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教育クラウドとは? 学校現場での活用メリットや活用例を解説

著者:Sky株式会社

教育クラウドとは? 学校現場での活用メリットや活用例を解説

ICTは、学びを主体的・協働的・探究的なものとし(Active)、個に応じた最適なものとするとともに(Adaptive)、児童生徒や教員が抱えるさまざまな課題を解決する(Assistive)のに効果的なツールとされています。そしてクラウド環境下で運用することにより、これらの効果を最大限に発揮します。この記事では、教育クラウドとは何か、また教育クラウド活用のメリットや活用例について解説します。

教育クラウドとは、教育分野に特化したクラウドサービスのこと

クラウドとは、コンピュータの機能や性能を共同利用するための仕組みで、一般的にはインターネットを経由してデータセンターなどにアクセスすることで、提供されるインフラやソフトウェアなどを利用できるサービスを指します。インターネットに接続できるPCやスマートフォン、タブレット端末などがあれば、どこからでも同じデータやサービスを利用することが可能です。

教育クラウドとは、クラウドの中でも特に教育分野に特化して提供されているサービスのことを指します。教育クラウドの代表的なサービスとして、例えば、Google社が提供する「Google Workspace」などが挙げられます。

教育クラウド活用のメリット

総務省は「教育ICTの新しいスタイル クラウド導入ガイドブック 2016」(以下、クラウド導入ガイドブック)の中で、クラウドを活用するメリットを「Savable」「Secure」「Scalable」「Seamless」の4つのSに整理して紹介しています。

Savable:教職員の負担・運用コストを軽減

教育委員会や学校が自前でサーバを整備するオンプレミスの場合、その設計や構築、運用管理(トラブル対応、情報セキュリティ対策、OSやアプリケーションの更新、保守点検など)が大きな負担になることがあります。一方、教育クラウドでは、原則として教育クラウドのサービス事業者がサーバの運用・管理を行います。その際、OSやアプリケーションの管理も行うため、ICT環境の管理にかかる教職員の負担や運用コストの軽減が期待できます。

Secure:データを安全・安心に保存・利活用

教育クラウドでは、堅牢なデータセンター内でデータが保存されます。データの漏えいや破損・紛失が起きないように入退室の制限や管理、障害に備えた予備装置の設置、データ消失対策、データの分散管理など、さまざまな対策が講じられています。さらに、それらのデータが窃取されたり改ざんされたりしないよう対策もされています。

Scalable:児童生徒数や利用の増減に即応

教育クラウドは、児童生徒などの利用者の増減や活用度の変化などに柔軟に対応できます。オンプレミスの場合は導入時に時間や手間がかかるだけではなく、増設や変更、老朽化による更新などが必要になるたびに対応しなければなりません。これに対して教育クラウドの場合は、児童生徒数の増減や利用頻度の増減、学校の統廃合などが生じても、必要となる分だけサービスが利用できます。

Seamless:時間や場所、端末にかかわらず、切れ目なく活用

教育クラウドは、校内・校外を問わず、家庭などで端末が変わっても、児童生徒が継続して利用できます。例えば、学校での学習の続きを家庭でも行えるほか、動画を見るなどして授業の前に自宅で学習をする「反転授業」など、学校と家庭における学習の連携を強化した新しいスタイルの学びが促進されるとされています。また、修学旅行や遠足などの校外学習先でも、児童生徒は学んだ内容をその場でまとめたり、保存したりできます。学校にいるときと同じように学習できるだけでなく、情報共有も手軽にできます。

それぞれの立場における教育クラウドの活用メリット

教育クラウドを利用する際、関係者となるのは、児童生徒、教員、保護者、教育委員会などさまざまですが、それぞれにとって教育クラウドの活用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、クラウド導入ガイドブックに沿って、それぞれの立場での教育クラウドの活用メリットを紹介します。

児童生徒にとってのメリット

児童生徒の立場から見た教育クラウドを活用することの主なメリットは、以下のとおりです。

いつでも、どこでも学べる

教育クラウドを利用することで、児童生徒はいつでもどこでも学べます。例えば、授業で使った教育クラウドの学習用コンテンツを家庭でも利用し、学習や作業を継続して進めることが可能です。また、離島や中山間地の学校と都市部の学校が、同じ教材などを共有しながら交流するといった活用ができるので、地域間の教育格差の縮小にも役立ちます。

自分に合った教材で学べる

教育クラウド上には、さまざまな学年やレベルに応じたコンテンツが用意されているため、個々の児童生徒は自分の学習到達度や興味関心に合わせた最適な学習に取り組めます。例えば、クラスや学校の枠を越えて児童生徒同士で、学習の進度や正答率などを競い合えるようなゲーミフィケーション(ゲームに使われるような順位、ポイント、レベルシステムなどの仕組みを取り入れること)の要素を取り入れて学習意欲を高め、自発的な学習を促すような仕組みを作ることも可能になります。

学習履歴を蓄積し活用できる

学習履歴を蓄積することで、自分の得意不得意の把握や進捗の確認できるようになります。今後、スタディ・ログなどの教育データの活用が本格化的に行われるようになれば、学習の個性化にも役立ちます。

多様な考えに触れ、学習の幅を広げられる

教育クラウドを使って児童生徒が互いに教え合ったり、学び合ったりすることもできます。これにより、遠く離れた学校や海外の児童生徒などの多様な考えに触れながら、学びの幅を広げていくことも可能になります。

教員にとってのメリット

教員の立場から見た教育クラウドを活用することの主なメリットは、以下のとおりです。

最適な教育用コンテンツを選択できる

教育クラウドで提供されるサービスは多様化しており、それらの豊富な教育用コンテンツの中から、それぞれの学校や教育活動に適したコンテンツを選択できます。また、コンテンツを年間や学期ごとに変更したり、試用したりすることも簡単になります。

自作の教材などを共有できる

教員が自作した教材などの教育用コンテンツを教育クラウドに保存しておけば、ほかの教員とも共有でき、授業準備の負担を減らしながら、授業改善につなげることができます。

教員の作業負担を軽減し、教材研究や子どもとの時間を増やせる

教員の作業負担を軽減できることもメリットの一つです。例えば、教育クラウドとして提供されている自動採点式のドリル教材を使えば、採点にかかる時間を削減できます。また、提出物の回収や管理も教育クラウドで行うことで一元管理ができるようになります。これらによって創出された時間を、教材研究や子どもと向き合う時間に充てられます。

学習履歴を活用できる

児童生徒1人ひとりの学習履歴(スタディ・ログ)を教育クラウドに蓄積することもでき、児童生徒の理解度や進捗、クラス全体の学習状況などを把握しやすくなります。これらの分析結果を指導計画に反映したり、個に応じた指導に役立てたりできます。

保護者にとってのメリット

保護者の立場から見た教育クラウドを活用することの主なメリットは、以下のとおりです。

子どもの活動の様子を確認できる

教育クラウドのSNSやサービスを利用して公開・更新されるWebサイトなどで、子どもの学習状況や校外学習を含めた活動の様子を確認できるようになります。教育クラウドを利用することで、保護者と学校とのコミュニケーションの活性化、家庭と学校の連携強化が期待できます。

教育費の負担軽減につながる

教育クラウドの利用により教育費の負担軽減につながることも、保護者にとってのメリットです。学校で導入した学習用コンテンツや教員の自作教材、教員が指定したインターネット上の教材など、多様な教材が家庭でも利用できるようになります。

教育委員会にとってのメリット

教育委員会の立場から見た教育クラウドを活用することの主なメリットは、以下のとおりです。

教育用コンテンツに効率的に投資できる

ライセンスや契約形態にもよりますが、教育クラウドとして提供されているサービスには学期によって利用するコンテンツを変えるなど、柔軟な利用が可能なものもあります。また、そうしたサービスには学校に対してアンケート調査を行わなくても導入したコンテンツの利用状況が可視化できる仕組みが用意されていることが多く、利用頻度の低いコンテンツを入れ替えたり、活用方法を伝える研修を実施したりするといった、教材マネジメントがしやすくなります。

エビデンスに基づいた取り組みを行える

域内の学校における学習履歴(スタディ・ログ)などを一元的に把握できるようになるため、得られたデータを活用し、具体的なエビデンスをベースにした学校経営や教育行政を推進することができます。また、児童生徒や教員のコンテンツ利用時間も把握できるので、学習や勤務の適切なマネジメントにも役立てられます。

学校教育に必要な学習管理機能を備えた「学習eポータル」

教育クラウドでさまざまな教育用コンテンツを活用する際に、その基盤となるのが「学習eポータル」です。学習eポータルとは、一般社団法人ICT CONNECT 21の「『学習eポータル』まとめページ」の中で、「GIGAスクール構想で整備された一人一台環境と高速ネットワークを活かし、ソフトウェア間の相互運用性を確立してユーザーにとっての操作性を向上させるとともに、教育データをより良く活用するために構想された、日本の初等中等教育向けのデジタル学習環境のコンセプト」と説明されています。学習eポータルの主な機能は以下のとおりです。

学習eポータルの機能要件

  • アカウント管理/ユーザー認証
  • MEXCBTとの連携
  • 各種学習ツールとの連携
  • 校務支援システムとの連携
  • LRS(スタディ・ログの保管場所)との連携
  • OSや各種学習ツールとのシングルサインオン
  • MEXCBTの利用
  • 学習ツールの利用 - 時間割/スケジュール管理
  • 学習者用マイページ
  • ダッシュボード(学習者用)
  • 児童生徒情報管理
  • テスト管理
  • テスト結果閲覧
  • ダッシュボード(教職員用)

参考:一般社団法人ICT CONNECT 21「学習eポータル標準モデル Ver.4.00

学習eポータルは、ユーザにとっての操作性を向上させるとともに、教育データのより良い活用を促進するための機能が提供される、新たなデジタル学習環境といえます。

教育クラウドの活用例

ここまで見てきたように、教育クラウドでは、さまざまなコンテンツや機能が利用できます。最後に、学校内外での具体的な教育クラウドの活用例を紹介します。

学校内での活用例:授業や朝活動のほか、学校の教育活動全般で活用

教育クラウド上の教育用コンテンツは、学年や教科に応じて用意されており、さまざまな授業や朝学習などで活用することが可能です。また、協働学習支援ツールは、児童生徒の意見を一覧表示する機能などを備えており、授業だけでなく、学級活動や児童会・生徒会活動、学校行事など、学校の教育活動全般で幅広く活用できます。

学校間での活用例:協働学習支援ツールを用いた学校間連携授業に活用

学校間で連携して協働学習支援ツールを用い、1つの課題に取り組むことも教育クラウドならではの使い方です。小規模校の中には1学年の人数が少ないため、多様な意見や考えに触れたり、意見交換したりすることが難しいという課題を抱えた学校もあります。そこで教育クラウドを活用し、学校間連携授業を実施。例えば、クラス内で議論を行った後、教育クラウド上にアップロードされた他校の児童生徒の意見を視聴することで、さまざまな意見や考えに触れ、自分の考えを深められます。

学校外での活用例:海外との交流学習や修学旅行、校外学習などに活用

学校外での活用として、海外にいる日本人との交流学習を続け、世界の国々への理解を深めている例もあります。Web会議システムでのコミュニケーションと協働学習支援ツールを使った情報共有を組み合わせて、より深い交流も行われています。また、インターネットに接続することで、修学旅行や校外学習時にも、教育クラウドを利用した幅広い学習が行われています。

家庭と学校の連携例:病気や障害などで登校が難しい児童生徒の家庭学習で連携

教育クラウドは、インターネットに接続できればいつでもどこでも利用できます。特に、家庭学習での活用により、学校で行った学習を家庭で、家庭で行った学習を学校で、継続的に取り組むことが可能です。また、児童生徒の家庭学習の状況を把握し、次の授業にスムーズにつなげていけるなど、教育クラウドは家庭と学校の連携を強化します。

そのほか、特別な支援が必要な子がほかの児童生徒と平等に教育を受けられるよう、教育クラウドの活用に期待が寄せられています。例えば、病気療養中などの事情で登校時間が限られる児童生徒は、授業時間を確保できず、学習が遅れてしまうことも少なくありません。そうした児童生徒が家庭で学習を行い、教員がさまざまなツールを通じて学習の進捗の確認や助言を行うことで、個々の状況に合わせた学習を行えます。

教育クラウドを導入し、すべての児童生徒により豊かな学びを提供

教育クラウドにより、教員や児童生徒は豊富な教育用コンテンツやコミュニケーション機能、学習ログなどが利用できるようになります。そして、児童生徒の興味関心に合わせた学習ができ、学習準備時間や設備コストの削減、家庭と学校との連携強化といった、さまざまな側面で効果が期待できます。児童生徒1人ひとりに、より豊かな学びを提供するためにも、教育クラウドを活用して新たなデジタル学習環境を構築することが求められています。

ICTを活用した学習活動を支援する「SKYMENU Cloud」

GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台の端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」や多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。