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公開日2024.03.27

情報モラル教育とは? これからの教育に必要なポイントを紹介

著者:Sky株式会社

情報モラル教育とは? これからの教育に必要なポイントを紹介

情報社会は大変便利な社会です。しかし同時に、プライバシーやセキュリティの問題、トラブルや犯罪に巻き込まれるリスクなど、さまざまな危険もはらんでいます。情報社会のメリットとリスクをどちらも知った上で、正しく安全に使いこなせるよう、情報モラル教育を通して児童生徒が「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」を身につけることが大切です。この記事では、情報モラル教育とは何か、情報モラル教育の必要性や取り組み方などについて解説します。

情報モラル教育とは「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」を身につけること

情報モラル教育とは、小・中・高等学校の児童生徒が適正な情報モラルを身につけるための教育です。学習指導要領では、情報モラルを「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」と定めています。

文部科学省の「情報モラル教育ポータルサイト](https://www.mext.go.jp/zyoukatsu/moral/)」で紹介されている情報モラルの具体例としては、「情報発信による他者への影響を考え、人権、知的財産権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつこと」が挙げられています。また、トラブルや犯罪に巻き込まれる危険を回避し情報を安全に正しく利用できることや、コンピュータなどの使用による健康との関係を理解することも、一例として挙げられています。

情報モラル教育が必要とされる背景

コンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの情報機器は、今や日常生活から切り離せないツールとなっており、幼い頃からインターネットコンテンツに慣れ親しんできたという児童生徒も多くいます。誰もが情報の送り手と受け手の両方の役割を持つ情報社会においては、対面のコミュニケーションでは考えられない問題が生じることも少なくありません。また有害な情報にもアクセスできてしまうため、児童生徒がトラブルや犯罪に巻き込まれる事件も多く、ネット上のいじめなど顕在化していないトラブルは相当な数に達するともいわれています。

すでにSNSやオンラインゲームなどインターネットを利用している児童生徒はもちろん、これから新たにインターネットを利用しようとしている児童生徒に対しても、情報モラル教育は重要です。情報社会の楽しさや利便性と危険は表裏一体であること、守るべきルールやモラルがあることをしっかり理解させるためにも、学校だけではなく社会や家庭も含め、それぞれの立場から情報モラル教育を進めていかなければなりません。

近年、情報モラルと併せて「デジタルシティズンシップ」も注目されています。デジタルシティズンシップとは、デジタル技術の利用を通じて社会に積極的に関与し、参加する能力だといわれています。情報モラル教育によって、ICTの危険性などについて理解するとともに、デジタルシティズンシップ教育によってICTを自律的に活用して社会に参加していくスキルや考え方を身につけていくことが求められています。

情報モラル教育の5つの

情報モラル教育の内容として、文部科学省の国立教育政策研究所が作成した「情報モラル教育実践ガイダンス(以下、ガイダンス)」では、情報モラル教育を2領域5分野に整理し、それらの内容を漏れなく扱うことが必要だと示されています。ここでは「情報モラル指導カリキュラムチェックリスト」も参考にして各分野を紹介します。

情報社会の倫理

「情報社会の倫理」とは「情報に関する自他の権利を尊重して責任ある行動を取る態度」です。例えば、小学校では「人の作ったものを大切にする心をもつ」ことや「他人や社会への影響を考えて行動する」ことが含まれています。中学・高等学校では、「個人の権利(人格権、肖像権など)を尊重する」「著作権など知的財産権を尊重する」といったことが示されており、情報社会に参画する者としての責任や義務を学びます。

法の理解と遵守

「法の理解と遵守」とは、「情報社会におけるルールやマナー、法律があることを理解し,それらを守ろうとする態度」を指します。小学校は「情報の発信や情報をやりとりする場合のルールやマナーを知り、守ること」などが中心ですが、高学年になると「契約行為の意味を知る」といったことも含まれています。さらに中学・高等学校では、「情報に関する法律や契約について理解し適切に行動する態度」などを学びます。

公共的なネットワーク社会の構築

これは「情報社会の一員として公共的な意識をもち,適切な判断や行動を取る態度」とされています。小学校では「協力してネットワークを使い,データやリソースを共有することの大切さを学び」、中学・高等学校では「ネットワークの公共性を意識し,ネットワークをよりよいものにするために主体的に行動する態度」について学びます。

安全への知恵

「安全への知恵」としては「情報社会の危険から身を守り,危険を予測し,被害を予防する知識や態度」が重要です。小学校低学年では「大人と一緒に使い,危険に近付かない」こと、高学年では「予測で危険の内容が分かり,避ける」といった指導事項が示されており、そのほか情報の正確性、健康への配慮といったことにも触れられています。同様に中学・高等学校では「情報社会の特性を意識しながら安全に行動する態度」「自他の安全や健康に配慮した情報メディアとのかかわり方」などが挙げられています。

情報セキュリティ

「情報セキュリティ」では「生活の中で必要となる情報セキュリティの基本的な考え方,情報セキュリティを確保するための対策・対応についての知識」を学びます。小学校では「IDやパスワードの保護や不正使用・不正アクセスの防止など」について。中学・高等学校では「情報セキュリティの基本的な知識を身につけ,セキュリティ対策の立て方」を学びます。

情報モラル教育の進め方

学習指導要領の総則に示されているとおり、情報モラル教育は特定の教科等のみで行うものではなく、各教科や道徳、総合的な学習の時間のほか、特別活動なども含めて学校教育全体で行うものです。ここでは、ガイダンスの「情報モラル教育の進め方」で紹介されている4つのステップに沿って説明します。

1. 子どもたちの実態把握や整理

多くの児童生徒がコンピュータやスマートフォン、タブレット端末、ゲーム機などを使っており、家庭では自由にインターネットが利用できる環境があります。情報モラル教育を進めるにあたり、まずは教員が児童生徒をよく観察し、アンケートを実施するなどして実態をしっかり把握することが重要です。このとき、文部科学省や教育委員会で実施しているアンケート結果も参考になります。

2. 年間指導計画の作成

児童生徒の実態を踏まえて、各教科や道徳、総合的な学習の時間、特別活動などの年間指導計画に情報モラル教育を位置づけて学校教育全体で推進します。年間指導計画の策定にあたっては、先ほどの教育モラル教育の5つの柱で紹介した「2領域5分野」の系統的な指導を計画します。このとき「情報モラル指導モデルカリキュラム表」を活用しながら、情報モラル教育の指導事項を漏れなく指導することが大切です。

3. 指導方法の検討

続いて、年間指導計画に位置づけられた学習内容を、授業や学校教育のさまざまな場面で児童生徒に指導するための方法を検討します。前述の「情報モラル教育ポータルサイト」に掲載されている、情報モラル教育の「授業実践・活用事例」も参考になります。教える際には、教員の話をただ聞くだけの一方的な授業ではなく、児童生徒が自発的に参加したり考えたりする機会を多く持てるよう、工夫や仕組みづくりが必要です。

教科等の内容では位置づけられていないが指導が可能な場合は、指導の必要性を検討した上で、統計資料を示したり、文部科学省の「情報モラル学習サイト」などのインターネット上の教材を使って体験的に学んだりすることも重要です。また、児童生徒だけではなく保護者への啓発も重要なので、学年集会やPTA集会などでビデオやアニメーションを活用して理解を促すことも大切です。

4. 実際の指導と評価

最後は実際の指導の振り返りです。授業者自身の振り返りや児童生徒の感想文などを基に実施した指導内容を評価し、今後の指導に生かせるよう振り返ります。例えば、自身が実践した授業をほかの教員にも実践してもらうなどして、よりよい授業づくりに生かすことも大切です。

情報モラル教育の3つのポイント

情報モラル教育を実施するにあたり教員は何を意識すればいいのでしょうか。ここでは、情報モラル教育を行う上で意識すべき3つのポイントについて解説します。

情報モラルとは何かを知る

児童生徒に情報モラルを伝えるには、まず教員が「情報モラルとは何か」を正しく理解しなければなりません。その上で、児童生徒が情報社会で起きていることを理解することが重要です。それらは、単なる知識にとどまらず、児童生徒がインターネット上の情報とどのように関わっているのかも知る必要があります。そして、児童生徒がどのような危険に遭遇する可能性があるかを踏まえ、起こり得る事態を想定したケーススタディを行うなど、現状に即した指導を行うことが大切です。

具体性を意識する

学習した内容を基に、児童生徒がすぐに実践できるよう具体性のある指導が必要になります。話を聞いただけで終わってしまうことのないよう、実際にコンピュータやタブレット端末を使い、身近な問題を体験的に学べる活動を取り入れる、または児童生徒へのヒアリングやアンケートの結果などを基に、リアリティのある注意喚起をするといったことが大切です。

家庭や地域との連携をつくる

児童生徒がSNSなどインターネット上の情報に触れるのは、放課後のプライベートな時間が大半です。そのため、保護者にも協力を求めることが重要です。保護者会やPTAの集会などで情報モラルについて伝えることで、保護者が情報社会の危険性やトラブルの可能性を理解すれば、ICTを利用する際のルールについて児童生徒と話し合う機会を持つきっかけにもなります。情報モラル教育においては、学校での指導だけではなく家庭や地域の連携が要になるといわれており、多くの大人が関心を持つことが、児童生徒が安心して生活できる環境の確保につながります。

情報モラル教育で、情報を正しく安全に使える人材を育成する

情報モラル教育は、現代社会において児童生徒が安全かつ適切に情報を利用し社会に参画するために、重要な教育であり、児童生徒の実態を理解し、現状に即してわかりやすく指導しなければなりません。また、その内容は情報社会の進展に伴い変化することも多く、柔軟かつ適切な指導が求められます。そのためにも、学校と家庭、地域が情報モラルとは何かを知り、互いに連携を図りつつことが望まれます。

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