見通す場面で活用できる思考ツールです。一番上の行に、「K=知っていること(What I know)」「W=知りたいこと(What I want to know)」「Lは学んだこと( What I learned)」を書き込みます。まずはKとWを記入し、学習を通して得たことをLにまとめます。KとWを明確にすることで、何を学ぶのかを見通すことができます。
思考ツール使用の実践例
Sky株式会社運営するWebサイト「学校とICT」から、SKYMENU Cloudで思考ツールを活用した実践例をご紹介します。小学校4年生の総合学習の時間、「地球温暖化に具体的な対策を考えよう」をテーマにした授業の中で、座標軸を活用しました。SKYMENU Cloudは、気づきをメモして蓄積できる「気づきメモ」機能を搭載しています。本実践では、児童は動画教材を視聴しながら、この機能を使って気づいたことメモして蓄積。残したメモを座標軸で分類・整理して考えを深めました。
ICTを活用した学習活動を支援するSKYMENU Cloud
GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台の端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」や多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。