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Sky株式会社

公開日2024.06.11更新日2024.07.19

主体的・対話的で深い学びとは? 資料や有識者の解説を再確認

著者:Sky株式会社

主体的・対話的で深い学びとは? 資料や有識者の解説を再確認

2020年から実施されている学習指導要領では、児童生徒が新しい時代に求められる資質・能力を育むために、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うことが提唱されています。授業の方法や技術の改善のみではなく、児童生徒が「どのように学ぶか」という視点を重視した授業改善が求められていますが、具体的にはどのような学び方を指しているのでしょうか。この記事では、主体的・対話的で深い学びについて、資料や有識者の見解を基に解説します。

自らの興味を基に他者との対話で考えを広げ、理解を深める主体的・対話的で深い学び

主体的・対話的で深い学びとは、自ら興味や関心を持って粘り強く取り組み、児童生徒同士の協働や教職員・地域の人との対話を通じて自己の考えを広げ、知識を相互に関連づけてより深く理解する学び方のことです。教員が「何を教えるか」、児童生徒が「何を知っているか」という従来の学習観を「平成29・30・31年改訂学習指導要領」では、児童生徒が「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という視点で再整理されました。このうち、「どのように学ぶか」の具体的な在り方として示されているのが、主体的・対話的で深い学びです。学校教育における学習の質を一層高めるための取り組みを活性化させ、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進が図られています。

主体的・対話的で深い学びを構成する要素

主体的・対話的で深い学びは、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つの要素で構成されています。ここでは、2020年の小学校学習指導要領の全面実施に合わせ、弊社が運営するICTを活用した学習活動をサポートする情報サイト「学校とICT」で角屋 重樹 日本体育大学教授に解説いただいた内容を基に、3つの要素をあらためて確認します。

主体的な学び

文部科学省は主体的な学びについて、「学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる」ことと定義しています。角屋教授によれば、このような問題解決の過程で児童生徒が主体的になるためには、以下の5つのステップと、それぞれのステップであらかじめ以下の「すべ」、すなわち能力を身につけておく必要があるとされています。

問題解決過程で主体的になる「すべ」

  • 問題の見いだし:違いを見つける
  • 見通しの発想:既習との関係づけ
  • 解決方法の発想:既習との関係づけ
  • 実行結果の整理:問題や見通しとの関係づけ
  • 振り返り:実行結果を問題や見通しなどの他の過程の関係で整理

出典:Sky株式会社「新学習指導要領がめざすもの(後編)

児童生徒がこれらの「すべ」を身につけるには、教員が普段の授業で徹底して、その力がつけられるような方略を考えることが必要です。例えば、見通しを立てる、あるいは解決方法の発想に必要な「既習との関係づけ」というすべでは、「これまで学んだことを、うまく使って」と導き、絶えず「既習と関係づける」ことが児童生徒の頭に思い浮かぶようにします。また、実行結果の整理でも、「結果をまとめてごらん」「整理してごらん」と言うだけではなく、問題や見通しとの関係によって整理することが大事だと教える必要があります。つまり、自分が見いだした問題や見通しと実行結果とを比べて、整合するという「すべ」を身につけさせることが必要です。こうした「すべ」に基づいた取り組みによって、主体的な学びができるようになります。

対話的な学び

文部科学省は対話的な学びについて、「子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める」ことと定義しています。また、角屋教授は「目標に関する見通しを実行し、自分にない考え方を他者から獲得することをめざす」とも表現しています。このときに必要なのが、対話をする相手と自分は何が同じで何が違うのかを理解する「比べる力」です。この「比べる力」を発揮するために、対話をするときには「僕はこう思います。その理由は……」という形で、簡潔に話すことが大切です。話を聞くときは「主張」と「判断」と「根拠」の3つ、または「主張」と「判断」の2つを軸にして相手の話の内容を理解し、整理する必要があります。そのような対話によって、判断は同じだけど主張が違う、または主張は同じだけど判断が違うといった気づきを得ることがあるかもしれません。「比べる力」を駆使して話を聞くことで、「自分にはない考えを他者から獲得」できるようになります。

深い学び

文部科学省は深い学びを、「習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう」ことと定義しています。角屋教授はこれを「自分がどんな風に変わったか」と自覚することであるとし、深い学びになる「すべ」として以下の2点を挙げています。

深い学びになる「すべ」

  • 振り返りで自己の見通しや解決方法が変容したという自己成長の自覚
  • 実行結果を、目標や見通し、実行方法との関係で整理しながら他グループのそれらと比較し、自己のものを修正し、豊かになるという自己成長

出典:Sky株式会社 教育とICT「新学習指導要領がめざすもの(後編)

児童生徒にとっては、授業を始める前と授業が終わった後で、自分がどんなことが分かって、どんなことが分からなかったのか、また、自分がどんな風に変わったのかということを自覚すること、その際に友達がどんな風に自分に影響しているかを理解することが、深い学びとなります。

主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善の視点

主体的・対話的で深い学びは、新しい学習指導要領において育成することをめざす「学んだことを人生や社会に生かそうとする力」「未知の状況にも対応できる力」「実際の社会や生活で生きて働く力」といった資質・能力を育むものです。よって、めざすのは「何を学ぶか」ではなく「何ができるようになるか」であり、そのために「どのように学ぶか」を考えて授業を改善していく必要があります。主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の具体的な内容は、中央教育審議会答申において、以下の3つの視点から改善を行うことが求められています。

主体的・対話的で深い学びの主語は子ども

主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善には、児童生徒自身が学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」ができているかどうかという視点が必要です。学習する児童生徒の視点に立ち、「何ができるようになるのか」という観点から育成する資質・能力を整理した上で、その資質・能力を育成するために「何を学ぶか」を検討し、「どのように学ぶか」を構成していく必要があります。

学習者と授業者の視点で考える授業改善

主体的・対話的で深い学びを実現するには、授業改善を学習者と授業者の視点で考える必要があります。ここでは、主体的な学び・対話的な学び・深い学び、それぞれに対する、学習者と授業者の視点を示した国立教育政策研究所の資料「主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善の視点について」を紹介します。

授業改善に向けた学習者の視点と授業者の視点

この表では、例えば学習者の「学ぶことに興味や関心を持つ」という視点に対して、授業者側が、学習者が学ぶことに興味や関心を持つためにどうしたら良いかを考えて授業改善を行います。具体的には、授業者の視点に示された「具体物を提示して引きつける」「子供が明らかにしたくなる学習課題を設定する」といった内容が当たります。この表は、主体的・対話的で深い学びの実現に必要なのは、授業者の視点による改善だけではないことを示しています。具体物を提示しても、それが児童生徒の日常生活や問題関心につながらなければ「学ぶことに興味や関心を持つ」状態にはならないからです。授業改善に向けた授業者の努力は、授業改善自体を目的とした場合、児童生徒の思考や関心から離れたものになる可能性があります。授業者の視点と学習者の視点は、どちらか片方が重要というのでなく、双方を往還することが必要です。

主体的・対話的で深い学びは単元を通して実現

主体的・対話的で深い学びは、単元を通して実現されます。主体的・対話的で深い学びは、必ずしも1単位時間の授業の中ですべてが実現されるものではありません。単元や題材などの内容や時間のまとまりを見通して、児童生徒が主体的に学習に取り組めるよう、児童生徒自身の学びや変容を自覚できる場面や、対話によって自分の考えなどを広げたり深めたりする場面をどこに設定するか、学びを深めるために児童生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるかといった観点で授業改善を進めることが重要です。国立教育政策研究所の資料では、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を考えることは単元や題材など内容や時間のまとまりをどのように構成するかというデザインを考えることに他ならない」としています。

不確実性の高い未来を生きる子どもたちに、主体的・対話的で深い学びを

技術革新が急速に進み、将来の予測が難しい時代を生きる児童生徒たちにとって、未知の状況に対応し、主体的に行動する能力を習得して、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けることが大切です。そのような資質・能力を育成するために、学習指導要領では主体的・対話的で深い学びをめざすことが明言されました。こうした学びを実現するためには、授業者の視点と学習者の視点の双方を行き来する、適切な授業改善が求められています。

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