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GIGAスクール構想に最適な端末は? 各OSの違いも解説

著者:Sky株式会社

GIGAスクール構想に最適な端末は? 各OSの違いも解説

2019年に提唱された「GIGAスクール構想」によってICT教育が大きく進展しています。全国の小・中・高等学校で1人1台端末が整備されましたが、GIGAスクール構想の実現に向けた取り組みで使用されている端末の中で最適なものは、どのOSの端末なのでしょうか。この記事では、2020年からの整備で推奨された端末や性能の違いのほか、今後のGIGAスクール構想の実現に向けてお勧めとなる端末とその理由などを解説します。

GIGAスクール構想とは、児童生徒の適切な学習環境のためにICT環境を整備する取り組み

GIGAスクール構想とは、教育ICT環境の充実を図り、教員や子どもたちの力を最大限に引き出すことをめざす取り組みで、その実現のために高速大容量の通信ネットワーク、児童生徒1人1台のコンピュータの整備が進められました。その目的は「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現すること」であり、児童生徒1人ひとりに最適化された学習環境を提供することや、情報活用能力をはじめとする資質・能力の育成を支援することともいえます。また、将来的に不足すると見込まれているIT人材の育成も重要な課題とされています。

2023年10月、文部科学省は「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」を公表しました。全国の公立学校(小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)を調査対象としたデータによると、2023年3月1日現在、児童生徒1人あたりの教育用コンピュータ台数は全国平均値で1.2台 / 人となっており、GIGAスクール構想が目標とした「1人1台端末の達成」はおおむね達成されているといえます。

一方で、課題もあります。具体的には「学校の学習指導で、まだ十分に活用されていない」「教員のICT活用指導力が足りていない」「端末の持ち帰りが進んでいない」「地域および学校によって格差がある」といった課題です。GIGAスクール構想をさらに推進していくためには、ハード面の整備だけでなく、ソフト面の課題にも取り組んでいく必要があります。

GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準(2024年1月29日通知)

令和5年度補正予算に計上された「公立学校情報機器整備事業費補助金」に関して、文部科学省から2024年1月29日付で通知が出されました。その中で「学習者用コンピュータ最低スペック基準」が示されています。その内容に基づいてOSごとに端末の最低スペック基準を確認します。

Microsoft Windows端末

Microsoft Windowsは、多数の企業や自治体で導入され、教育機関でも採用されているケースが多くあり、使い慣れている人が多いOSです。外部機器との接続に定評があり、大型提示装置との接続やプリンタを使った資料の印刷などがスムーズに行えます。また、拡張性に優れているので必要に応じてハードウェアを拡張することも可能です。

Microsoft Windowsは世界中で使用されているOSであり、端末の種類も豊富にあります。いろいろな選択肢から端末を選びたい場合はMicrosoft Windowsがお勧めです。標準仕様書に示された学習者用コンピュータ(児童生徒用)のMicrosoft Windows端末の仕様は次のとおりです。

<Microsoft Windows端末の最低スペック基準>

OS Windows 11 Pro/Education相当
CPU Intel Celeron Processor N4500と同等以上
ストレージ 64GB以上
メモリ 8GB以上
※ブラウザ上での活用(Microsoft 365 Web版等)が前提かつ活用実態上支障が無いと判断した場合には4GBのメモリも許容する
無線 IEEE 802.11 a/b/g/n/ac/ax以上
音声接続端子 マイク・ヘッドフォン端子を1つ以上有していること
外部接続端子 USB3.0以上の規格であってUSB Type-C PD(Power Delivery)に対応したポートを1つ以上有していること

Google Chrome OS端末

Google Chrome OSは、検索エンジンやオンライン広告など、さまざまなインターネット関連サービスを展開しているGoogle社が手掛けるOSです。そのためGoogleが提供しているサービスとの連携がスムーズで、各種サービスを教育現場で活用することも可能です。

そのほか、「セキュリティやデータ管理などの安全対策がしっかりしている」「初期設定が簡易」「購入費用が比較的安い」といった点が評価されています。実際にGIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備でGoogle Chrome OS端末を採用した学校は4割を占めます。標準仕様書に示された学習者用コンピュータ(児童生徒用)のGoogle Chrome OS端末の仕様は、次のとおりです。

<Google Chromebookの最低スペック基準>

OS Chrome OS
CPU Intel Celeron Processor N4500と同等以上
ストレージ 32GB以上
メモリ 4GB以上
無線 IEEE 802.11 a/b/g/n/ac/ax以上
音声接続端子 マイク・ヘッドフォン端子を1つ以上有していること
外部接続端子 USB3.0以上の規格であってUSB Type-C PD(Power Delivery)に対応したポートを1つ以上有していること

iPadOS

iPadOSは、iPhoneやMacなどのハードウェア製品や多くのオンラインサービスで知られるApple社が開発・提供しているOSです。直感的な操作ができるインタフェースや操作性が評価されており、児童生徒も教員も扱いやすい端末です。

ほかにも「持ち運びに適している」「カメラの品質が良い」「写真や動画などを使ったクリエーティブ系の作業に向いている」「アプリケーションが充実している」といったメリットがあります。標準仕様書に示された学習者用コンピュータ(児童生徒用)のiPadOS端末の仕様は、次のとおりです。

<iPadの最低スペック基準>

OS iPadOS
CPU
ストレージ 64GB以上
メモリ
無線 IEEE 802.11 a/b/g/n/ac以上
スタンド 利用時に端末を自立させるためのスタンドを用意すること(キーボードがスタンドになる場合は別途準備する必要はない)
音声接続端子 マイク・ヘッドフォン端子を1つ以上有していること(マイク・ヘッドフォン端子がコネクタと共用になっている場合は分配アダプタで対応)
外部接続端子 Lightningコネクタ又はUSB2.0以上の規格であってUSB Type-C PD(Power Delivery)に対応したポートを1つ以上有していること

各端末に共通する仕様・ハードウェア保守

Microsoft Windows、Google Chrome OS、iPadOSの各OSを搭載した端末に共通する仕様については次のとおりです。このほか、端末管理機能など細かな基準が示されています。詳細につきましては文部科学省の通知をご確認ください。

<共通する仕様>

周辺機器 ハードウェアキーボード及びタッチペン
カメラ機能 インカメラ及びアウトカメラ
バッテリ稼働時間 8時間以上
重さ 1.5kg程度を超えないこと(本体及びハードウェアキーボード)

GIGAスクール構想によって整備された端末ごとの違い

GIGAスクール構想によって整備された端末には、どのような違いがあるのでしょうか。「価格」や「操作性」「バッテリ」「重さ・運びやすさ」「使えるソフトウェア・拡張性」について、それぞれの違いを紹介します。

価格

Google Chrome OS端末は、比較的手頃な価格の端末です。一方、iPadOS端末はタブレット端末のみのため、キーボードを別途用意する必要があり、ほかの端末と比べて割高になります。また、円安の影響によって2022年7月にiPad(第9世代)が値上げされたこともあり、今後も価格が変動する可能性があります。ただし、価格は端末の画面サイズやスペックなどによって変わるため、それぞれの特徴やスペックを踏まえた上で比較することが大切です。

操作性

操作性に定評があるのはiPadOS端末です。iPadOS端末専用のペンを使えば、手書きに近い感覚で描画できます。Microsoft Windows端末は、大人になると仕事で使うことが多いOSです。フォルダ階層によるファイル管理の概念などの理解が必要になるため慣れるまでに少し時間がかかるかもしれませんが、情報活用能力の育成という側面と児童生徒の発達段階などを考慮して、適した端末を選択することが大切です。

バッテリ

バッテリの稼働時間で比較すると、iPadOS端末やGoogle Chrome OS端末は比較的消費電力が少なく優れているといえます。Microsoft Windows端末は、機種によりますがスリープ中(待機中)の消費電力が比較的大きいものがあるので注意が必要です。3つの端末を、一般的にバッテリの稼働時間が長い順に並べると、iPadOS端末、Google Chrome OS端末、Microsoft Windows端末となります。

重さ・運びやすさ

端末の重さを単体で比べると、基本的にキーボードのないiPadOS端末は比較的軽量といえますが、標準仕様書ではキーボードの使用が想定されていますので、別途キーボードを整備する場合は合わせて計算する必要があります。逆にMicrosoft Windows端末やGoogle Chrome OS端末でも、キーボードが脱着できタブレット端末として使用できる機種もあります。そのため重さや持ち運びのしやすさは、端末ごとに確認することが大切です。

なお、タブレット端末単体で持ち運ぶ際に注意すべきなのが、画面の保護です。画面にキズがついたり割れたりする可能性があるため、保護のためにカバーをつけることが推奨されています。

使えるソフトウェア・拡張性

使えるソフトウェアの数で比較するとMicrosoft Windows端末やiPadOS端末はアプリケーションの数が豊富です。Google Chrome OS端末は、iPadOS端末やMicrosoft Windows端末と比べると使えるソフトウェアの数がやや少ない傾向ですが、実際にはそれほど不便さを感じることはないといわれています。

拡張性が最も優れているのは、ハードウェア、ソフトウェアともにMicrosoft Windows端末です。iPadOS端末やGoogle Chrome OS端末で使えて、Microsoft Windows端末では使えないというものは比較的少ないです。

GIGAスクール構想ではどんな端末がおすすめ?

ここまでの内容を踏まえ、GIGAスクール構想の実現に向けた取り組みにお勧めする端末は「Microsoft Windows端末」といえます。その理由と現状の端末シェアについてご説明します。

Microsoft Windows端末をおすすめする理由

Microsoft Windows端末は、本格的なプログラミングや映像編集といった作業に適しています。また、コンピュータ業界全体を見るとMicrosoft Windowsは圧倒的なシェアを持っており、ビジネスでは欠かせない存在になっています。将来、仕事に就くときのことを考えると、子どもの頃からMicrosoft Windows端末を使い慣れておくことも大切です。

ほかにも、「外部機器との接続がしやすい」「ハードウェア・ソフトウェアともに拡張性が高い」「端末の種類が豊富にある」といった点もメリットとえます。これらの理由からMicrosoft Windows端末はコストパフォーマンスに優れており、学校教育の中で活用する端末としてお勧めできるといえます。

現状の端末シェア

GIGAスクール構想に伴うICT環境整備における端末の導入状況と、各端末のシェアについてご紹介します。文部科学省が令和3年10月に公表した「端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(確定値)」によると、全国の公立小学校の96.2%、公立中学校の96.5%が端末の利活用を開始しており、整備済み端末に対するOSごとの割合は、Chrome OSが40.0%、Microsoft Windowsが30.9%、iPadOSが29.1%です。

なお、令和5年7月公表の「義務教育段階における1人1台端末の整備状況(令和4年度末時点)」によると、1人1台端末の整備状況は、全自治体等のうち1,810自治体等(99.9%)が整備完了、2自治体(0.1%)が整備未完了となっており、これら2自治体についても令和5年度内に整備完了する予定とされています。

GIGAスクール構想の推進には、情報セキュリティも考慮した端末整備が必要

学校には児童生徒の成績や指導記録、住所録など、重要な個人情報が保管されています。しかし、過去には、これらの情報に関する不正アクセスや記録媒体の紛失などの事案が発生しました。GIGAスクール構想を推進するにあたっては、端末の選定だけでなく、情報セキュリティ対策も十分考慮しなければなりません。さらに、学習活動を支援するソフトウェアも必要です。

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GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台のPC端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。