児童生徒1人1台端末などICTを活用した教育についてさまざまな情報を掲載します。

Sky株式会社

公開日2024.05.10

EdTech(エドテック)とは? 注目される理由や導入による変化を解説

著者:Sky株式会社

EdTech(エドテック)とは? 注目される理由や導入による変化を解説

近年、教育の現場は大きな変革期を迎えています。「場所や時間を問わず学習できる」「児童生徒が学びたいことを学習できる」など、従来はできなかった多様な学び方が現実のものとなりつつあります。それらを可能にしているのが、「EdTech(エドテック)」です。この記事では、EdTechが今注目されている理由や、導入による教育現場の変化について解説します。

EdTechとは、科学技術を使い教育を支援する仕組みやサービスのこと

EdTech(エドテック)とは、Education(教育)とTechnology(科学技術)を合わせた造語で、AIやビッグデータなどの科学技術を使い教育を支援する仕組みやサービスの総称です。EdTechには、授業支援システムやデジタル教材、学習プラットフォーム、学習管理ツールまで幅広い種類があり、学校はもちろん、学習塾や通信教育などでも活用が増えています。また、EdTechの多くはインターネットを通じて提供されるため、場所や時間を問わず活用しやすいのも特徴です。

ICT教育やeラーニングとの違い

EdTechは、ICT教育やeラーニングとは、どのような違いがあるのでしょうか。結論から言えば、これらもEdTechに含まれます。ICT教育は、従来のアナログ形式で行っていた教育に、電子黒板やタブレット端末などのICT機器を導入し、それらの利点を活用して指導や学習活動に役立てることを指します。一方、eラーニングは、タブレット端末などでインターネットを介して学ぶ学習形態をいい、「時間と場所を問わず学習できる」「繰り返し学習できる」「児童生徒の学習状況を管理できる」ことが特徴です。EdTechは、ICT教育やeラーニングなども含めた取り組み全体を指す言葉として使われています。

EdTechで何が変わる?

EdTechによって、学校教育はどのように変わるのでしょうか。経済産業省による「未来の教室プロジェクト」(以下、未来の教室)では、初等中等教育の柱として次の3つのビジョンが掲げられています。

学びのSTEAM化

学びのSTEAM化とは、「教科学習や総合的な学習 / 探究の時間、特別活動も含めたカリキュラム・マネジメントを通じ、一人ひとりのワクワクする感覚を呼び覚まし、文理を問わず教科知識や専門知識を習得する(=知る)ことと、探究・プロジェクト型学習(PBL)の中で知識に横串を刺し、創造的・論理的に思考し、未知の課題やその解決策を見出す(=創る)こととが循環する学びを実現すること」を指します。

STEAMとは、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学・ものづくり)」「Art(芸術・リベラルアーツ)」「Mathematics(数学)」の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語で、5つの分野の学習を通して、児童生徒をIT社会に順応した競争力のある人材に育てていくための教育理念です。これまでは各教科でそれぞれの知識を学んできましたが、STEAM学習プログラムでは、実社会での問題発見・解決に生かしていくために教科等横断的な学習を行います。文系と理系が融合した学びから、未知の課題やその解決策を見いだす力を育むことが目的です。児童生徒の好奇心や探究心を損なわず、ワクワクしながら学べる学習をめざしています。

学びの自律化・個別最適化

学びの自律化・個別最適化とは、1人ひとりの認知特性や学習到達度などに合わせた学びのことです。児童生徒1人ひとりが、ある単元を理解できるまでの時間は異なります。しかし、日本の多くの教育機関では授業カリキュラムが決まっており、一律・一斉・一方向授業では時間が余ってしまう児童生徒や、最後まで理解できない児童生徒が発生していました。EdTechを活用することで、自学自習と学び合いに重心を移行することで、個人の興味関心や学習到達度に沿った学びの個別最適化が図れ、誰一人取り残すことのない学習環境をめざします。

また、理解の早い児童生徒は、どんどん学習を進められるのもメリットの一つです。学習進度が速い児童生徒は、一見すると悩みがなさそうに見えますが、周りとの違いを感じたり、別の内容を学習したいのにその内容を質問すると場の空気に合わなかったりといった問題を抱えていることが少なくありません。こうした問題をそのままにしておくと「勉強はおもしろくない」と思ってしまう原因になりかねません。「未来の教室」では、個別学習計画を軸に児童生徒が学びたい分野を自ら選択して、自由学習進度で学ぶことが示されています。このように、1人ひとりが学習する内容が異なる状況において、EdTechは個別最適化された学習に役立てられます。

新しい学習基盤づくり

これまで紹介した「学びのSTEAM化」や「学びの自律化・個別最適化」を進める上で、学校における学習基盤を整えることが必要です。新しい学習基盤づくりを進めるにあたり、「未来の教室」では、乗り越えるべき課題として、「EdTechを活用するには、学校ICTインフラがあまりに貧弱なこと」「教師も子ども達も手一杯で、創造性を発揮する余裕がないこと」「教師が学び続け、外部人材と協働する環境の不足」の3点を挙げています。

これらの課題に対して、PCやタブレット端末を「新しい文房具」と考え、GIGAスクール構想を中心にICT環境基盤の整備を推進すること、学校BPR(業務構造の抜本的改革)の試行・普及によって放課後の充実を図ること、教員がチェンジ・メーカーとなり、学校外の人材と学び協働し続ける環境をつくることといったアクションを求めています。

EdTechが解消をめざす教育課題

EdTechを導入することによって、どのような教育課題の解消が期待できるのでしょうか。また、それによって得られる効果は、どのようなものでしょうか。ここでは、解消が期待される教育課題について解説します。

学校教育の多様化

EdTechを活用すれば、児童生徒1人ひとりに合わせた学習が可能です。これまでは、児童生徒30~40人に対して1人の教員が授業を行う一斉学習のスタイルで行われていたため、1人ひとりの理解度や学習進捗を把握しにくいという課題がありました。しかし、EdTechを使い、学習計画とスタディ・ログを基にそれぞれの児童生徒の学習進捗を確認できます。また、家庭学習で授業の動画を見られるようになれば、わからないところを繰り返し学習できます。こうした多様な学習ニーズにEdTechは有効だと言われています。

教員の負担軽減

EdTechの活用により、教員の負担軽減が期待できます。例えば、これまでは児童生徒が欠席したり遅刻したりする場合は、その日の朝に保護者が学校に電話連絡をし、学校側で連絡を受け取った人が担任に伝達する必要がありました。しかし、専用のアプリを使えば取り次ぎの必要がなくなり、管理職や養護教諭ともスムーズに情報共有できます。また、授業に使う教材の準備なども、教員間の共有やペーパーレス化が進むことによって教員の負担を減らすことにつながります。このようにEdTechは、教員の労働環境の改善という側面でも期待されています。

教育の地域間格差の縮小

EdTechによって、教育の地域間格差の是正が期待できます。都市部には、個性に合わせて学べる塾や専門的な知識やスキルを学べる環境など、幅広い選択肢がある一方、地方ではインフラの整備が進んでいなかったり、学習サポートの施設が不十分であったりと、都心部よりも教育における選択肢が少ない傾向があります。しかし、EdTechを活用することにより、都市部の教育コンテンツを地方でも利用できるようになれば、教育格差の縮小に寄与するとされています。

EdTechが注目されている理由

教育課題の解消に役立つと期待されているEdTechですが、なぜ今、注目されているのでしょうか。その理由は次の3点が考えられます。

GIGAスクール構想の影響

EdTechが注目される背景には、文部科学省が進める「GIGAスクール構想」の影響があります。GIGAスクール構想とは、児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、ICTを取り入れた新たな教育を実現する構想です。2023年10月に文部科学省が公表している「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」によると2023年3月1日時点で、全国の公立学校(小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校および特別支援学校)における児童生徒1人あたりの教育用コンピュータ台数は、平均値で1.2台となっています。GIGAスクール構想によってEdTechの導入基盤が整いつつあるといえます。

時間や場所に制約されなくなる

学習をするときに時間や場所に制限されることがなくなるのも、EdTechが注目を集めている理由の一つです。インターネット環境があれば、遠くにいる教員や友達と一緒に学べます。例えば、病気療養中でも授業に参加することが可能になります。また、家庭学習においてもスマートフォンやタブレット端末を使って、隙間時間に好きな場所で学べるようになりました。このように、時間や場所に制約を受けることなく、それぞれの状況に合わせた学びの実現が可能になります。

プログラミング教育の必修化

2020年に小学校でのプログラミング教育が必修となったことも、EdTechに注目が集まる理由の一つです。プログラミング教育は、思考力や判断力、表現力などのプログラミング的思考を育むことやITの基礎知識の習得、IT社会に順応し将来の選択肢を広げることなどを目的としています。そのため、さまざまな教科等でプログラミング的思考を育む工夫がされていますが、EdTechの活用によって幅広いプログラミング教育が可能になりました。

EdTechは、これからの時代を生き抜いていく児童生徒の力を育む

EdTechは、時間や場所を選ばずに、児童生徒1人ひとりに最適化した学びの機会を提供できます。これにより、「授業についていけず、わからないままにしている」「学びたいことの学習方法がわからない」といった児童生徒の課題が解消され、個に応じた学びが加速していくと考えられています。この30年ほどの間に、デジタル技術の発展やインターネットの普及、新型コロナウイルス感染症の流行、AIの実用化など、さまざまな場面でパラダイムシフトが起こりました。これから先の予測困難な時代を生き抜いていく力を育成するためにも、EdTechは欠かせない要素の一つだといえます。

EdTechの一つとして、さまざまな学習場面で活用できる「SKYMENU Cloud」

ICT教育は、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を促進させる可能性を秘めています。「SKYMENU Cloud」は、「1人ひとりの児童生徒の活動が手元で確認できる」「友達と考えを共有しながら自由なかたちで表現できる」など幅広い機能を備えています。ICT教育をより充実したものにするためにも、ぜひ「SKYMENU Cloud」の導入をご検討ください。