児童生徒1人1台端末などICTを活用した教育についてさまざまな情報を掲載します。

Sky株式会社

公開日2024.03.27更新日2024.04.26

Society 5.0時代の教育とは? 求められる力や学びの在り方を解説

著者:Sky株式会社

Society 5.0時代の教育とは? 求められる力や学びの在り方を解説

「Society 5.0」は、日本政府が提唱している未来に向けた社会のコンセプトです。日本が現在抱えているさまざまな社会課題を解決し、日本経済の再興を担う戦略として期待されています。また、Society 5.0に向けた施策が数多く各省庁から提案されています。その一つとして文部科学省が掲げている「学校ver.3.0」は、新しい時代の学校教育の姿を示したものです。この記事では、Society 5.0とはどのようなものなのか、また、学校ver.3.0によってどのような教育の実現が期待されているのかについて解説していきます。

Society 5.0とは、仮想空間と現実空間が融合した新たな社会のこと

内閣府によると、Society 5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」のことを指します。日本政府が、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、これから目指すべき未来社会の姿として掲げており、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」において、初めて提唱されました。文部科学省ではこの提唱に合わせ、Society 5.0に向けた提言などを行ってきました。

Society 5.0で実現できること

Society 5.0で実現できることには、どのようなものがあるでしょうか。内閣府はSociety 5.0によって実現する社会の姿として「IoTで全ての人とモノがつながり、新たな価値がうまれる社会」「AIにより、必要な情報が必要な時に提供される社会」「イノベーションにより、様々なニーズに対応できる社会」「ロボットや自動走行車などの技術で、人の可能性がひろがる社会」といった例を挙げています。これまでの情報社会(Society 4.0)では解決が難しかった、知識や情報の共有、分野横断的な連携が不十分であるという問題、少子高齢化や地方の過疎化といった課題は、Society 5.0によって克服されるとしています。

Society 5.0において求められる人材像

サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合されているSociety 5.0では、現実世界に生きる「人間としての強み」が重要になってきます。では、Society 5.0において求められる人材像はどのようなものなのでしょうか。文部科学省のSociety 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会および新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォースがまとめ2018年6月に公表された「Society 5.0 に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」(以下、大臣懇談会まとめ)では、共通して求められる力として「文章や情報を正確に読み解き対話する力」「科学的に思考・吟味し活用する力」「価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探究力」を挙げています。そして「技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材」「技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材」「様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材」といった人材像を示しています。

Society 5.0に向けた学びの在り方

Society 5.0に向けた学びの在り方は、どのように変化していくのでしょうか。ここでは、前述の大臣懇談会まとめに示された、Society 5.0に向けた教育政策の方向性をあらためて確認します。これらは、令和元年以降「GIGAスクール構想」に引き継がれ、具体的な取り組みが進められています。

「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と場の提供

大臣懇談会まとめでは「すべての子供たちがすべての学校段階において、基盤的な学力の確実な定着と、他者と協働しつつ自ら考え抜く自立した学びを実現できるよう、『公正に個別最適化された学び』を実現する多様な学習機会と場の提供を図ることが必要」とされており、児童生徒1人ひとりの能力や適性に応じて個別最適化された学びの実現に向け、「学びのポートフォリオ」を活用して学習傾向や活動状況、各教科・単元の特質などを踏まえた実践的な研究・開発を行うといったのパイロット事業を展開することが示されました。

そのほか、個人の学習状況等のスタディ・ログを「学びのポートフォリオ」として蓄積し、指導と評価の一体化を加速することや、EdTechとビッグデータの活用を推進するためのガイドライン策定、ICT環境の整備やICT人材の育成を加速することも示されています。

基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が習得

大臣懇談会まとめでは「学校や教師だけでなく、あらゆる教育資源や ICT 環境を駆使し、基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が確実に習得できるようにする必要がある」とされており、学習指導要領の確実な習得のため、個別最適化された振り返り学習などの指導方法の改善およびICT環境の整備を加速するとしています。

また、大学入学共通テストにおいて「情報」を出題科目に追加すること、学校の指導体制の確立、教員免許精度の在り方を見直すことなどにも言及しています。

文理分断からの脱却

大臣懇親会まとめは「高等学校や大学において文系・理系に分かれ、特定の教科や分野について十分に学習しない傾向にある実態を改め、文理両方を学ぶ人材を育成するよう、高等学校改革と大学改革、高等学校と大学をつなぐ高大接続改革を進める必要がある」とし、高大接続改革としてSociety 5.0をリードし、SDGs達成をけん引するグローバル人材育成のリーディング・プロジェクト「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム」の創設、AI等の高度専門人材を育成するための数理・データサイエンス教育の拡大と強化などが示されています。

そのほか「高等学校においては、文理両方を学び個々の資質・能力を伸ばすとともに、地域の良さを学びコミュニティを支える人材の育成を進めていくことが必要である」とし、地域人材の育成を推進するために自治体、高等教育機関、産業界などと協働する地域高校(地域キュービック高校)の創設も盛り込まれ、令和元年より「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」が進められました。

Society 5.0によって変化する学校教育「学校ver.3.0」

Society 5.0における学校教育はどのようになるのでしょうか。ここでは、Society 5.0に向けて2018年6月に文部科学省が示した「学校ver.3.0」をご紹介します。なお、この資料では「学校Ver.1.0」を「勉強」の時代、「学校Ver.2.0」を「学習」の時代とし、「学校Ver.3.0」は「学び」の時代と位置づけられています。

K-16プログラムへの転換

これまで日本では、幼稚園(KindergartenのK)から高等学校を卒業するまで、年代別の教育である「K-12教育」を実施してきました。文部科学省はSociety 5.0時代に向けた「学校Ver.3.0」の中で幼稚園から大学までを通した能力別教育「K-16プログラム」への転換を提案しています。

K-16プログラムは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学という枠を越えた教育を通じて、児童生徒が学校に合わせるのではなく、児童生徒の資質や能力に合わせた学びを提供するものです。大学やNPO、企業などがそれぞれの強みを生かして提供するさまざまなプログラムを選択して学ぶことができるようになります。

ビッグデータの活用による個別最適化された学び

学校ver.3.0では、スタディ・ログや自治体間や国との連携、研究機関・企業との連携などにより、教育ビッグデータを収集・分析し、個人の認知と性向の特性を踏まえた支援が行えるようになるとしています。こうしたビッグデータの活用などにより、個別最適化された学びの実現が期待されています。

協働的な学びの機会

学校Ver.3.0においては、これまで以上に協働的な学びの機会を確保することが求められるかもしれません。能力に合わせて学習が進められるというメリットがある一方、1人ひとりが孤立してしまう可能性も考慮する必要があるからです。対話や意見交流、探究的な学習などを通じて他者と力を合わせる協働的な学びの機会を確保することが重要になります。

多様なリソースの活用

学校Ver.3.0では、次世代型学校を軸に大学やNPO、企業などのさまざまな主体が、それぞれの強みを生かして学びを提供すると示されています。これまでの家庭や地域との連携に加え、各分野の専門家などの多様な人材リソースを活用することも検討されています。例えば大学や研究機関、企業、NPOだけではなく、放課後等デイサービスや地域スポーツクラブ、公民館、図書館、博物館など、実社会との複層的なつながりが重視されます。

STEAM重視のプログラム

「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Arts(芸術)」「Mathematics(数学)」の5つの分野の頭文字を組み合わたSTEAM教育は、その重要性が増しています。

Society 5.0に向けた人材育成として、サイエンスをベースに、異分野への興味関心、多様な知の受容力、社会的文脈や社会的課題への感覚を養うSTEAM教育は欠かせません。内閣府が2022年4月に公表した「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)」では「各教科での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科等横断的な学習の推進が必要」であるとしています。

人間の強みを生かしていく学び

人間の強みとは、現実世界を理解して状況に応じた意味づけができることです。また、倫理観、板挟みな状況や想定外の事象にも向き合う力、責任を持って遂行する力ともいえます。現在、AIの飛躍的進化によって生活もDX(デジタルトランスフォーメーション)が始まっています。人間中心のSociety 5.0において、人としての強みを生かす上で、1人ひとりが当事者意識を持って他者と協働しながら、新たな価値創造を生み出すことが求められます。

個性に合わせた学びが、未来の社会を担う人材を育てる

Society 5.0は、仮想空間と現実空間の融合により経済発展と社会的課題の解決を目指す社会です。こうした社会に求められるのは、文章や情報を正確に読み解き対話する力、科学的に思考・吟味し活用する力、価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力といった力です。

Society 5.0に向けた学校の在り方として、学校ver.3.0が文部科学省によって提唱されました。学校ver.3.0では、個別最適化された学びやビッグデータの活用、多様な人的リソースの活用などが重視され、STEAM教育の重要性が増します。また、大学やNPO、企業などとの連携を通じて多様な知識を得て、人間の強みを伸ばし、未来の課題に対処する力を育みます。こうして個別最適化された学びが、より良い未来社会の実現につながることが期待されています。

Society 5.0に向けた教育活動にSKYMENU Cloudをお役立てください

GIGAスクール構想によって、児童生徒1人1台のPC端末が配備され、ICTを基盤とした新しい学びのかたちが広がっています。児童生徒が自己調整しながら学びを進める「個別最適な学び」多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」これらの学びを一体的に充実させ、児童生徒が自らの手で未来を豊かに創り出していく力の育成を「SKYMENU Cloud」は支援します。