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公開日2024.06.11更新日2024.07.02

コミュニティ・スクールとは? 役割や仕組み、支援策を紹介

著者:Sky株式会社

コミュニティ・スクールとは? 役割や仕組み、支援策を紹介

児童生徒が学ぶ学校を取り巻く課題は多様化し、煩雑化しています。児童生徒の豊かな成長に向け、学校が教育に集中するには、学校・家庭・地域との役割分担と協力が欠かせません。一方、少子高齢化などに悩む地域においても、学校との連携を深めることには大きな意義があります。この記事では、学校、家庭、地域が一つのビジョンに向かって連携・協働する「コミュニティ・スクール」について、役割や仕組みを詳しく解説します。

コミュニティ・スクールとは、学校運営協議会を設置した学校のこと

コミュニティ・スクールとは、教育委員会が学校や地域の実情に応じた「学校運営協議会」を設置する「学校運営協議会制度」または「学校運営協議会制度を導入した学校」のことです。文部科学省によって「学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる『地域とともにある学校』への転換を図るための有効な仕組み」と位置づけられています。コミュニティ・スクールでは、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第47条の5」に基づき、学校と地域住民等が連携・協働する目的で、教育委員会が指定する「学校運営協議会」の設置が必要です。そのため、学校運営協議会が設置された公立の幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・義務教育学校・中等教育学校がコミュニティ・スクールと呼ばれています。

コミュニティ・スクールが担う役割

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第47条の5」で定められている学校運営協議会の役割は、以下の3つです。

学校運営協議会の主な役割

  • 校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
  • 学校運営に関する意見を教育委員会または校長に述べることができる
  • 教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる

これらの役割によって、学校運営協議会は協議の結果に関する情報を保護者や地域住民等に提供し、保護者や地域住民等は情報提供を踏まえた支援を行うことができます。こうした学校と地域が一体となった特色ある学校づくりが、コミュニティ・スクールの役割といえます。

コミュニティ・スクールの構成と仕組み

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第47条の5」では、学校運営協議会の委員を、地域住民、保護者、学校の運営に資する活動を行う者、その他教育委員会が必要と認める者の中から教育委員会が任命することを定めています。学校の運営に資する活動を行う者とは、自治会代表、公民館代表、PTA代表(保護者代表)、地域学校協働活動推進委員、民生委員代表などです。学校や地域にはそれぞれ異なる事情があるため、大学教授等の有識者、教育委員会事務局職員などが加わることも考えられます。

学校運営協議会では、学校運営に関する課題や未来に向けた協議が行われます。場合によっては、学校運営協議会の下部組織として「評価部」「総務部」「学校地域協働部」などを置き、各部会が学校関係者やPTA、自治会などと連携するケースもあります。なお、2017年に定められた「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」により、小中一貫教育の効果的な実施など相互に密接な連携を図る必要がある場合には、複数校をまたいで1つの学校運営協議会を設置することができるようになりました。

コミュニティ・スクールの構成と仕組み

コミュニティ・スクールとPTA・学校評議員との違い

学校と地域をつなげる仕組みとして、保護者・地域住民と学校とが関わるPTAや、学校評議員などがうまく運用されている地域もあります。ここでは、コミュニティ・スクールとそれらの違いについてご紹介します。コミュニティ・スクールがPTA・学校評議員と大きく異なるのは、教育委員会によって設置され、学校運営に関する基本方針の承認や教職員の人事などに影響を及ぼす力があることです。PTAは児童生徒の健全な育成を目的とした活動を行い、学校評議員は校長の求めに応じて学校運営に関して意見を述べることができますが、あくまで任意の組織で、コミュニティ・スクールの方が、より深く学校運営に関わる存在であるといえます。

コミュニティ・スクール導入校数の増加とその背景

コミュニティ・スクールは、制度化された当初は少数の学校にしか導入されていませんでした。ところが現在では、全国の公立学校の半数以上に導入されており、その導入校数は飛躍的に増加しています。どのような経緯でこれだけの増加に至ったのでしょうか。コミュニティ・スクール導入校数の現状と、その推移、増加の背景について解説します。

コミュニティ・スクールの現在の導入校数

文部科学省が公表した「令和5年度 コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査」では、2023年度のコミュニティ・スクール導入校は1万8,135校で、前年度より2,914校の増加となり、導入率は52.3%と、半数を超えました。導入自治体も1,347自治体で導入率74.3%となり、7割を超える自治体がコミュニティ・スクールを導入していることがわかります。

コミュニティ・スクールの導入推移

コミュニティ・スクールは2004年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の施行に伴って制度化されました。その後の導入推移は、下記のグラフのとおりです。

2005年の時点では、全国の公立学校におけるコミュニティ・スクールの数は17校でした。2006年に教育基本法が改正され、「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が規定されたことで、翌2007年には197校に増加しています。さらに、2013年に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」では「コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割(約3,000校)に拡大」することを成果目標の一つに掲げ、2017年に達成しました。2018年には5,000校を超え、2021年には1万校を突破しています。

コミュニティ・スクール導入校が大きく増加した転機

コミュニティ・スクールの導入校数増加に大きく影響したのが、2017年の法改正です。2017年の地方教育行政法の改正では、教育委員会に対してコミュニティ・スクールを設置する努力義務が示されました。これは、各教育委員会に対して、学校や地域との信頼の構築、関係者の理解増進といった手順を踏みつつ、協議会設置に向けて取り組みを進めるよう求めるものです。これにより、各教育委員会がより積極的に協議会設置を検討するようになり、一気に導入が進んだとみられます。

コミュニティ・スクールに期待されていること

コミュニティ・スクールを導入することで、学校にも地域にも良い効果があります。ここでは、コミュニティ・スクールに期待されていることを、具体的に紹介します。

地域との連携や協力体制を継続する

コミュニティ・スクールに期待されていることは、地域と学校との組織的・継続的な体制を構築することです。従来の学校と地域との連携の多くは、校長や教職員の異動によって途切れやすくなっていました。また、意欲のある教職員の自発的な活動によって支えられていることも多く、当該教職員に負担が集中することで、児童生徒と向き合う時間が確保できないことが問題となっていました。コミュニティ・スクールを導入することにより、中心となって活動する教職員の負担が減って持続可能性が高まり、校長や教職員の異動があっても、地域と学校が継続的に協働することができます。

保護者や地域住民などの当事者意識が高まる

コミュニティ・スクールに期待されていることには、保護者や地域住民の当事者意識が高まることも挙げられます。「開かれた学校」をめざして、保護者や地域住民による読み聞かせや見守り隊などが行われている地域は多くあります。普段の協力に対するお礼として、学校側が地域の清掃活動などを手伝うケースも多いかもしれません。しかし、こうした地域連携の在り方は「貸し借り」になりやすく、片方に負担がかかると、不平・不満につながります。一方、コミュニティ・スクールがめざすのは、双方が当事者となって学校運営に携わり、同じ目標に向かって連携することです。これにより、地域住民も当事者として学校支援に取り組めるようになり、真の連携・協働につながることが期待できます。

地域連携ネットワークの中心として機能する

コミュニティ・スクールに期待されていることは、地域ネットワークの中心となってスムーズに連携を進めることです。コミュニティ・スクールでは、地域連携に際して必要な連絡・調整が学校運営協議会を通じて行われます。教職員に連絡調整業務が集中することなく、「学校運営協議会を中心に地域のみんなで行う」という意識が浸透することで、学校が地域の人間関係のよりどころとして機能します。地域にとっては、防犯・防災体制等の構築や地域の活性化など、具体的な課題解決が可能です。また、保護者にとっても、地域の中で子どもたちが育てられているという安心感があり、学校や地域に対する理解が深まることで、家庭教育との相乗効果が生まれます。

コミュニティ・スクールの導入を支援する施策

コミュニティ・スクールの導入や充実に向け、文部科学省が行っている2つの取り組みについて、それぞれ解説します。

CSマイスター派遣事業

CSマイスター派遣事業とは、文部科学省が委嘱したCSマイスターを教育委員会等に派遣する事業です。CSマイスターとはコミュニティ・スクール推進員のことで、文部科学省では「コミュニティ・スクールの推進やその普及啓発に係る実績を有し、任務を積極的かつ継続的に行う意思を有する者」としています。CSマイスターは文部科学省の依頼によって派遣され、その役割はコミュニティ・スクール未導入または導入して間もない教育委員会や学校関係者等に説明・助言をすることです。CSマイスターには、コミュニティ・スクール推進体制の構築や取り組みの充実、地域とともにある学校づくりを促進することが期待されています。

地域とともにある学校づくり推進フォーラム

地域とともにある学校づくり推進フォーラムは、コミュニティ・スクールの効果的な取り組みについての事例発表や、参加者によるパネルディスカッションが行われるフォーラムです。文部科学省は2002年から全国7地域9校を指定して「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」を行い、その成果発表会として2004年に「コミュニティ・スクール・キックオフ・フォーラム」を開催しました。以降、会議の名称は変わりましたが、現在に至るまで毎年さまざまな地域で地方大会や全国大会を開催し、コミュニティ・スクールの円滑かつ効果的な導入や運用をめざしています。

コミュニティ・スクールは、今後の学校・地域運営に不可欠

地域、家庭、学校が一丸となって児童生徒を育てるコミュニティ・スクールは、教職員が教育に集中できる環境をつくるとともに、地域活性化を実現する有用な仕組みです。児童生徒や学校を取り巻く環境が複雑化・多様化するなか、児童生徒や地域の未来を創造するために、国が展開する施策も活用しながらコミュニティ・スクールの導入を進め、児童生徒を地域で育てる「社会総掛かり」での一体的な取り組みが必要とされています。

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