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公開日2024.03.27

情報活用能力とは? 育成方法や事例を紹介

著者:Sky株式会社

情報活用能力とは? 育成方法や事例を紹介

現行の学習指導要領において情報活用能力は、言語能力、問題発見・解決能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」の一つと位置づけられ、情報社会を生き抜く児童生徒にとって非常に重要な力とされています。しかし、その育成にあたり「何から始めればいいのか」「どのように取り組めばよいのか」といった不安を感じることもあるかもしれません。この記事では、情報活用能力の必要性や育成の方法、事例について紹介します。

情報活用能力とは? 学習指導要領における定義を確認

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【総則編】」では「情報活用能力は,世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え,情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して,問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力である」とされています。

また、学習活動において「コンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得る」「情報を整理・比較する」「得られた情報を分かりやすく発信・伝達する」「必要に応じて保存・共有する」といったことができる力だと示されています。さらに、これらの学習活動を行うために必要な「情報手段の基本的な操作の習得」「プログラミング的思考」「情報モラル」「情報セキュリティ」「統計」などに関する資質・能力も含まれます。

情報活用能力はなぜ必要?

学習指導要領の改訂によって、情報活用能力は言語能力、問題発見・解決能力と並び、「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけられました。ではなぜ今、情報活用能力が必要なのでしょうか。

1990年代以降、インターネットなど情報技術の急速な普及が進み、スマートフォンやタブレット端末などを用いて、膨大なデータに誰でも簡単にアクセスできるようになりました。仕事ではインターネットを活用した情報の収集や共有はもちろん、日常生活においてもショッピングや動画閲覧などは、もはや当たり前の時代になっており、これは大人だけでなく子どもも同様であり、社会活動の基盤となっています。

2016年に政府が策定した「第5期科学技術基本計画」において提唱された「Society 5.0」では、日本がめざすべき未来社会の姿として、次のような変革が描かれています。

Society 5.0で実現する社会のイメージ

  • IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します
  • 人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などのロボティクスの進展により、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます

出典:総務省『情報通信白書平成30年版

2022年末に登場した生成AI「ChatGPT」は、大きな話題となりました。また、IoTを活用したスマート家電やスマートカーなど、すでに製品化されているものも少なくありません。情報活用能力は、これから生まれる新たな技術を使いこなし、生活や仕事に応用していくためにも欠かせない力といえます。

文部科学省は、生成AIが社会に急速に普及しつつある現状を踏まえ、2023年7月に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しました。なお、この暫定的なガイドラインは生成AIの活用の可否を判断する際の参考資料と位置づけられおり、今後も機動的に改訂を行うとしています。

情報活用能力の体系的な整理

このような背景があるなかで、情報活用能力はどのように育成すれば良いのでしょうか。文部科学省は学習指導要領に次のように示しています。

教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成
各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。

情報活用能力は、言語能力や問題発見・解決能力と並んで学習の基盤となる資質・能力に位置づけられており、教科等を限定することなく、各教科等の特性を生かして横断的に育成できるよう教育課程を編成することが求められています。

また、学習指導要領では、すべての教科等の目標および内容を「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱で再整理されています。文部科学省の「情報活用能力を育成するためのカリキュラム・マネジメントの在り方と授業デザイン」では、それまでの情報教育推進校(IE-School)の実践研究を踏まえて作成した「情報活用能力の要素の例示」が掲載されています。

さらに、IE-Schoolにおける指導計画を基に、育成が求められる情報活用能力の具体例を児童生徒の発達の段階等を踏まえ、ステップ1~5までの5段階で示しており、ステップ1は小学校低学年の段階を、ステップ5は高等学校修了段階をそれぞれイメージして、【情報活用能力の体系表例(IE-Schoolにおける指導計画を基にステップ別に整理したもの)】(令和元年度版)全体版をまとめています。これは、情報活用能力の共通理解を図るための教員研修や年間指導計画などの作成において活用されることが想定されています。

長期的な視点でカリキュラム・マネジメントを捉えられるよう、「準備期」「実践期」「改善期」の3つの時期を設けて整理されています。ここでは、それぞれの取り組み内容や流れについてご紹介します。

準備期

準備期は、情報活用能力を育成するためのカリキュラム・マネジメントの初年度を想定しています。まずは、進級・進学した児童生徒がどの程度の情報活用能力を身に付けているか、実態を把握することが重要だとされており、IE-Schoolの取り組みとして、アンケートやキーボード入力の速度を測定した事例が紹介されています。さらに、学校および地域の実態に即して、情報教育の目標を設定するために情報活用能力と教科の関連性に着目して目標を整理するといった取り組みが求められます。

教育課程の編成にあたって、各教科と情報活用能力の関係を踏まえて重点単元を位置づけるだけではなく、さらに学年や教科等を越えた関連を位置づけることで、教科等横断的な視点で編成することが大切です。

併せて、校内の体制づくりも重要です。情報教育の推進にあたっては管理職のリーダーシップの下、組織的かつ計画的な取り組みが必要だとされています。そのほか、ICT環境の整備や外部との連携による課題解決も含めて準備を進めることが大切です。

実践期

実践期は、準備期で編成した教育課程を各教科等で実践する時期です。情報活用能力は、すべての教科や領域等において教育されるもののため、全教員による教科等横断的な視点での実践が求められます。IE-Schoolでは、全教員が実践できるよう中心となる組織を設けた事例も見られました。さらに実践の評価・改善が重要になるため、資料を作成して全教員に配付したり、アンケート結果を基に授業改善に取り組むといった事例も紹介されています。さらに、情報活用能力を育成するためのカリキュラム・マネジメントの理解を深めるための校内研修会や校内組織の再編成を行うことも重要です。

改善期

改善期は、各教科等での実践を評価し、成果と課題を把握します。その上で改善した教育課程に即して、各教科等で再び実践を行う時期です。年間を通じた評価・改善を行うことで次年度への準備、継続した情報活用能力の育成につなげるため、実態調査結果を活用するなどして教育課程の評価・改善に取り組みます。また、近隣の学校と互いのカリキュラムを評価し合うことも効果的です。IE-Schoolでは、外部有識者の助言・指導を基に評価・改善を行った事例もあります。

情報活用能力の育成・活用事例

ここまでカリキュラム・マネジメントモデルについて取り上げてきましたが、学校ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。ここでは、「学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力の育成」に紹介された、IE-Schoolで実践された情報活用能力の育成・活用事例を、資質・能力の3要素である「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」に沿ってそれぞれご紹介します。

【知識及び技能】
中学1年 数学科:表・式・グラフを関連づけながら、変化を捉える力を育成する

「知識及び技能」の要素の事例として取り上げられているのは、中学校1年生の数学科の実践事例です。「比例と反比例」の単元における授業の流れや、情報活用能力の育成・活用に関する工夫などをご紹介します。

単元・授業の流れ

本単元は、比例・反比例について表・式・グラフを用いて表現することを目的としました。授業では、数学ソフトウェアを活用して比例グラフの特徴(グラフの線は、点の集合であることを確認)を調べた後、同様の調べ方で反比例グラフについて指導しますが、教員は生徒が主体的に学習に取り組めるよう、生徒の思考を大切にしながら授業を行いました。初めはy=6/xのグラフについて個人で考えさせた後で、ペアでの交流によりさらに思考を深めさせています。

比例グラフの表示方法を理解した後、比例定数の異なるいくつかの反比例グラフ(y=12/xとy=6/x)を表示させて比較することで、共通点や相違点を明らかにします。それらの特徴をまとめる際には、考察として自身が作成したグラフを拡大表示させる等の工夫を行い、視覚的に事実を伝えようとする活動も見られました。

情報活用能力の育成・活用に関する工夫等

数学ソフトウェアを活用した比例グラフの作成方法を基に、反比例グラフの特徴を調べさせる活動を通して、変化の様子を視覚的に捉えることができます。それにより、表・式・グラフを相互に関連づけながら、変化を捉える力を育成することをめざしました。

思考力、判断力、表現力等】
小学6年 社会科:収集した情報を整理させ、学習したことを自分なりにまとめる

「思考力、判断力、表現力等」の要素の事例として取り上げられているのは、小学校6年生の社会科の実践です。ここでは、「明治の国づくりを進めた人々」の単元における授業の流れや、情報活用能力の育成・活用に関する工夫などをご紹介します。

単元・授業の流れ

本単元では、教科書に示されている挿絵から、気づいたこと、疑問に思ったことを書き出し、単元を通して追究していきたい学習問題をつくります。

まず、本単元に出てくる重要語句および重要課題を提示し、それらを決められた時間の中でどのように解決していくのか、児童が考えて学習計画をつくります。情報収集は、個人やグループで実施。教科書や資料集から情報を集め、タブレット端末を使って整理していきます。その際に用いる思考ツールは児童に選ばせました。収集した情報は、「政治」「文化」「社会・生活」で分類し、人物や出来事の関係や、既習の時代とのつながりを明確にします。

次に、整理した情報を基に単元で学習したことを資料にまとめます。このとき、重要語句、重要課題、自身の学習問題が、読み手にとって読みやすくすることを意識させました。その後、資料を活用して友達と交流。共有する児童は、収集した情報や自分が考えたことを明確にしながら説明し、聞いている児童は自分が調べたことと比較しながら聞くことで理解を深めます。

最後に、タブレット端末でアンケートを実施。単元の始めに立てた学習計画や自らの情報活用について評価し、次の学習に生かしました。

情報活用能力の育成・活用に関する工夫等

学習問題や重要語句などを基に収集した情報を整理。1人ひとりのめあてに合わせて資料をまとめ、単元を振り返ることで「学習したことを自分なりにまとめる力」を活用することをめざしました。

【学びに向かう力、人間性等】
高等学校2年 情報科:ピクトグラムを作成する活動で、情報の活用計画を立て試行する

「学びに向かう力、人間性等」の要素の事例で取り上げられているのは、高等学校2年生の情報科・情報の科学の実践です。ここでは、「情報とコンピュータ」の単元における授業の流れや、情報活用能力の育成・活用に関する工夫などをご紹介します。

単元・授業の流れ

本単元では、ラスタグラフィックスとベクタグラフィックスの違いを理解するために、ペイント系ソフトウェアとドロー系ソフトウェアを使用し、演習による学習を行いました。ペイント系ソフトウェアは生徒にもなじみがあるため、ドロー系ソフトウェアを用いて問題解決に取り組み、理解を深めます。

前時までに、ラスタグラフィックスとベクタグラフィックスの違いについてひととおり学習し、授業の始めにはピクトグラムの紹介とドロー系ソフトウェアの簡単な使い方を学習。その後、円と長方形のみで学校の施設を表すピクトグラムを作成させました。図形の描画や拡大縮小、塗りつぶしの制作過程からベクタグラフィックスの性質を実感することができます。また、条件を踏まえてソフトウェアを活用することで、問題を解決する態度を養います。授業の終わりには、作成したピクトグラムを印刷して生徒同士で相互評価を行いました。

情報活用能力の育成・活用に関する工夫等

学校の施設を表すピクトグラムを作成させる活動を通して、条件を踏まえて情報および情報技術の活用計画を立て、試行しようとする態度の育成をめざしました。

情報活用能力の育成にSKYMENU Cloudを

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