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Sky株式会社

公開日2024.06.27更新日2024.08.14

ポートフォリオとは? 教育に活用する必要性や具体例を解説

著者:Sky株式会社

ポートフォリオとは? 教育に活用する必要性や具体例を解説

児童生徒の学習成果物を保存・整理し、分析などに役立つ「ポートフォリオ」を用いて、学習や指導の改善に生かす取り組みが行われています。ポートフォリオを活用することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。この記事では、なぜ学校教育にポートフォリオが活用されているのか、どのような活用方法があるのかなどについて紹介します。また、近年注目されているeポートフォリオについても解説します。

ポートフォリオとは、児童生徒の学習成果物をまとめたもの

一般的にポートフォリオとは、個人の成果や経験を集約して示すための記録のことです。教育分野では基本的に、学習者である児童生徒自身が作成したものを指し、児童生徒の学習成果物をポートフォリオに保存したり整理したりしておくことで、教員や児童生徒が成長や学習プロセスを把握することが可能になります。ポートフォリオに残す学習成果物には、テストの結果、作文、レポート、作品、ワークシートなど、児童生徒がアウトプットしたさまざまなものが含まれます。

学校教育におけるポートフォリオの必要性

学校教育において、ポートフォリオの活用が求められる理由の一つに、ポートフォリオを活用することによって、児童生徒が思考力・判断力・表現力などを身につけられているかを評価しやすくなることが挙げられます。ペーパーテストは、知識・技能などの基礎的な資質・能力を測ることに長けていますが、これらは短期的な学習の成果が中心となります。しかし、思考力・判断力・表現力という資質・能力は、複合的な学習活動の積み重ねのなかで育まれるため、ペーパーテストで測ることは難しいとされています。そのため、評価においては学習プロセスが大切になりますが、1人ひとり異なる学習プロセスを的確に把握することも難しいため、学習プロセスを可視化できるポートフォリオが有効とされています。

ポートフォリオの活用方法

ポートフォリオには、さまざまな活用方法が考えられます。ここからは、児童生徒と教員それぞれのポートフォリオの活用方法を解説します。

教員によるポートフォリオの活用方法

教員の場合は、主に児童生徒の成長や学習プロセスを評価するためにポートフォリオを活用します。教員は日頃から、児童生徒たちを注意深く観察したり、質問したり、簡単なテストを実施したりすることで、学習の成立状態を把握しようと努めていますが、こうした形成的評価に1人ひとりの学習プロセスを可視化できるポートフォリオが役立ちます。同時に、自身の指導の改善するための参考材料としても、ポートフォリオを役立てられます。

児童生徒によるポートフォリオの活用方法

児童生徒は、ポートフォリオを使って自身の学習の振り返りや今後の学習計画、自己アピールの検討などのために活用できます。時系列に沿って成果物を振り返るだけでなく、学習のねらいに応じて成果物を分類する、または関連した成果物を集めて整理し、分析するといった活用方法も考えられます。さらに、ほかの児童生徒や教員との意見交流でポートフォリオを活用することもできます。

例えば、小学校の社会であれば、児童生徒が作成したパンフレットや新聞などをポートフォリオに残しておき、児童生徒が自分の学びを見返せるようにするといった活用方法が考えられます。体育であれば、「跳び箱でいろいろな飛び方に挑戦したい」など、単元における自分の目標とその振り返りをポートフォリオに残すという方法などが考えられます。また、友達と一緒に活用して、お互いの目標について話し合うこともできます。

ポートフォリオの活用例:広島県「わたしのキャリアノート」

ポートフォリオの活用例として、広島県が行っている「わたしのキャリアノート」というポートフォリオを活用した事例を紹介します。この事例はキャリア教育において、小・中・高等学校での学びを1つのポートフォリオにまとめて活用するキャリア・パスポートの取り組みで、日々の学習成果物を集約するポートフォリオとは目的が異なりますが、学校種を超えたポートフォリオの活用として参考にしていただけます。

各学校のキャリア教育全体計画と年間指導計画、児童生徒自身がまとめたキャリア教育に関する学習内容(各学年1シート)を県の共通書式とし、各学校の学習資料を加えて「わたしのキャリアノート」として活用しています。小学校から中学校、そして中学校から高等学校に進学する際に、上級学校へ持ち上がらせます。「わたしのキャリアノート」があることで、学年間・学校種間の連携が図れ、一貫したキャリア教育の取り組みを実現させています。

成果物をデジタルデータで管理するeポートフォリオ

最近は、「eポートフォリオ」の導入も進められています。eポートフォリオとは、児童生徒の学習成果物や学習プロセスを、紙ではなくデジタルデータとして管理する形態のポートフォリオです。ポートフォリオをデジタル化すれば、整理や分類、検索などがしやすくなったり、データの共有・フィードバックが効率的に行えるようになったりします。ポートフォリオの活用において、eポートフォリオは利便性の高いツールとして注目されています。

eポートフォリオを活用するための教育データ利活用ロードマップ

eポートフォリオに蓄積された情報などを活用する試みは、教育データの利活用の一環として位置づけられています。デジタル庁では、この教育データの利活用に関して、2022年に「教育データ利活用ロードマップ」を策定しました。これは、教育のデジタル化のミッションを「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」と掲げ、そのためのデータの「スコープ(範囲)」「品質」「組み合わせ」の充実・拡大という3つの軸を設定。これらを実現するために、教育データの流通・蓄積の全体設計(アーキテクチャ(イメージ)を提示しています。

2025年ごろまでに教育データの標準化が行われる予定

教育データ利活用ロードマップでは、2022年から2030年までの期間を「短期」「中期」「長期」の3つのフェーズに区切り、教育データの利活用によってめざすべき姿と工程表が示されました。このロードマップでは中期(2025年ごろまで)の目標として、「学習履歴」や「教材情報」といった教育の内容や活動情報に関するデータの標準化を推し進めることが挙げられています。学習関連データを格納する際の規格の標準化が行われれば、学校・家庭・民間教育機関のそれぞれで行われている児童生徒の学習状況を踏まえた上での学習支援が、一部実現可能になるとされています。

ポートフォリオで個別の学びの過程を可視化する

ポートフォリオを活用すれば、児童生徒の振り返りや今後の計画立案、ペーパーテスト等だけでは推し量れない思考力・判断力・表現力などの形成的評価に役立てることが可能です。今後、クラウドサービスとしてeポートフォリオが普及していけば、さらに幅広い活用方法が増えていくことと予想されます。教育のデジタル化との相乗効果によって、ポートフォリオを活用した教育の新たな可能性も期待されます。

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GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台の端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」と多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」、これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。