
ゲーミフィケーションとは? 意味や要素、教育現場における事例を解説

ゲーミフィケーションは、ゲームの要素をゲーム以外の分野に応用する手法です。ゲームの仕組みを応用し、楽しさと達成感を学びに取り入れることで、子どもたちのモチベーションを引き出す試みとして、学校現場でも注目されています。本記事では、ゲーミフィケーションの基本概念と主要な要素、導入のメリット・デメリット、さらに自治体などでの事例を紹介します。
ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションとは、ゲームのメカニズムやデザイン要素をゲームではない分野に応用することで、ユーザーのモチベーションを高めたり、ロイヤルティーを強化したりすることです。
教育の分野においても、目標達成や仲間との協働などゲーム的な要素を取り入れることで学習意欲や行動の継続性の向上が期待できます。
ゲーミフィケーションの要素と手法について
ゲーミフィケーションの要素や手法について、「ゴール」「ミッション」「リワード」「ビジュアライズ」「コミュニケーション」の5つを紹介します。
①ゴール(目的)
まずは、ユーザーに「何のために行動するのか」や「起こしてほしい行動」を明確にしておきます。これにより、行動に対する動機づけを行うことができます。
教育分野では、学習の方向性を示すゴールを設定することで、子どもたちが学びの意義を理解し、継続的な取り組みを促す工夫として活用できます。
②ミッション(課題)
ゴール(目的)にたどり着けるように、その過程で小さな課題を設定して行動を促します。段階的に課題を設定することは、達成感を積み重ねる仕組みになります。
教育分野においても、達成しやすい課題を段階的に提示することで、学びのモチベーションを維持する工夫として活用できます。
③リワード(報酬)
提示した条件を達成したユーザーに与える報酬を指します。報酬を設定することで、達成感を強化し、モチベーションを高める効果があります。ポイントやバッジ、ランキングなどが一般的な手法です。
教育分野においても、学習の進捗に応じて報酬を提示することで、学びを続ける意欲をサポートする仕組みとして活用できます。
④ビジュアライズ(可視化)
ビジュアライズは、ミッションや目標に対する自分の位置を見える化する仕組みです。進捗や達成度をスコアやレベル、バッジ、称号などを付与して視覚的に示すことで、達成感を実感しやすくなります。
教育分野では、学習の進み具合を視覚的に示すことで、児童生徒が自分の成長を確認したり、モチベーションを高めたりする工夫として活用できます。
⑤コミュニケーション(交流)
ユーザー同士が交流し、情報や成果を共有するコミュニケーションも重要な要素です。他者とのつながりや競争は、自身の成長度合いを確認する機会となり、モチベーションを高める要因となります。
教育分野では、学習者同士の協働や意見交換を促すことで、学びの継続や主体性を支える工夫として活用できます。
ゲーミフィケーションのメリットとデメリット
ゲーミフィケーションには、さまざまなメリットがある反面、導入する際には注意すべき点もあります。ここでは、主なメリットとデメリットを紹介します。
ゲーミフィケーションのメリット
・モチベーションが高まる
報酬、進捗の可視化などにより、達成感や競争心を刺激して行動を続ける意欲を高められます。また、協働やコミュニケーションを促進する仕組みを組み込むことで、学習活動の質を高めることにもつながります。
・行動の方向性を定めやすい
ゲーミフィケーションでは、ゴールを設定するため、目標が明確になり、何を優先すべきかがわかりやすく、計画的に取り組めます。物事を迷わず進められるようになります。
・楽しみながら取り組める
ゲーム的な演出や報酬をはじめ、他者との協働によって、学習や業務に楽しさを加えられるのもメリットです。ポジティブな体験が継続意欲を高め、自然な行動促進につながります。
ゲーミフィケーションのデメリット
・課題のレベル設定が難しい
課題が簡単すぎても、難しすぎてもモチベーションが維持できず途中で飽きてしまう可能性があります。一人ひとりのレベルに合わせた課題設計が重要になりますが、対象者の多様性により調整が難しい場合があります。
・効率的に進められないケースがある
新たにゲーミフィケーションを導入する場合、従来の業務や学習への取り組み方を変更する必要があります。慣れた方法を急に置き換えると、かえって業務や学習の効率が下がる場合があります。
・一部のユーザーに合わない
競争やランキングが苦手な人にとっては、ストレスや不公平感を抱く場合があります。
教育現場で広がるゲーミフィケーションの考え方
経済産業省の「令和5年度地域デジタル人材育成・確保推進事業(ゲーミフィケーションを活用した人材育成等に関する調査事業)」に関する報告書では、ゲーミフィケーションがまずは、学習者の学習に向かう姿勢・態度の変化をもたらし、その上でマインド・スキルや知識の向上に効果を発揮するとしています。
さらに、児童生徒・教職員・保護者・教育委員会など学びに関係するステークホルダーの関心を高めやすいという点のほか、ゲーミフィケーションは、達成しやすいようにレベル分けされている場合に価値を発揮しやすいため、段階的に学習が進むようにカリキュラムが組まれている学校教育の現場では導入効果が見込める点についても示されています。
実際に機能するゲーミフィケーションを作り上げるには、利用者の課題感やニーズをくみ取り、その情報をもって制作者とアウトプットについてコンテンツのバランスを調整できる能力が求められるとしています。
教育現場におけるゲーミフィケーションの事例
教育現場では、学習意欲を高めるためにゲーム要素を取り入れた取り組みが広がっています。例えば、金沢工業大学などがSDGsをテーマにしたカードゲーム型教材を開発。SDGsの17個の目標に沿い、環境・社会・経済がバランスよく成長する社会をつくるアイデアを創出するゲームです。ゲーム性を通じて主体的な参加と協働的な学びを促し、SDGsの理解を深められます。同大学のWebサイトから無償でダウンロードでき、教育機関でも活用されています。
また、前述した経済産業省の報告書によると、熊本県山鹿市では、プログラミング学習と地域のクリエーティブ人材の育成を目的に「山鹿市の魅力が伝わるゲームを作成すること」をテーマとした授業「e-City YAMAGA プロジェクト」を実施。市内6校で導入され、将来的には全国モデルとして展開を目指しています。児童生徒は山鹿市の魅力が伝わるゲームを作るために5人チームでゲームを制作。自発的にお互いに教え合いながら学んだり、ゲーム制作の過程で問題解決力や創造性が養われたり、プログラミングスキルが身についたりといった効果が出ています。
さらに、枚方市では、地理や経済の学習に役立つデジタルゲームの教育版を授業に導入するとともに、教職員同士が授業設計を共有する研究会を通じて、コンテンツ活用のハードルを下げています。この取り組みでは、教育現場だけでなく、教職員間の横のつながりや外部パートナーとの協働を通じて、学習者のモチベーションや自己効力感を高めています。
ゲーミフィケーションの基本要素を教育現場に応用することで、楽しみながら学んだり、他者と協働して学んだりすることで、学習の継続性と主体性を高める実践として注目されています。
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まとめ
ここまで、ゲーミフィケーションの概要から必要な要素、メリット・デメリット、実践事例まで紹介しました。意欲や主体性を高める手法として、教育分野でも注目度が高まり、自治体や学校での導入事例も増えています。これから導入を検討する方にとって、本記事が実践のヒントになれば幸いです。